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January 15, 2011

隣の部屋まで聞こえるくらいに


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麻酔ミスで医師2人を書類送検 神奈川県立がんセンター

 神奈川県警は12日、県立がんセンター(横浜市旭区)で2008年に乳がんの手術中、麻酔器から人工呼吸用の管が外れたのに気付かず、女性患者に脳障害などを負わせたとして業務上過失傷害の疑いで、麻酔担当の男性医師(41)=神奈川県大和市=と執刀した男性医師(37)=静岡県熱海市=を書類送検した。

 送検容疑は08年4月16日、乳がんの女性患者(47)の乳房部分切除手術中、麻酔医が全身麻酔後に執刀医に引き継がずに退室。その後、麻酔器から空気を送る管が外れたのに執刀医は気付かず、18分間にわたり酸素供給が止まったことで患者に脳機能障害と手足のまひの障害を負わせた疑い。

 県警によると、2人はいずれも現在は別の病院に勤務している。
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私は日常的に並列麻酔を行っている。私が特に望んでいるわけではなく,私が働くようになる前からずっとそうだった。病院職員の家族はもちろんのこと,その病院で働いている現役看護師が手術を受ける場合も最初から並列で手術予定が組まれる。したがって,全麻手術中に麻酔科医(私のみ)が30分以上不在となることは日常茶飯事というか,平常運転。2つのオペ室を忙しく行き来しているときには「早くどっちか終わってくれないかなー。まったり落ち着いて麻酔したいな」などと思う一方,長い手術が一例だけだと「あー退屈。緊急のイレウスでも来ればいいのに」と罰当たりなことを考えながら20分ほどのトイレ休憩を入れたりしている。私がオペ室を離れている間に麻酔回路が外れて患者が低酸素になるというようなことはいつ起こってもおかしくない。しかし,パルスオキシメーターやカプノメーターのアラームはともかく,麻酔器の低圧アラームは外科医や看護師が聞き逃す程度の音量なのだろうか?私が働いている病院の麻酔器はどれも年代物でアラーム音は大きい。

麻酔導入後,気管挿管を終えると麻酔器の換気モードをマニュアルから人工呼吸に変える。そして必要なら体位変換が始まる。患者の体位を変える際には挿管チューブと蛇管の接続をはずすが,このとき人工呼吸器の低圧アラームがけたたましく鳴り響く。体位変換後に再接続してもその瞬間にアラームが鳴りやむのではなく,次の吸気で回路内の圧が上昇するまで鳴り続ける。体位変換直後は麻酔科医はあわただしい。枕の調整,静脈ルートの確認。はずれた(あるいはわざとはずした)パルスオキシメーターの再装着。心電図の電極が剥がれていることもある。また,外科医による体位の微調整が続いているとうかつに患者の頭から手を離せない。したがって低圧アラームのミュートボタンを押すという行為の優先順位は低い。何しろ回路を再接続した後はまもなく鳴りやむはずである。しかし,この“まもなく”が我慢できないほどうるさいため,私は右手を一瞬伸ばしてミュートボタンを押すことが多い。ミュート時間はせいぜい1分程度なのでこのときの無アラーム状態が患者を危険にさらすことはない。

マニュアル換気時の無呼吸アラームはあんまりうるさいと使いにくいが,せめて人工呼吸時の低圧アラームは外科医や看護師の顔に「早くその音を停めろよ」が表示されるくらい大音量でいいと思う。

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