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June 27, 2008

Do Not Record


魚拓

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飛行機内で救命中、傍観乗客の視線と写真撮影でPTSDに
2008.6.25 09:08
このニュースのトピックス:航空・マイレージ

 航空機内で心肺停止した男性に蘇生(そせい)措置をして助けた女性が、やじ馬状態のほかの乗客に写真を撮影され、恐怖心などから心的外傷後ストレス障害(PTSD)になった。

 女性を診察した国保旭中央病院(千葉県)の大塚祐司医師によると、女性は会社員。救急法の指導員資格があり、機内で倒れた男性に独りで人工呼吸や心臓マッサージをした。男性は呼吸が戻り、規則的な心拍も回復して命を取り留めた。

 この間、多くの中高年の日本人男性乗客らが「テレビと同じ」「やめたら死ぬんでしょ」と携帯やビデオで撮影。女性は中年男性が集まる場所で過呼吸症状が出るように。カメラのシャッター音が怖く携帯のカメラも使えなくなった。「やじ馬の罵声(ばせい)と圧力の怖さは忘れないと思う」と話しているという。

 客室乗務員は手伝わず、AEDを頼んだが、持ってこなかったという。
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私は昨年の6月にはこんなことを書いていた。


秋葉原の事件でも不心得者による携帯カメラ撮影が記憶に新しい。何か変わったことがあったら写真に撮られ,学校や職場で目立った行いをすると掲示板で叩かれる。今の世の中,世間の注目を浴びてはいけない。

飛行機や新幹線のなかで必死に蘇生措置を行っても,助からなければ民事訴訟-県によっては逮捕もあり得る。しかも,蘇生行為中の画像(動画もあり)がネット上あちこちに貼り付けられる。

将来,きっと朝のワイドショーなどで以下のようなやりとりが見られるはずだ。

○井アナウンサー「これは乗客の方がケータイで撮った,尊南有香容疑者の治療行為中の映像です」
△倉キャスター「◎藤さん,どうですかねえ? 素人の私からみても真剣にやっているようには見えないですけどねえ」
自称医療ジャーナリスト◎藤×也「ええ,これは素人以下ですね。蘇生の講習にはBLSとかACLSとかあって,私もいろんなところで蘇生の講習を見てきましたがこれはひどいと思います」
■々木アナウンサー「どういうところがひどいんですか?」
自称医療ジャーナリスト◎藤×也「ええ,まず心臓マッサージの回数ですが,普通は1分間に100回なんですが,画像から尊南容疑者のマッサージの様子を詳しく調べたところ,1分で92回のペースなんです」
△倉キャスター(目を見開いて)「えー? それじゃあ8回も足らないじゃないですか。8回も足らないとねえ,どうですか? 室◆さん」
作家の室◆祐▼「あたしさあ,あんな人に蘇生されたくないわ。お医者さんなんだからぁ,もっとしっかりしてよと言いたいですよね。腕時計見ながら数えれば小学生だってちゃんとできますよね」
自称医療ジャーナリスト◎藤×也「しかもですね,口移しの人工呼吸を一切しなかったんです」
△倉キャスター「え? 一度も人工呼吸をしなかったんですか? それは医師法かなんかに違反しないんですか?」
自称医療ジャーナリスト◎藤×也「ええ,エイズなどに感染する危険性もあるので一応しなくても構わないことにはなっていまして,警察もこの件は立件せず,現在のところ容疑は過失致死だけです」
△倉キャスター「そうはいってもねえー。エイズ患者なんかそうそういるわけじゃないし。だいたい,人の命を救うためにお医者さんになったわけでしょー? ねえ,●田さん,どう思います?」 
作家の●田□良「この医者は自分のことしか考えていないですよね。こういう人物を最初から医者にしないシステムが必要ですね」
△倉キャスター「そうですよー。われわれが飛行機のなかで病気になったら,乗り合わせたお医者さんにしか頼れないんですから。こんなことが二度と起こらないよう,裁判所は尊南有香容疑者に厳罰を下して欲しいと思います」
○井アナウンサー「まったくです。はい,では次の話題に移ります。えー昨日埼玉県の住宅街に野生のサルが出没しましてー・・・」

