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January 26, 2009

専門外は診たら負け

魚拓

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適切な治療怠った当直眼科医を書類送検

 福井県警は23日までに、2004年に同県敦賀市の市立敦賀病院に搬送された男性患者に適切な治療をせず、この患者が死亡したとして、業務上過失致死容疑で病院の当直だった眼科の男性医師(35)を書類送検した。

 調べでは04年6月5日、敦賀市内の暴行事件で負傷した無職石橋勉さん(当時61)が病院に運ばれた際、骨折した肋骨(ろっこつ)が肺に突き刺さっていたにもかかわらず、男性医師は、エックス線撮影で確認できず、適切な治療をしなかった疑い。石橋さんは2日後に肺挫傷で死亡した。

 敦賀病院によると、医師は04年4月から05年6月まで眼科医として勤務。現在は金沢市内の病院に移ったという。(共同)

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先日の尼崎医療生協病院アルコール性肝硬変腹水穿刺の件では,重度肝硬変→出血傾向を知らないどこかの市議が「とんでもない初歩的なミスで、あきれかえる」と断言して大恥かいていた。

http://tsujiyoshitaka.spaces.live.com/blog/cns!ED30C85C44D4F589!1888.entry

医学的知識のない人間が「肝硬変=メタボの親戚程度」と思いこむのは無理もないが,あんなにきっぱり明言するから赤っ恥晒して苦しい言い訳をする羽目になる。今はコメントを全部削除して言い訳を見ることもできない。よほど恥ずかしかったのだろう。

そのうちエントリーも削除するかもしれないので
魚拓

誠に申し訳ありません。
私がコメントで読んだと思った言い訳は以下のエントリーでした。
http://tsujiyoshitaka.spaces.live.com/blog/cns!ED30C85C44D4F589!1900.entry?_c=BlogPart
お詫びして訂正いたします。

市議はコメントを削除していません。私が間違っていました。


そういえば,脳出血の妊婦死亡の件で「脳内出血なのですから、脳の手術を先に行うべきでした。」と書いている素人さんもいた。
http://dreamthink.blog36.fc2.com/blog-entry-49.html


ブログは書けるが情報収集できない(しようとしない)素人が今回の眼科医に関しても,香ばしく断罪してくれるだろう。
「専門外を理由に医師が救急患者の受け入れを拒否するのはけしからん」とか書いているやつがこの眼科医を非難したならますます香ばしい。この眼科の先生は専門外の救急患者を断らずに引き受けたのだから。

しかし,眼科医に全館当直…。「5年前だから仕方ない」と言いたいところだが,私が勤めていた病院では眼科が稼ぎ頭で発言力が強いこともあって,20年前でも眼科に全館当直などさせていなかった。現在35歳と言うことは,当時は30歳。病院の医局会で「全館当直は無理」とは言えなかったか。無理もない。私も同じ立場なら言えなかっただろう。

まだ日本のどこかに全館当直(外来患者を診ない,本来の当直なら許せる)で胸部外傷も担当させられている眼科医が残っているかも知れない。書類送検された先生には気の毒だが,その犠牲は無駄にはならない。若くて発言権の乏しい医師でも「市立敦賀病院の眼科医のように書類送検されたくないので,私は専門外の救急患者は診ません」と病院管理者に言える。いや,言わなくてはならない。

ところで,医師はTriadが好き。
奈良県立五條病院心タンポナーデ,加古川市民病院心筋梗塞の二つに市立敦賀病院肺挫傷が加わって,「専門外は診たら負け」群がやっと3つになった。あれ?,他にもあったかな。

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January 18, 2009

視聴者が謝った解釈をしているだけらしい

魚拓

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テレビ朝日:自作ブログ「本物」紹介でおわび放送

 テレビ朝日系のバラエティー番組でスタッフが自作したブログを本物として紹介していた問題で、テレビ朝日は17日夜、「撮影用につくった映像である旨を明記せず、視聴者に誤解を与えかねない表現だった」とするおわび放送を流した。問題の番組は10日に放送された「情報整理バラエティー ウソバスター!」。紹介したブログ画面が、番組制作会社のスタッフが自作したものだった。

毎日新聞 2009年1月18日 東京朝刊
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>撮影用につくった映像

これってなんだ? 撮影用にねつ造したブログ画面のことか?

