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November 30, 2009

肝炎対策基本法は適用外?

「間質性肝炎」の記事を今朝見たが,魚拓を取るのを忘れた。
仕事を終えて帰宅し,“間質性肝炎”でググると豚の病気ばかり。
やはりさすがの変態タブロイドも気がついて訂正したのかと思ったが,私が“毎日”を検索ワードに入れるのを忘れていただけ。まだちゃんと残っていた。今度は忘れず魚拓をと。

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医療訴訟:「市立病院の医療過誤で死亡」 小林市に4200万円賠償提訴 /宮崎

 小林市立病院に入院していた間質性肝炎の女性(当時65歳)が死亡したのは誤った治療が原因だとして、女性の夫が小林市を相手取り、約4200万円の損害賠償を請求する訴訟を宮崎地裁に起こしたことが分かった。提訴は10日付。

 訴状によると、女性は06年12月、間質性肝炎と診断されて同病院に入院。「1カ月もすれば治癒するだろう」と説明された。この間、原告側は施設が整った他への転院を希望しても「必要があると思えない」などと断られたという。

 女性の病状は悪化し、07年1月9日にはほとんど意識がなくなり、救急車で宮崎市内の病院に転院。ここの病院で「当初からステロイド治療をやってきたため、病名の究明が困難」との説明を受け、女性は同29日に死亡したという。

 原告側によると、間質性肝炎は種類によって治療方法が大きく異なり、ステロイドを投与すると副作用で病状が悪化することもあるという。同院はどんな種類の間質性肝炎か把握せずにステロイドを投与したとしている。

 原告側は「まともな治療をすることができないまま手遅れの状態で死亡した。また、速やかに転院させるべきだったのに、重篤な状態になって初めて転院させた」と主張。

 小林市立病院は「訴状の内容を確認して、対応を検討したい」としている。【川上珠実】

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上の短い記事に“間質性肝炎”は4回登場する。一度打ち間違えた単語をコピペしたのだろうが,病気を解説している箇所でも間違ったままはまずいだろう。

ま,肺と肝は字も似ているし,“梅毒ウイルス”や“血管内で大量出血”ほど恥ずかしくはないかも。レベル的には“肛門部胆管がん”あたりと同じか。

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November 23, 2009

Cannot Avoid CVCI


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気管挿管ミス 男性死亡 業過致死容疑で捜査 大阪・羽曳野の病院

大阪府羽曳野市の医療法人・春秋会城山病院で10月、麻酔医らが男性患者(56)の左手首の手術で全身麻酔した際、気道を確保するためのチューブを誤って食道に挿入し、患者が窒息死していたことが20日、病院関係者らへの取材で分かった。病院側は医療行為に問題があったと判断し、警察に通報。羽曳野署は、医師らが注意義務を怠った可能性があるとして、業務上過失致死の疑いで関係者から事情を聴いている。

 関係者によると、男性は9月上旬、勤務先の羽曳野市内の工場で作業中、包丁で左手親指の付け根部分を誤って切り、屈筋腱(くっきんけん)と神経を断裂。職場近くの病院で皮膚の縫合手術を受けたが、その後指が曲がらなくなり、10月13日に城山病院に転院。病院は同16日に神経の縫合手術を実施した。

 手術は16日午後1時半ごろから始まり、麻酔医や整形外科医、実習中の救命士ら6人が担当。神経縫合に時間がかかることなどから伝達麻酔ではなく、全身麻酔で対応することを決め、患者の同意を得ていた。

 患者の口から気管にチューブを挿入しやすくするため、麻酔医らが筋弛緩(しかん)剤を投与。麻酔医指導のもと、最初は救命士が挿管を試みたが、30秒以上たっても挿管できず、患者に酸素が送れていないことが判明。交代した麻酔医が、のどを切開するなどして応急処置を施したが、体内の酸素濃度が著しく低下し、約3時間後に死亡が確認された。