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June 26, 2008

それ,デスノートか


魚拓

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朝日「死に神」報道、あすの会が抗議
2008.6.25 19:02

 朝日新聞が18日付夕刊1面コラム「素粒子」で、昨年8月の就任以来計13人の死刑執行を指揮した鳩山邦夫法相を「死に神」と表記した問題で、「全国犯罪被害者の会」(あすの会)は25日、「犯罪被害者や遺族をも侮辱する内容」だとして、朝日新聞社に「抗議および質問」と題する文書を送付した。

 文書は「確定死刑囚の1日も早い死刑執行を待ち望んできた犯罪被害者遺族は、法相と同様に死に神ということになり、死刑を望むことすら悪いことだというメッセージを国民に与えかねない」などとしている。また、死刑執行の数がどうして問題になるのか-など4項目の質問に、1週間以内に回答するよう求めた。

 朝日新聞社広報部は「いただいた『抗議および質問』を真摯(しんし)に受け止め、速やかにお答えする」とコメントを出した。

産経ニュース
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毎日新聞も同様
魚拓

グーグルニュースでの検索ではこの件に関する読売の記事は見あたらない。同じくスネに傷持つ身ゆえのスルーか? 読売新聞の不祥事発覚間近?

それはさておき,犯罪被害者の会の次は刑務官やその家族あたりから抗議の声があがるかもしれない。

妄想未来新聞 番外編 読者投稿欄

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ぼくのおとうさんはけいむかんです。こうちしょというところではたらいています。わるいことをしてけいさつにつかまったひとがにげないようにみはっています。ときどきしけいをてつだうこともあります。でも,おとうさんはしけいのしごとをやりたくないといっています。でも,くにがきめただいじなしごとだからしかたないとかなしそうにいいます。ぼくのおとうさんはしにがみではありません。やすみのひにはいつもいっしょにあそんでくれます。とてもやさしいおとうさんです。ぼくはおとうさんがだいすきです。きょうはがっこうでともだちがぼくのこくごののーとをゆびさして「それ,ですのーとか」「しにがみのこはしにがみ」といったのでないてしまいました。がっこうでいじめられたくないので,おとうさんのことをしにがみとよぶのはやめてください。
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あ,そうそう,私はいかなる個人・団体も中傷するつもりはまったくありません。

明日ぐらいの素粒子が楽しみ  言い訳は大勢で相談して決めるのだろうか。 それとも完全無視か。

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June 22, 2008

判決下した裁判官を何と呼ぶ

魚拓

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海の監視怠ったと両親が提訴 愛知の小2男児水難事故
2008.6.9 18:02

 愛知県田原市の伊良湖海水浴場で昨年8月、ゴムボートが転覆し、投げ出された同県春日井市の小学2年、阪本晃紀君=当時(7)=が死亡した事故で、両親が9日、海水浴場の運営団体に対し、監視を怠るなど安全管理に不備があったとして2000万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。

 訴状などによると、昨年8月24日、晃紀君は自営業の父、勝司さん(38)と母、千晶さん(38)らと海水浴場に来ていたが、晃紀君1人が乗ったゴムボートが約150メートル沖に流されて転覆した。

 運営団体がライフセーバーを待機させず、沖を見通せる監視台を設置しないなど、安全に配慮する義務を怠っていたとしている。

 運営団体は「訴状を見ていないので現段階でのコメントは差し控えたい」としている。
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割り箸事件とかぶって見えるのは私だけか。

いや,割り箸事件では刑事訴追も受けていた。無罪だったが。

こんなことを書いただけでも医療事故の“被害者”に対する中傷とされそうなので,これくらいにしておこう。

さて,中傷と言えば


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そして,その釈明が

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わずか50文字あまりのフレーズに実名と「永世死刑執行人」「死に神」を明記しておきながら,「チクリと刺したつもり」「中傷する意図はまったくありません」か。