>視聴者に誤解を与えかねない表現だった

おわびの言葉とは思えない。「あくまでも自分らは間違ったことはしていない」と聞こえる。

そういえば系列の朝日新聞の素粒子では去年,法務大臣の実名に「永世死刑執行人」「死に神」と明記していながら後日に批判を受けて「法相らを中傷する意図はまったくありません」と言い訳していた。この「中傷する意図はまったくありません」は失笑を買いながら,便利なツールとして使用されるようになった。

「誤解を与えかねない表現だった」も使い道があるかもしれない。

使用例
「力が及ばず命を救うことができませんでした。申し訳ありませんでした」とそのときは謝りはしましたが,「私たちは致命的なミスはしていません。死亡したのは不可抗力です」旨を明言せず,患者遺族さまに誤解を与えかねない表現でした。

それにしても,テレ朝のねつ造番組名が「情報整理バラエティー ウソバスター!」 
よくできたジョークだ。

尚,テレビ朝日や朝日新聞を中傷する意図はまったくありません。

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January 10, 2009

死に至るほどの皮下出血

魚拓


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兵庫・尼崎医療生協病院:研修医、血管に傷 35歳女性が死亡

 兵庫県尼崎市の尼崎医療生協病院で昨年12月、肝硬変で入院した市内の女性(35)の腹水を抜いた際、男性研修医が女性の血管を傷つけ、女性がその後、出血性ショックで死亡していたことが8日、明らかになった。同病院は「患者は重度のアルコール性肝硬変で状態が悪く、出血は偶発的なもの」としているが、「病状の悪化を招いたことは事実」とし、遺族に謝罪したという。

 同病院によると、手術は昨年12月4日午前、主治医の立ち会いの下、男性研修医が女性の腹部にたまった水を出すため直径約1・7ミリの針を刺した。1度目では水が出なかったため2度刺したという。女性は同日夜から針を刺した腹部が皮下出血で赤くなり容体が悪化。同16日、出血性ショックで亡くなった。【幸長由子】

毎日新聞 2009年1月8日 大阪夕刊
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>患者は重度のアルコール性肝硬変で状態が悪く

35歳で重度のアルコール性肝硬変…これに関しては少し言いたいこともあるが,スルーしよう。


>手術は昨年12月4日午前
>同日夜から針を刺した腹部が皮下出血で赤くなり容体が悪化
>同16日、出血性ショックで亡くなった

大きな血管を針で穿刺し,肝機能低下による出血傾向もあいまって出血が止まらずに出血性ショックというのは考えられるが,12日間の経過はちと長すぎる。

上の新聞記事の書き方では「腹部の皮下出血は腹腔内大量出血を反映している」かのように読めてしまう。記事を書いた記者は実際にそう思っているのではないか。いや,買いかぶりすぎだ。腹腔内出血と皮下出血の違いなど知らないだろうし,どうでもいいのだろう。

腹腔内に大量出血した症例を何度も経験しているが,腹腔内の出血が腹膜や筋層を越えて皮下に滲み出ているという症例を見たことがない。また,大きな血管を損傷することなく皮下出血のみで死亡する例も知らない。まだまだ修行が足りないせいかも知れないが。

皮下出血は単に凝固能低下を示唆しているに過ぎず,腹水穿刺の成否とは無関係,つまり一回でうまく穿刺できたとしても皮下出血した可能性もある。穿刺部以外に皮下出血がなかったかどうかも重要だろう。打撲などの誘因無く皮下出血するほどの凝固能低下なら,外から見えないところ(例えば消化管)で大量出血していて,それが死因になることもある。

腹腔内や消化管に大量出血していてそれに気づかなかったとかなら病院側に落ち度があるかもしれないが,重度肝硬変による凝固能低下を主因とする出血をコントロールできなかったことを責められるのであれば,やはりこのような症例は診ること自体がリスクになる。

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January 08, 2009

あと何年?

「2009年最初のエントリーではやはり今年の抱負などを書かなくては」と気負っていたら,何も書けないうちに1週間以上が経過していた。

とりえず,今年の抱負。

硬膜外血腫や硬膜外膿瘍で恒久的下半身麻痺が起こるとしゃれにならないので,硬膜外カテーテルはなるべく入れない。

気胸や動脈穿刺,血腫による気道閉塞が怖いので,中心静脈カテーテルはなるべく入れない。

呼吸機能の悪い症例の相談を受けた場合,「全身麻酔は可能ですけど,術後長期間の人工呼吸管理が必要かもしれません」と脅して逃げる。

心機能の悪い症例の相談を受けた場合,「何かあった場合にはPCPSが必要ですけど,ここでは無理ですね」と言って逃げる。

なんていうのはすべて冗談。

なるべく術者の希望に添った麻酔を心がけないと,そのうち仕事を失って路頭に迷うかもしれない。私のような人間を嫌う連中がかつてよく言ってた,「フリーの麻酔科医なんて甘ったれた奴らがやっていけるのは,ここ数年だけ」の数年がもうすぐ満期を迎える可能性もある。

まあ,とにかく私としては悪性高熱症・肺血栓塞栓症・アナフィラキシーショックなどの地雷を踏まないことを祈りつつ,黙々と麻酔の仕事をこなしてゆくしかない。

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