 病院側は死亡後、遺族に経緯を説明。府警と保健所にも通報した。捜査関係者によると、司法解剖の結果、死因は窒息死で、患者の食道内にはチューブが残り、約25分間無酸素状態になっていたことが分かった。

 担当した麻酔医は羽曳野署の事情聴取に「患者は首が太く、ヘビースモーカーだったこともあり、通常より気管挿管が難しかった」と話したという。羽曳野署は、麻酔医らが十分な注意を怠り、漫然と気管挿管を実施したことが死亡につながったとみている。

 福本仁志院長は産経新聞の取材に「極めて残念なことであり、ご冥福(めいふく)をお祈りする。捜査には全面的に協力し、再発防止に努めたい」とコメントした。

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まずは亡くなられた男性のご冥福をお祈りする。

恐るべしCVCI。「自分ならこんなヘマはしない」などと思ってはいけない。彼らの挿管技術が私より劣っていたとは思えない。むしろ「自分より上手い人でも最悪の事態に陥ることがある」と肝に銘じるべきだ。

肥満患者にLMAを使おうとして苦労した経験が何回かあることと,もともとLMAはそれほど好きではないので,私も挿管を選んだ可能性が高い。同じようなCVCIに私が明日遭遇する可能性もある。ただ,私が彼らより少しだけ有利な点は,救急救命士の挿管実習を担当していないこと。
麻酔導入後のマスク換気が困難,つまりいきなりCVだったなら救急救命士に挿管させるはずがない。何回か挿管操作を繰り返すうちに気道の浮腫か出血でCVCIとなったのではないか。

早い段階で緊急気管切開キットを使うべきかもしれないが,CVCIでパニクっているなかで,一度もやったことのない手技を成功させる自信は私にはない。おそらく私は最後まで挿管を試みるような気がする。

とにかく,モニター心電図の電極シールから経皮的に酸素化+CO2除去ができるような夢の装置が登場するまでは,CVCIに遭遇しないように祈るしかない。

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November 15, 2009

アウェースコープ

10月くらいから仕事が忙しい。多忙の時は誰でも,自分が仕事を失う日のことなど想像しない。それどころか,「もう少し楽させて欲しい」と願ったりする。自分もそのひとり。しかし贅沢を言ってはいけない。商売繁盛と喜ぶべき。「フリーの麻酔科医がやっていけるのはここ数年」が的外れでない保証はない。

IMIがエアウェイスコープのキャンペーンを行っている。噂では定価の半額近くになるらしい。さてはいよいよ第二世代の発売が予定され,旧型の在庫一斉処分か? そもそも今のAWSは重たくてでかい。肥満患者ではイントロック挿入時に本体が胸部につかえてしまう。パイルダーオンとかいう方法もあるが,確かにイントロック単体では口に入れやすいものの,そのあとに大きくて重たい本体を乗っけるのは少し抵抗がある。本体にイントロックを固定する際に余計な力がかかって歯を損傷する恐れもある。それに,私はマジンガーZが好きではない。

本体が患者の胸につかえないような工夫が施され,さらに小児用やDLT用のイントロックが発売されたなら,AWSはもっと普及するかもしれない。しかし,実は私はこれの普及を密かに恐れている。
外科医たちがAWSを色モノ,マニアックな麻酔科医のオモチャ,ブラードやトラキライトに続く“いつもの”趣味の小道具と見ている間は心配ないが,彼らが「これを使えば俺たちも気道確保を恐れずにすむのではないか」と変な気を起こされると困る。AWSの成功を参考に,光学系が得意な企業がこぞって同系統の挿管用具の開発に乗り出すかもしれない。3Dのデジタルカメラさえ市販されている今日,AWSよりも進化した挿管用具が明日世に出ても不思議ではない。