文章読解能力の低い理系の私にはとても理解できない。
朝日は記事が入試問題に使用されるのが自慢のようだし,来年のセンター試験の国語の問題に使ってみてはどうか。

尚,私が死刑廃止に賛成か反対かは内緒。

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June 21, 2008

開封後はお早めにお召し上がり下さい


魚拓

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残液と消毒綿容器からセラチア菌検出 三重・点滴事故

2008年6月19日13時31分

 三重県伊賀市の診療所「谷本整形」(谷本広道院長)で鎮痛薬の点滴を受けた患者が相次いで体調を崩し、1人が死亡した医療事故について、三重県は19日、同診療所で汚染された点滴液による院内感染だったと断定した。15人の患者が出た9日の被害について、患者の血液や使用済みの点滴液の空容器の残液、点滴液の調合の際に使う消毒綿の容器から同じ種類のセラチア菌を検出。消毒綿の汚染と点滴液の長期の室温保管で、点滴液内に菌が増殖したことが原因としている。

 県保健環境研究所による検査で、9日に点滴を受けた患者6人の血液、点滴液の容器7パックの残液、消毒綿の容器から、セラチア菌の一種、「セラチア・リクファシエンス」が検出された。

 県によると、同診療所では点滴液を調合する際、点滴容器の注入口を消毒綿でふいていた。消毒綿には、アルコールではなく、本来10~50倍に薄めて使う消毒液「グルコン酸クロルヘキシジン」を千倍にして使っており、県は殺菌効果がなかった可能性が高いとみている。消毒綿は日常的に作り置きされ、看護師らは、素手で脱脂綿をつかんで容器の中に入れて作っていたという。不衛生な環境での点滴液の作り置きが常態化していたとみている。

 看護師らは作り置きした点滴液が少なくなると追加で調合。診療終了後の余りは捨てずに、日常的に冷蔵庫でなく机の上で保管して翌診療日に持ち越していた。7日以前に作られ、月曜日の9日に持ち越されたのは20本以上あった。ただ、点滴液に調合日の記載がなく、何日に調合されたものか分からないという。
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消毒綿の汚染と点滴の作り置きが重なったために悲劇が起こったようだ。

というより,消毒綿の汚染が主役と思われる。

開封したばかりの輸液製剤のゴムキャップ部分を消毒綿で拭く必要があるかどうかという問題はさておき,わざわざ汚染された消毒綿で拭いてはどうしようもない。

ところで,いわゆる「点滴の作り置き」自体もやり玉に挙げられているが,どうしたものか。

完璧な清潔操作で混注作業をしたとしても点滴の作り置きはしてはならないなら,「混注を終えてから投与開始までの許容時間は?」ということになる。

例えば仮に「24時間以上の作り置きはダメ」とすると,困ったことがおきる。

ICUなどでは50mLのシリンジに満たした血管作動薬をシリンジポンプにセットし,1mL/hr程度の速度で微量投与していることがあるが,これでは全量が投与されるまでに50時間かかってしまう。

また,麻酔科医が術後鎮痛に用いる持続硬膜外では以下のようなものに局所麻酔薬や麻薬を入れて使うことが多い。これらのインフューザーは硬膜外鎮痛だけではなく,抗がん剤などの静脈内投与にも使用できる。

http://www.baxter.co.jp/iv/medical/data01.html

大きなインフューザーでは最大7日もつなぎっぱなしが可能。

患者に接続しない状態での24時間放置は×,患者につながれた状態では7日間でもOKと見なすのか。

刺身を作ってから1日たったものを食べさせるのは×
大量の刺身を作った直後に客(大食いだが食べるのが遅い)に食べ始めてもらい,一昼夜かけて最後まで食べさせるのはOK?

