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July 30, 2008

それとも脱水にしてHb上げます?


魚拓

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医療過誤で1億3000万円請求 '08/7/29

 腎結石の手術が原因で重い意識障害が残ったとして、島根県江津市の男性(30)男性の父親(59)が28日、広島市中区の医療法人に対し、計1億3000万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁に起こした。

 訴状などによると、男性は2007年2月、腎結石の治療のため医療法人が開設する中区内の病院に入院。3月に手術を受けたが、出血性ショックで心肺停止状態となり、別の病院に搬送された。蘇生(そせい)したが「蘇生後脳症」と診断され、現在も意思疎通ができない状態が続いている。

 原告代理人の広島敦隆弁護士は会見で「男性のヘモグロビン濃度が低く、手術すべきではなかったのに強行した過失がある。危険な手術との説明もなかった」と指摘している。

 医療法人側は「やむを得ない合併症であり、治療内容に過失はない。裁判で主張を明らかにしたい」としている。

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毎度のことながら,新聞記事からはどんな治療を受けていつの時点で有害事象が起こったのかわからない。

マスコミがESWLを“手術”と表記することも充分考えられる(やはり手術だろうか?)が,ESWL後の出血性ショックは聞いたことがない。そうなるとやはりPNLか。

30歳の男性が腎結石の治療後に脳障害が残ったのなら,患者家族の怒りはわかる。金額の妥当性はともかく,損害賠償請求はいたしかたない。

しかし「男性のヘモグロビン濃度が低く、手術すべきではなかったのに強行した過失がある」などという主張が通ると,今後の医療に影響が及ぶ。

例えば子宮筋腫に対するATH。子宮筋腫は貧血を主訴とすることが多い。ATHの前に既に輸血されている場合もあるが,一度も輸血されておらずATH前のHbが9g/dL以下など全然珍しくない。
このような場合,多くの医師は以下の理由により術前の輸血をためらうだろう。

大抵の場合患者は若く,心臓や肺などの合併症もないため予備能が高い
手術によって貧血の原因が取り除ける
ATHの手術中に大出血することは少ない
消化管の手術ではないので術後は早期に経口摂取でき,貧血を回復できる

上の記事における30歳男性の術前の貧血が血尿によるものなら,まさに子宮筋腫と同じ。

若くて他に持病のない患者でも『ヘモグロビン濃度が低く、手術すべきではなかったのに強行した過失がある』などで訴えられるのなら,今後は貧血患者の術前は必ず輸血するしかない。

別にそれならそれで構わない。麻酔科医にとっても術者にとっても,術前に輸血しておいた方が安心して仕事に取り組める。術前に貧血があってもあえて輸血しないのは医師の怠慢ではなく,輸血によるリスクを回避しようとしてのこと。患者のためを思ってのことで断罪されるなら,貧血患者への手術という苦労をする必要はない。

ところで,Hbの数値がどれほどから輸血しましょう。10.5g/dLぐらいで輸血して肝炎やエイズになった場合,どうせ『不必要な輸血により感染させた過失がある』とされるのでしょう?

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July 21, 2008

Tomorrow blue

TBS日曜劇場『Tomorrow』陽はまたのぼる

医療崩壊を扱ったドラマという触れ込みにちょっと期待したけど・・『コード・ブルー』に勝るとも劣らない痛さ。

意識不明で挿管されてたはずがフェイスマスクになったり(第2話)とか,医療上の細かい点にいちいちツッコミを入れる気はないけど,大淀病院の妊婦はこうすれば助けられたとでも言いたげな荒唐無稽な展開(第1話)にうんざり。

35歳で8年間のブランクがあるということは,27歳で医療から遠ざかっているという設定。
で,頭部外傷+気道熱傷+無検診の妊婦に帝王切開,携帯で指示を受けながらAVmalの患者に脳室ドレナージ,腹部大動脈瘤破裂に人工血管置換術。

ブランク前,現役バリバリの27歳の時点ではどんなスーパードクターだったんだよ。
医学部にストレートで合格して留年がなくても医師になるのは24歳。
たった3年で何でもできるドクター。
どんな医療事故で医者を辞めたかは来週ぐらいに明らかになるらしいが,短期間に産科や血管外科を術者としていろいろさせられたら,そりゃトラウマになるような目にも遭うのも一回や二回では済まないだろう。

でもまあ,日曜の夜だし。夕食も終えてテレビに向かってツッコミ入れながら観るのも一興か。
奴隷勤務医の頃なら,サザエさんブルーを引きずっている時間帯。
笑いながらドラマ観ていられる今の環境に感謝。

また,医療ドラマには医者ならではの別の楽しみ方もある。
それは,医療行為中に発される次のセリフを言い当てること。

今回,AAAのシーンで私が「人工血管」と口にした直後に竹野内豊も同じセリフを言ったので家族に感心された。調子に乗って「デクランプ(ちゃんとした英語ではunclamp)」も言ってくれるかと期待したが「遮断解除」だった。

5-0プロリーンとか糸の商品名を言うのも最近のトレンド。

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July 13, 2008

コード・グレイのほうが重要では?

2回分録画していた『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』とかいうドラマを観てしまった。

近年まれに見る痛さ。

ヘリコプターがあたかも「若い医師たちのあこがれの対象」かのように映し出される。
『トップガン』のトムキャット並の扱い。ドクターカーじゃだめなのか?

