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February 24, 2008

妄想未来新聞23

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一人暮らしの男性が死亡 病院と電話中に死亡か

V県L市で,無職堂島下紀伊太郎さん(65)が自宅居間でうつぶせに倒れ死亡しているのを,訪ねてきた堂島下さんの長男が発見した。

堂島下さんは電話の近くで倒れており,遺体のそばには受話器が転がっていたが,外傷や争ったような形跡はなかった。玄関や窓には鍵が掛かっており,室内に物色の跡などもなかった。

堂島下さんは昨年妻と離婚し,現在は独り暮らし。堂島下さん宅の電話がN日ごろから常に話し中だったことから,市外に住む長男が不審に思って訪問。合鍵を使って室内に入り堂島下さんの遺体を発見した。

県警が電話の通話記録を調べたところ,堂島下さんが最後に電話をしたのはN日午後5時45分で,相手はL市民病院だった。同病院では平日の午後5時30分から翌朝午前9時までは自動音声応答になっており,病院職員と直接話をすることができない。ただ,同病院にかかりつけの患者の場合は,診察券のID番号と暗証番号を入力すればサポートセンターにつながり,「診療科」「担当医」「用件」などの選択肢をガイダンスにしたがって数字ボタンで選び,最後には職員につなげてもらえる。堂島下さんは狭心症で同病院の循環器科に通院しており,県警は電話操作の最中に心臓の発作を起こしたと見て,解剖して死因を詳しく調べる予定。

近年は一般企業のように夜間や休日の電話は自動音声応答にする病院が増えているが,ガイダンスにしたがってボタンを押す作業を滞りなく進めても医師につながるまで10分以上かかることが多く,今回のような緊急の場合には役に立たないことが明らかとなった。

堂島下さんの長男の話
父は駅の券売機で切符も買えないような機械オンチだったので,音声応答のガイダンスの指示にしたがって入力するのは無理だ。ただちに医師と電話で話せたなら死ななかったはずだ。

L市民病院矢目樽和院長の話
最近の入院患者は全員が携帯電話を持っており,家族からの電話を病院が取り次ぐことはない。また,当院は救急輪番からも外れており,救急隊からの電話を受ける必要はないので自動音声応答で問題はない。自動音声応答では5分間入力がなければ回線が切れるようになっている。途中で入力が途絶えるのはイタズラ電話の可能性もあるし,お年寄りでは電話の操作ミスも多いのでいちいち対応していられない。一刻を争う急病ならまず119番に電話するべきだ。

医療ジャーナリスト◎藤×也氏
救急車があてにならないから,病院に直接電話したのだろう。真夜中ならともかく,午後5時45分ではまだ大勢の医師が病院にいたはずだ。自動音声応答はモンスター・ペイシェントなどの厄介者を排除するためのシステムだろうが,本当に困っている患者も門前払いしてしまう。IDと暗証番号まで押したらイタズラのはずがない。その時点でただちに医師が電話に出れば,問診で重症度もある程度判断できる。病院は夜間休日の自動音声応答をただちにやめるべきだ。

医療崩壊問題に詳しい,◆◇大学の☆★教授
夜間に個人医院に電話すると,診療時間が終了したことを告げるアナウンスが流れるだけだ。無床診療所ではずっと前から常識だったことを病院が真似しても何ら問題ない。そもそも,つまらない理由で病院に電話してくる患者が多かったのが原因だ。
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February 18, 2008

2月18日

我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医の無罪を信じ支援します。

「医師がミスをしなければ患者は死なない」のなら,病気で夭折した人々は全員が医師のミスで亡くなったことになる。

夏目雅子,松田優作,本田美奈子,アンディ・フグ,堀江しのぶ・・・(敬称略)数え上げればきりがない。

固形がんや白血病でなら医師が最善を尽くしても死亡することは理解できるが,手術室に入るまで元気だった若い女性がその日のうちに亡くなるというのはご家族にとって受け入れがたいものであろう。

しかし,胎盤癒着も白血病などと同じく“病気”に他ならない。

「残念ながら薬石効なく・・」という事態を許容できないなら,医療自体が成り立たなくなる。

2年前の2月18日以降,私の医療に対する考え方は大きく変化した。中心静脈カテーテルなど侵襲のある手技はなるべく避け,(私ひとりで麻酔しているためだが)大出血する可能性のある手術の麻酔は断るようにしている。飛行機や新幹線でドクターコールに遭遇しても無視するつもりだ。