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June 20, 2008

麻酔が上手くなる資格


魚拓

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医学部定員増へ、厚労相の私的懇談会が報告書
医師必要数の算定数見直しにも言及「安心と希望の医療確保ビジョン」
軸丸 靖子(2008-06-19 12:45)

 医師不足にどう対応していくか、中長期的な方向性を探る舛添厚労相の私的諮問機関「安心と希望の医療確保ビジョン」の報告書が18日、まとまった。最大の焦点だった医師不足については、医学部の定員削減をうたった1997年の閣議決定を覆し、「医師養成数を増加させる」と明言した。

 報告書は、医師不足などに端を発する医療崩壊の現状を深刻にとらえた内容。経済財政諮問会議の「骨太の方針08」が17日に社会保障費への歳出を確保するとしたことと併せて、「医師数や医療費は増やすんだ、という国の姿勢が固まった」(舛添大臣)といえそうだ。

 ただ、財源には道路特定財源の一般財源化分をあてにしていると見られており、実現可能性は不透明。今後の予算の分捕り合戦で、関係者がどこまでやれるかにかかっている。

医学部定員増について、会見で今後の見通しを話す舛添厚労相=18日18時、東京・霞ヶ関の厚生労働省(撮影:軸丸靖子)

 「安心と希望の医療確保ビジョン」の報告書は、現況の医療をとりまく問題について、「少子高齢化の進展や医療技術の高度化という環境変化のなかで、医療サービスの質向上と同時に、量も増やしてほしい」という国民の声が強く、医療従事者からも厳しい労務環境の改善を求める声が高い、と整理。

 特に医師不足については、現状では単に医師の絶対数を増やすだけでは解決せず、医療従事者、患者・家族・国民で医療を支えていく姿勢が必要、としている。

 ただ、医師養成数の具体的な期限や人数については明言されず、会議後の記者会見で、「大学の教員数や予算の諸条件を考え、他省庁との調整の上で数字を出す」とされた。

 医学部の定員は現在年に約8000人。1997年の財政構造改革の議論では、医師数は将来的に余るとされ、大学医学部の整理・統合、医学部の定員減に取り組むことが決定されていた。ただ現実には、医療技術が高度化するほど、従事者の数は必要になる。これが現在の医師不足問題の一因になっていた。

 具体的な提言内容は以下の通り。

(1)医師養成数の増加や臨床研修制度の見直し、女性医師の離職防止・復職支援といった医師養成策の促進。同時に、高度なスキルを持つ看護職の育成や院内助産所の普及、医療秘書の推進など、チーム医療を充実させる。過剰とされる歯科医は適正需給を検討。麻酔科医の標榜資格は規制を緩和。「入院患者16人に対し医師1人」などと定められている必要医師数の算定方式も見直す

(2)地域全体で救急患者のトリアージ(重症度・緊急度による区分)を行うなど、救急医療の効率化と充実をはかる。医師の疲弊を防ぐため、救急の交替制勤務、夜間・救急医療の適正化の推進。1つの医療機関がすべてのニーズに対応する「医療機関完結型」から地域の医療機関が連携して対応する「地域完結型」への転換。介護との連携など地域医療の充実を進める

(3)医師と患者・家族の相互理解を深め、コミュニケーションの改善を進める。医療は公共財で有限であるとの認識を広め、不必要なコンビニ受診を控える、妊婦検診を適切に受診するなどの啓発を行う。併せて「患者塾」、「病院探検隊」、学校教育を通じて、病院や医療の役割について社会的な理解を広める

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「麻酔科医の標榜資格は規制を緩和」に既視感を覚えた。
思い出した。これだ

魚拓

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大阪府:輪番制、救急病院の基準緩和案を提示

 大阪府の救急医療の立て直し策として、橋下徹知事が検討を表明した救急の輪番制について、府救急医療対策審議会の小委員会は15日、議論を始めた。輪番制は地域ごとにその日の当番病院を決める制度。実現に向け、府は救急病院の認定基準を緩和する改正案を示したが、委員から効果を疑問視する声が相次いだ。府は4月までに結論をまとめる。

 従来の基準では、救急病院は休みなく急患受け入れに備えねばならず、輪番制導入には基準改正が必要。改正案では、現在診療科ごとに2人以上必要な救急医療の担当医師を1人以上に緩和する。小規模な病院や診療所が輪番制に参加しやすくするため。【根本毅】

毎日新聞 2008年2月16日 大阪朝刊

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「規制を緩和してやれば救急指定病院も増えるし,麻酔科医も増える」と本気で考えているのだろうか?