私の価値観では,チョッパーに乗せられるのって罰ゲーム以外の何ものでもない。
私が当番なら吸血鬼のように日が没するのを今か今かと恋しがるだろう。

でもまあ,(現実の医療環境についてアドバイスしてくれる医療従事者が周りにいない)なま賢い中高生がこのドラマ観て救急医を目指し,この夏休みから猛勉強してくれるかも。

それにしても
「よく見ておけ、お前が殺しかけた・・・いや、殺すかもしれん患者だ」
こんなことを言う上司からは一刻も早く逃げ出さなければならない。
よく「上司や院長に背後から撃たれる」という表現を目にするが,いくらドラマでも指導医が正面からフルオートで撃ってくるなんて。

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July 11, 2008

医師生命がブロックされる


魚拓

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函館市:「手術で後遺症」 患者に8290万賠償で示談 /北海道

 函館市は8日、市立函館病院の手術で右腕まひの後遺症が生じた渡島管内の30歳代の男性患者に8290万円余を賠償する示談が成立した、と発表した。麻酔の薬液が誤ってくも膜下に入り神経を損傷した可能性があり、同病院は「施術にミスはなく原因は不明」と説明しているものの、全身と局所を併用する現在の麻酔方法を改めることにした。

 市によると、男性は右肩関節の慢性脱臼の治療のため昨年4月、関節形成の手術を受けたが、右腕が機能しない障害2級のまひが残った。この手術では術後に強い痛みが残るため、全身麻酔と右首下部への局所麻酔を併用。しかし、局所麻酔の薬液が脊髄(せきずい)神経の束になっている部分を通じ、くも膜下に入り込んだ跡が確認されたという。【昆野淳】

毎日新聞 2008年7月9日 地方版

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今,麻酔科では超音波ガイド下神経ブロックが流行っている。
市立函館病院で行われた局所麻酔もおそらく神経ブロックだろう。
私も「いつかできるようにならないと生き残れないかも」と少々不安になっていたが,その不安は解消された。

余計なことはしないほうがいい。


>麻酔の薬液が誤ってくも膜下に入り神経を損傷した可能性があり

麻酔薬がクモ膜下腔に入って神経損傷が起きるなら,脊髄くも膜下麻酔(いわゆるルンバール)も御法度だな。
短時間で終わる下肢の手術もすべて全麻という風潮になれば,私は有り難い。

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July 06, 2008

そんな狭き門だとは知らなかった

魚拓
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川崎医大入試前面会:同じ関係者ら、埼玉医大でも 秘書室長に仲介

 大阪市の医科歯科系大学受験専門予備校「メディカルゲイト」の経営者(55)らが、推薦入試前に男子予備校生の母親と川崎医大(岡山県倉敷市)の副学長との面会を仲介していた問題で、同じ関係者らが埼玉医大(埼玉県毛呂山町)を経営する学校法人の秘書室長との面会も仲介していたことが分かった。予備校生は不合格で、秘書室長は「特別扱いはしていない」と話すが、文部科学省は「疑念を持たれかねない」と調査に乗り出した。

 母親によると、長男の入試を控えた07年1月に、予備校経営者の知人らと共に埼玉医大に行き「学校法人埼玉医科大学」の大沢公好秘書室長に会った。「長男が受験します。(合格したら)寄付をしますからよろしくお願いします」などと話した。 大沢室長は取材に対し「紹介者から頼まれてやむを得ず会った。適切でなかった」と話す。【日野行介】

毎日新聞 2008年7月3日 東京朝刊
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以下はグーグルニュースで引っかかった同様の記事のタイトル

川崎医大副学長が入試前に保護者と面会
時事通信 - 2008年7月2日

川崎医大入試前面会:同じ関係者ら、埼玉医大でも 秘書室長に仲介
毎日新聞 - 2008年7月2日

裏口入学あっせんに4500万円 医科大副学長と面会
朝日新聞 - 2008年7月2日

川崎医大副学長、推薦入試前に受験生母親と面会 予備校職員ら仲介
MSN産経ニュース - 2008年7月2日

推薦入試に絡み4500万円 大阪のコンサル、母親から
47NEWS - 2008年7月2日

現金受け取った予備校社員、医大副学長に受験生の母を仲介
読売新聞 - 2008年7月2日

岡山・川崎医大:副学長が受験生の母と入試前に面会
毎日新聞 - 2008年7月2日

もう,川崎医大の副学長を叩く気まんまん。

しかし予備校生は川崎医大に筆記試験で落ち,面接すら受けていないという。

単に大学側が「あんなバカ,いくら寄付金積まれても入学させるわけにはいかない。国試の合格率が下がるだけ」と切り捨てるほど予備校生が低脳だった,あるいは大学側とのパイプは予備校側が思っているほど太くなかっただけかもしれない。しかし,医者叩きしたいマスコミの意図に反し,川崎医大とその副学長の世間からの評価はむしろ上がったのではないか。

私立大学の裏口入学など全くない方が不思議なくらい。医学部に限らず,どこにでもありそうな話をマスコミはわざわざほじくり出し,いつものように医者叩きに精を出そうとしたとたん,大分の教員採用汚職。

かたや4500万円積んでも大学入試(しかもセンター試験ではなく,私立大学の推薦入試の筆記試験)で不合格,かたや公的な教員採用試験に100~200万円で合格。

別に教育界よりも医療界のほうが健全などと言うつもりはない。敵に糧を贈ってしまったマスコミが滑稽。でもやつらのこと,「川崎医大は大分県教委の汚職事件で命拾いしたな」と本気で思っているかも。

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