これは私だけではないはず。救急搬送受け入れ不可能が各地で多発している重要な理由のひとつに“リスク回避”が挙げられるだろう。

医療崩壊ドミノ倒しの,最初のコマを倒したのが大野病院産婦人科医師“不当逮捕”事件だったと言っても過言ではないと思う。

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February 17, 2008

妄想未来新聞22

性同一性障害はもとより,男性同性愛者を愚弄・蔑視するつもりはありません。また,人工肛門を造設しなければならないような病魔に冒されたばかりか,その後も人工肛門で不便な生活を強いられている方々を揶揄・侮辱するつもりも毛頭ありません。
ただ,どのような集団にも少数ながらトンデモない人間が必ず存在し,「彼らは何をしでかすか分からず,まさに想像を絶する愚行に走る」という社会通念(?)に基づいた妄想です。

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パートナー死亡は医師の説明義務違反

5年前に直腸癌の手術を受けた男性(53)が,同性愛のパートナー(当時49)が死亡したのは医師の説明義務違反が原因だとして,人工肛門を造る手術などを施行したL市民病院を相手取り,約9,000万円の慰謝料を請求する訴訟をL地裁に起こした。

訴状によると,男性はX年に直腸がんと診断されL市民病院でがんを摘出する手術を受け,下腹部に人工肛門が造られた。男性は同性愛者であり,手術後も男性パートナーと同居していたが,パートナーはたびたび膀胱炎を発症し,Y年には腎盂腎炎から敗血症を起こして死亡した。

男性の話
人工肛門になる前はプレイの前に浣腸などの下準備をしていたので,パートナーが膀胱炎になることもなかった。人工肛門の中をきれいにする方法は教えてもらっておらず,人工肛門をアレに使ってはいけないと説明された覚えもない。ちゃんと説明してくれたなら,愛を確かめる別の方法を考えた。彼は私にとってかけがえのない人だったので喪失感は大きく,9,000万円では少ないくらいだ。

担当医の話
入院中のベッドサイドには必ず男性が寄り添っていたので,仲のいい兄弟だと思っていた。同性愛のパートナーだったとは寝耳に水だ。普段の問診で「あなたホモですか?」などと聞けないし,聞く必要もない。それに,普通の肛門性交でも尿路感染は起こる。人工肛門だから腎盂腎炎になったとは言えないはずだ。そもそも,人工肛門を性交に使うことなどまったく想定していない。ただ,3年前に人工肛門近くの腸管が穿孔して腹膜炎となったことがあったが,その時におかしいと気づくべきだったかも知れない。

医療ジャーナリスト◎藤×也氏の話
人工肛門である以上,アレに関する肛門の機能も果たせるように造るべきだ。何より,患者の性癖ぐらい知っておくことは医師として当然の義務である。

医療崩壊問題に詳しい,◆◇大学の☆★教授の話
ふたりとも気持ちよかったんだろうか・・・。あ,いや,これは医療崩壊とは関係がなく,コメントの付けようがない。ただ,法廷でどんな会話が飛び交うのか興味があるので,傍聴には行きたい。
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February 15, 2008

妄想未来新聞21

相変わらず単なる妄想です。他意はありません。

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検査中に吐物で窒息・死亡,医師を書類送検 

V大学病院でN年,CT検査中の男児(当時6歳)が嘔吐し吐物をのどに詰めて窒息死した医療事故で,P署は業務上過失致死の疑いで,CTを指示した男性医師=当時(36)=を書類送検した。

調べによると,X月Y日午後11時頃,男児は母親の運転する乗用車の助手席に乗っていたところ,母親が急ブレーキを踏んだため,ダッシュボードに顔を打ち付けた。男児はシートベルトを装着していなかった。男児は約2時間後に救急車でV大学病院に運ばれ,耳鼻科の当直であった男性医師の診察を受けた。男児は鼻出血と歯茎からの出血の痕跡があった以外に外傷は見られず元気も良かったが,男児は事故の直前まで携帯ゲーム機で遊んでおり,母親が「ゲーム機のスタイラスペンが事故後見あたらない」と訴えたため,医師はCT検査を行うことにした。男児は検査をいやがって暴れたため医師は鎮静剤を投与した。男児はおとなしくなったが,CT検査中に嘔吐し吐物で窒息した。検査は中止され,ただちに救命措置がとられたが男児は心肺停止となり,2日後に死亡した。スタイラスペンはその後,乗用車のフロアマットの下から発見された。

男性医師は警察の調べに対し「数年前の割り箸事件のことが頭をよぎり,CTを撮ろうとした。CTの筒の中に入った状態だったので吐いたことに気づくのが遅れた。CT室では心電図もモニターしていたし,酸素の取り込み状態を測る装置も指に付けていた。酸素の取り込みを示す数値が悪くなったのでただちに検査を中止し,対処した。鎮静剤のリスクも母親に説明したし,できる限りの治療をした。残念な結果になったが,私に落ち度はないと思う」と,容疑を否認している。