「俺,麻酔には自信があって,そこらへんのフリー麻酔科医よりエピドラも挿管も上手だけど,標榜医の資格を持っていないので麻酔できないんだよね。麻酔に割ける時間も充分あるんだけど,残念だなー」という医者が日本中に溢れている場合はとても有効な策だろう。

念のため,医師にとっては当たり前過ぎて話題にもならないことを書いておく。
それは,「全身麻酔も含め,医師免許を持っていれば誰でも麻酔を行って構わない。麻酔科標榜医の資格など全然関係ない」ということ。

では,麻酔科標榜医とは何か?

簡単に言うと,「麻酔科標榜医の資格を持つ医師が常勤医としてその病院に勤めていれば,その病院は看板に麻酔科を掲げても構いませんよ」。

私は標榜医だが常勤医ではないので,私のバイト先は看板に「麻酔科」を掲示できない。

他の診療科は自由標榜なので,例えば内科が週一回の非常勤だけ,もっと極端に言うと内科医が皆無でも病院の看板に「内科」と表示できる。外科も皮膚科も耳鼻科も眼科も整形外科も小児科も産婦人科も同様。ほとんど心臓を触ったことのない外科医しかいない病院でも看板に心臓外科と表示することも可能だ。しかし,麻酔科だけは違う。麻酔科を有する大きな病院で診療科を明記した看板を見て不思議に思った人もいるだろう。麻酔科のところだけ医師名が併記されていることがある。それは標榜医資格を持つ医師の名前。

そして麻酔科標榜医は専門医や指導医のように学会が認定するものではなく,厚労省が審査し認可する資格だ。

標榜医を認可する機関である厚労省自体が,「規制緩和して標榜医が増えれば麻酔科医不足解消になる」と真剣に考えているのなら,今後もどんな策を打ち出すか楽しみだ。

「水着が泳ぐわけではない」のと同様,「資格が麻酔するわけではない」
水泳選手がレーザーレーサーを着用すれば昨日より好タイムを出せるかもしれないが,一人の医師に麻酔科標榜医の資格が(しかも規制緩和によって)付与されたとしても,昨日より安全な麻酔を行えることはない。

何ならいっそのこと,医師免許にバンドルしたら? 医師になったとたんに全員が自動的に麻酔科標榜医。麻酔科医不足なんて一瞬で雲散霧消。

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June 12, 2008

妄想未来新聞25

秋葉原で被害に遭われた方々には心よりお見舞い申し上げます。

以下の妄想は現在のマスコミのヘタレぶりを嘲弄するためのものであり,通り魔事件を茶化すつもりは毛頭ございません。

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F市で通り魔 病院は被害者救えず

F県F市の某繁華街でN日午後3時頃,刃物を持った男が次々と通行人を襲い,多数の死傷者がでた。男は駆けつけた警察官にその場で取り押さえられた。男は東京都○○区△▽,工員野洲葉憲太(30)容疑者。

調べによると野洲葉容疑者は同日午前10時頃東京都内のホームセンターでカッター,文化包丁,ノミなどを購入した後,F県に向かった。このホームセンターでは一人の客が刃物のみを大量に購入したにもかかわらず,店員は不審に思わなかったという。同容疑者はF県を選んだ理由について「東京は人も多いが病院も多いので,大きなけがを負わせても助かる可能性がある。F県なら医師がほとんどいないので,ちょっとしたけがでも治療を受けられずに死んでいく」と供述している。同容疑者はV県の出身で子供の頃から成績が良く,高校は地元のトップクラスの公立校に進学,卒業後は現役で都内の有名大学に入学した。しかし中学時代の同級生は「真面目で勉強もスポーツもできたが,ちょっとしたことですぐキレるタイプだった」と話す。高校時代の同級生は「アニメや戦争のことを話し出すと止まらなくなる。今にして思えば目つきも異常だったような気がする」と語った。また,同容疑者の自宅を家宅捜査したところ,部屋からアニメ関連のフィギュア,ゲームソフト,コミック,軍事・兵器の雑誌などが大量に見つかった。さらに押収したパソコンを調べたところ,インターネットの掲示板に大量殺人を賞賛するような書き込みをほぼ毎日投稿していたことが判明した。