麻酔科医としては「気管挿管をなめるな。器具が進化しても挿管はそんなに簡単ではない」と言い切りたいところだが,所詮はノドの奥にある2本の管の一方にチューブを入れるだけのこと。声門という,口から十数センチ奥の暗くて狭い箇所が鮮明に(特に曇らず)見えるよう液晶画面と光源を備え,チューブ先端が声門に向けて進むような仕組み(これが一番難しい?)があればいい。

外科医たちがAWSもしくはこれに準ずる挿管用具に習熟し気道確保を恐れなくなったなら,私はお払い箱になる可能性がある。麻酔科医のレーゾンデートルというか,気むずかしい(?)フリーの麻酔科医を外科医がわざわざ雇うのは,自分たちで全身麻酔を行いたくないから。なぜ自科で麻酔をしたくないかというと,気道確保に失敗すると患者の死亡や脳死につながるから。では外科医にとって気管挿管が難しい手技でなくなったとき,彼らはどうするか? 「外科医も少なくなっているので,さらに麻酔に人手をとられたくない」と,やはり麻酔科医を雇い続けてくれるか。それとも,小うるさい麻酔科医をばっさり切り捨てるか。

「AWSでの挿管に失敗したとき,外科医たちは自力でリカバリーできるか」という指摘もあるだろう。しかし現在,挿管困難が予想されない患者においてAWSで挿管に失敗した場合,その原因の大半はイントロックのサイズが1種類しか存在しないことに起因すると思う。イントロックのバリエーションが増えればAWSでの挿管不能は格段に減るのではないか。確かに我々麻酔科医はAWSで挿管に失敗しても他の引き出しを持っている。しかしAWSを使い始めた頃はともかく,何百例もAWSで挿管している熟練者がAWSで挿管できない場合,麻酔科医がその後打てるリカバリーショットも限られてくるに違いない。スガマデックスが発売される日も近い。外科医たちが「我々がAWSで挿管できないということは麻酔科医にとっても難しいはずだから,無理に挿管するのはやめよう。エスラックスをスガマデックスでリバースして手術を中止。マスク換気も難しいなら即気管切開」と割り切ってしまうことも考えられる。

もちろん麻酔科医の仕事は気道確保だけではない。循環のコントロールや術後鎮痛,悪性高熱に代表される地雷的イベントへの対処などなど…。しかし,「何年も挿管したことがない」という外科医はいても,「ドーパミンやペルジピンを使ったことがない」外科医はおそらくいない。自分たちでルンバールを施行しているなら,急激な血圧低下にもしょっちゅうお目にかかっているだろう。気道確保に比べて,循環コントロールのハードルはそれほど高くないと思われる。術後鎮痛に関しては,麻酔科医が硬膜外カテーテルや末梢神経ブロックを駆使して創部痛を完全に抑えれば,確かに外科医は術後管理が楽になる。では外科医が自分たちでプレーンな全麻だけして術後に患者が痛がればどうなるか? どうということはない。ボルタレン坐薬,ペンタジン筋注,ロピオンDIVの回数が増えるだけ。なかには「術後は痛がるぐらいがちょうどいい。まったく痛がらずにいると呼吸が止まらないか不安になる」という外科医もいる。そして地雷的イベントへの対処だが,悪性高熱症の治療に慣れている麻酔科医は少ないどころか,見たこともない麻酔科医がほとんど。経験がないという点では外科医と変わらない。アナフィラキシーショックに至っては麻酔薬以外でも発生するので,むしろ外科医の方が経験豊富かも知れない。

杞憂である可能性も高い。「俺はそこらへんの麻酔科医より挿管がうまい」と公言もしくは内心思っていた外科医は昔からいたが,彼らが麻酔することはなかった。病棟でサーボは使えても,麻酔器には触れることもできない外科医も多く見てきた。外科医の仕事だけで充分忙しいのに,わざわざ麻酔の仕事まで新たに引き受けるようなことはしないだろう。その麻酔科医のことがよほど嫌いでなければ。

とにかく,気道確保は外科医にとってホームではなく,アウェーであって欲しい。

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