被害者が運ばれたF県立病院では後期研修を終えたばかりの医師がひとりで治療に当たっていたが,病院到着まで生存していた複数の被害者が1時間以内に全員が死亡したため,医療事故調に書類が送られる模様。

おことわり この事件で,売日新聞社は昨日午後9時の時点における死傷者の正確な人数・けがの重症度を把握しておりますが,死傷者の数を競う模倣犯への影響を考慮し,報道各社との協定に基づき,死傷者の数の発表は控えております。また,容疑者の置かれた境遇を詳しく報道した場合,似た境遇にある第三者が容疑者に共感し同様の事件を引き起こす恐れがあります。このような理由からも報道協定が結ばれ,容疑者の職業や勤務環境についてもあえて報道いたしません。

医療ジャーナリスト◎藤×也氏
病院到着時に生存していたなら,医療ミスで死亡した可能性が高い。まさに異状死だ。医療事故調への届け出は当然。医師は無差別殺人を間接的に幇助している。

経済アナリスト△永□郎氏
オタク文化が悪いせいではない。医療がここまで崩壊してなかったなら,犠牲者はもっと少なかったはずだ。早く歯科医を医師に格上げし,救急医療を強制的に行わせるべきだ。

医療崩壊問題に詳しい,◆◇大学の☆★教授
何が何でも刃物,医療,オタク,インターネットなどに責任転嫁したいらしいが,犯行に至った動機や経緯など,もっと本質的なものを探るべきだ。

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June 08, 2008

DAMのアルゴリズムは覚えきれない

魚拓

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4400万円で和解

02年6月、豊橋市内に住む男性(当時51歳)が呼吸困難を訴えて豊橋市民病院を外来受診してそのまま入院、容体が悪化したため当直医が気管挿管を試みたが、失敗し、低酸素脳症による植物人間となり、今も続いている医療事故訴訟で、控訴していた病院側が和解勧告に応ずることになり、2日開かれた市議会議会運営委員会に報告した。和解金額4400万円。6月市議会定例会に議案として上程し議決後、正式な和解手続きに入る。

 この男性は92年から気管支ぜんそくなどのため同院に通院していた。呼吸困難を訴えて外来受診し入院した際、夜になって血中酸素状態が悪化し集中治療室に入ったが、容体悪化に伴い当直医が気管挿管を試みた。しかし肥満、猪(い)首、咽頭浮腫(ふしゅ)などのため挿管が困難で、心停止に陥った。

 心臓マッサージや蘇生(そせい)処置により心拍は戻ったものの、脳への酸素供給停止となり、低酸素脳症による植物人間となった。

 そのため迅速な挿管に失敗したことが後遺障害の原因だとして04年7月、病院を相手取って総額8443万円を求める訴えを起こし、06年9月、担当医師の判断ミスを認め、5142万円を支払うよう命ずる名古屋地裁豊橋支部の第一審判決が出された。

 病院は、医師個人の処置ミスはないと主張し、判決を不服とし控訴していた。

 名古屋高裁から今年3月、和解勧告があり、①医師に過失があったかどうか、肯定することは困難②ほかの医師との連携が十分であったかどうかは争点とされるべき③三次救命救急センターのICU内で管理中の症例であったことから、気管挿管困難症に適切に対処できる病院の態勢は不十分であり、これが事件に結びついた―とし、和解金4400万円が示された。

 同院では、担当医師の過失は認められないという判断が出て、賠償額も減額されたとして、応じることを決めた。

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結果が悪ければ医師や病院の落ち度とされることには慣れてきた。

第一審の判決や和解という結論に関してもコメントする気にもなれない。

ただただCVCI(cannot ventilate, cannot intubate)の恐ろしさに震えるのみ。

私もいつかこの地雷を踏んでしまうかもしれない。

シナリオとしては以下のようなものだろう。

ASA PS1の患者で動揺歯も無く,開口・頚部後屈も充分。しかも良性疾患の短時間の手術。「今回の症例は楽勝」と,ノーケア。
いつも通り全身麻酔の導入を行い,さあマスク換気しようと思ったら「あれ?バッグを押せないぞ。回路はチェックしたはずだが。あ,そうか切り替えレバーがレスピレータ側に・・いや,ちゃんとマニュアル側になっている」
円座の高さを調整し,下顎をしっかり持ち上げてバッグを押してもやはり胸は上がらない。
試しにマスクを自分の口にあてて息を吸ったり吐いたりすると,それに合わせてバッグがしぼんだり膨れたりする。
「呼吸回路は問題ない。ちょっと,胸に聴診器あてて!」
「ガスがまったく肺に入って行かない。喉頭痙攣か?それなら筋弛緩が効いてくると換気できるはず」
パルスオキシメーターの音色が変化し,数値が落ちてくる。待ちきれず「とりあえず挿管しよう」
あわただしい手つきで喉頭鏡を手にし,喉頭展開を試みる。
「喉頭蓋の先しか見えない!」(大きな腫瘍が見える可能性もあり)
「ファイバー持ってきて! それとインチュベーティングラリマも!」 
徐脈になってくる。以下略

何よりもやっかいなのは,CVCIの状態になったときには既に患者は非常に危険な段階であること。

あわてふためいているであろう私が,一度も実際に使用したことのない輪状甲状膜穿刺キットで急場をしのげると考えるほど楽観主義者にはなれない。

おそらく,私はCVCIに遭遇した時点で負けである。

同じ地雷でも悪性高熱やアナフィラキシーショックならCVCIほど勝負は早くない。CVCIは麻酔科医にとってもっとも遭遇したくない厄災に違いない。

ただし,MHやアナフィラキシーショックと違って,CVCIは地雷の密度の濃い領域と薄い領域が存在すると私は考えている。

MHやアナフィラキシーショックは誰がどんな麻酔をしていても遭遇する。アナフィラキシーショックに至っては特定の診療科だけが遭遇するのではなく,臨床医なら誰でも当たってしまうことがある。もちろんCVCIは気道確保を常とする麻酔科医と救急医ぐらいしか直面しないだろうが,麻酔科医のなかでも担当する手術によって当たる確率が大きく異なるはずだ。

CVCIの発生頻度や原因などについて考察した文献を探したが,見つけられなかった。私の検索能力が低いだけかもしれないが,おそらくCVCIの客観的評価は難しいと思われる。ある未熟な麻酔科医にとってCVCIだったとしても,熟練した麻酔科医ならマスク換気も挿管も簡単だったということがあるかもしれない。後日に第三者が検討できるようなデータ(そのときの喉頭の状態を映した写真など)もおそらく残せない。MHなどでは医師の熟練度によらず,MHはMH。それにうまく対処できるかどうかはもちろん施術者の知識と経験によるだろうが。

私がたまたま目撃した唯一のCVCIは喉頭腫瘍の患者だった。頭頚部外科では危険な喉頭腫瘍は麻酔導入前に局麻で気管切開を施行するが,その症例は換気困難の危険性が低いとされ,気管切開の前に麻酔導入が行われた。研修医が挿管に失敗し,指導医(私ではない)に交代したがやはり挿管は困難で,そのうちにマスク換気もできなくなってきた。しかしすぐそばにいた耳鼻科医による緊急気管切開で窮地を切り抜けることが出来た。気管切開に慣れた耳鼻科の先生がそばにいて,気管切開用の道具も揃っていたからこそ大事に至らなかったものの,その場にいた誰もが肝を冷やした。

私は耳鼻咽喉科,特に喉頭腫瘍を専門とする頭頚部外科,さらには前縦隔腫瘍を切除する胸部外科を避けていれば,CVCIに出くわす確率は格段に低くなるのではないかと踏んでいる。もちろん,未発見の喉頭腫瘍や前縦隔腫瘍を持った患者が他の手術を受ける可能性もある。「数週間前から喉の奥に違和感があるので耳鼻科を受診しようと思っていたが,町の検診で胃がんが見つかったので耳鼻科どころではない」。こんな患者に麻酔導入したら,ボール状の喉頭腫瘍が気道を塞いだというレアケースに当たるかもしれない。喉頭腫瘍の成長段階の途上で,普段の症状はそれほど強くないが何かの拍子に気道を塞ぐには充分な大きさの時期,そのどんぴしゃのタイミングで麻酔を担当してしまった自分の不運を嘆くしかない。

他に私がCVCIにぶち当たる可能性としては,当初CVCIではなくCIだけ,つまりマスク換気は大丈夫だが挿管が困難で,挿管操作を繰り返すうちに喉頭浮腫となりCVも伴ってくるというストーリー。そのときは頭に血が上って「何が何でも挿管しなくては」と周りが見えなくなっている可能性がある。しかし私が現在担当している手術の多くは,必ずしも気管挿管を必要としない。プロシールLMAならストマックチューブも入れられる。挿管操作を3回ほど試みて不可能だったならCVに陥る前にラリマに変更すればよい。ただ,麻酔科医が挿管を諦めるのは勇気がいる。つまらぬ意地を張らないよう,普段から自分に「挿管できないのは恥ではない」と言い聞かせておく必要がある。もちろんこれは予定手術の麻酔での話で,上の記事のような救命のための挿管はこの限りではないことを付け加えておく。

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June 02, 2008

判決も記事にしてくれ

魚拓

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損賠訴訟:妊婦、胎児死亡で遺族が提訴 沼津市など相手に /静岡

 妊娠中に肝機能障害を起こした下田市内の女性(当時31歳)と胎児が死亡したのは、適切な経過観察をせず処置が遅れたことなどが原因として、女性の両親が29日までに、同市の医院と沼津市立病院を管理する沼津市を相手取り、計約1億300万円の損害賠償を求める訴訟を地裁沼津支部に起こした。

 訴状によると、女性は05年12月19日に妊娠の定期検査で高血圧と足のむくみが見つかり、下田市内の医院に入院。同25日に肝臓の検査値が基準の約15倍と分かり、沼津市立病院に緊急搬送され手術を受けたが、同日に胎児とともに死亡した。

 原告側は、下田市内の医院は肝臓の異常に気付くのが遅れ、沼津市立病院は手術までに約2時間かかったと指摘。女性は迅速な処置が必要な急性妊娠脂肪肝だったのに、処置の遅れが死亡につながったと主張している。

 沼津市立病院は「訴状をよく見て対応を検討したい」とし、医院は「精いっぱいやったが、亡くなってしまったことは残念」と話している。【山田毅】

毎日新聞 2008年5月30日 地方版
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急性妊娠脂肪肝という病気がどれほど珍しく,どれほど救命が困難かは
天漢日乗氏
僻地の産科医先生のブログに詳しく述べられている。


私はときどき「大野病院の件があるので,周産期医療には一切かかわらない」と書いたりしているが,ちょっと後ろめたいものを感じている。「帝王切開の麻酔を麻酔科医が担当してくれるなら,産科医は安心してお産に取り組める。お前みたいなヘタレの麻酔科医が増えると産科医療の崩壊が加速する」と主張する人もきっといるだろう。

沼津市立病院での緊急手術はおそらく帝王切開だったはず。上の記事では詳しいことは分からないが,仮に麻酔科医が麻酔を担当したとして,手術中や術後早期に女性が肝不全で亡くなったなら,麻酔科医が訴えられていたかもしれない。それどころか,福島県なら民事だけでは済まなかったろう。

それにしても胎盤癒着も含め,産科って地雷が多い。いや,他の診療科でも地雷は多いが産科だから目立つのか。妊娠とは慶事で,不幸とは対極に位置する。しかも,命を落とすのは若い女性と赤ちゃん。おめでたのはずが二人の死。その落差を遺族は受け入れられず,怒りの矛先を病院や医師に向けてしまう。

麻酔に関しても,「危険なことは何も起こらない。手術・麻酔は無事に終わるのが当たり前」の意識が一般市民に浸透すると産科のような目に遭うかもしれない。明日は我が身。

まだ訴えを起こしただけなので,病院や医院の落ち度が認められたわけではない。毎日新聞は判決の際にも忘れず報道してもらいたい。

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