男児の母親は「息子は必要のない検査を受けたために死んでしまった。過剰な検査で儲けようとする悪徳医師は絶対許せない」と怒りに唇を振るわせた。


医療ジャーナリスト◎藤×也氏の話
CTは死のトンネルと呼ばれている。むやみにCTなど撮るからこんな悲劇が起こる。検査のリスクも考慮できないようでは医師失格だ。

医療崩壊問題に詳しい,◆◇大学の☆★教授の話
「CTを撮れば助かったはず」などと声高に叫ぶ連中がいるため,医師は防衛医療の一環として過剰に検査することになる。CTを撮っても撮らなくても,結果が悪ければ医師が断罪されるのであれば,医師の最善策は「日本で患者を診ないこと」になる。
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February 12, 2008

救急隊とドクターヘリと

魚拓


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心肺停止の56歳男性、11病院受け入れ拒否…死亡確認

2月9日19時41分配信 読売新聞

 千葉県東金市で昨年8月、心肺停止状態となって自宅から救急搬送された男性(当時56歳)が、11病院に延べ15回受け入れを断られ、119番通報から約1時間後、16回目の交渉で別の病院に運び込まれたが、死亡が確認されたことが9日、わかった。

 山武郡市広域行政組合消防本部によると、昨年8月23日午後5時ごろ、男性が自宅で倒れているのを家族が見つけ、「意識と呼吸がない」と119番通報した。

 救急隊は、男性宅に到着する前から周辺の病院と受け入れ交渉を始めたが、「心肺停止状態の患者には対応できない」「医師が不在」「診察中」などの理由で断られ続けた。

 一つの病院には、ドクターヘリの出動も要請したが、「(心肺停止状態は)出動の対象外」とされたという。

 約40分後、16回目の交渉で受け入れ先が同県茂原市内の病院に決まり、さらに約20分後に到着したが、死亡が確認された。

 同消防本部は、搬送時間と死亡の因果関係については、「わからない」としている。

最終更新:2月9日19時58分
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56歳の若さで亡くなられるとは,誠に気の毒である。心よりお悔やみ申し上げる。

さて,私はドクターヘリがどのようなものかよく知らない。

患者用のベッドだけでなく,医療を行うスペースも必要なのだから結構大きいのだろうと思っていたが,イメージ検索するとそれほどでもなさそうだ。

最近のハリウッド映画でもヘリコプターはクルマ並によく登場する。しかし私のヘリコプターのイメージは最新のスマートなヘリではなく,『地獄の黙示録』などベトナム戦争映画でのイロコイスの印象が強い。

そう言えばスタローンの『ランボー』シリーズでもヘリコプターが登場していた。

『ランボー』で思い出したが,その昔レンタルビデオ店で『ランボー者』というタイトルのビデオを見つけて驚いたことがある。借りることはなかったが,そのタイトルは私の脳裏に焼き付いてしまった。同じく,レンタル屋で見つけてそのタイトルが印象に残っている映画がある。それは『危険な事情』(注:“危険な情事”のタイプミスではない)と『死体と遊ぶな子どもたち』。もちろん,私はこれらも観ていない。

『コナン・ザ・グレート』をもじった『コ?ン・ザ・グレート』など,心房心室(もしくは動静脈)ネタはここでは不謹慎ですので,そのようなコメントはお慎み下さい。

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February 07, 2008

救急医療崩壊Q&A

Q1:医者が「たらい回し」という言葉に敏感になっているのはどうしてですか?

A1:「たらい回し」というと,救急車が患者の受け入れ先を求めてA病院→B病院→C病院→・・・と,無駄にあちこち走り回っているような印象を受けますが,無線も携帯電話もありますのでそんな馬鹿なことはしません。救急車は患者発生の現場に留まり,あちこちの病院に電話をしています。「このような患者がいるらしい」という情報が伝言ゲームのように回されるわけでもありません。一カ所から各病院に電話をして立て続けに断られることを「たらい回し」と呼ぶなら,ゴールデンウィークの部屋をとろうと浦安のホテルにつぎつぎ電話して予約がとれないことも「たらい回し」になります。「たらい回し」は,マスコミが医師を貶めようとして用いる枕詞です。なぜかマスコミは親の仇かのように医師を敵視しています。コンプレックスでもあるのかと疑いたくなるほどです。高校時代に数学や理科で医学部志望者に及ばなかったことによるルサンチマンだとしたら滑稽です。間違った日本語を使って,自らの国語力の低さも世間に晒しているのですから。しかし,マスコミの影響はすさまじく,国民の多くが実際に救急患者の「たらい回し」が起こっていると思いこんでいるようです。新聞とテレビしか情報源がない高齢者だけでなく,ネットで情報収集ができる人でも自分のブログに「たらい回しをする医者は許せない」などと書き込んでいるのがよく見られます。

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Q2:「たらい回し」が誤用なのはわかりました。では,なぜ救急患者の「受け入れ拒否」が起こっているのですか?

A2:またしてもホテルを例にしますが,宿泊予約を取ろうとしても「あいにくその日は満室です」と断られた場合,「ホテルに宿泊拒否された」とは言わないはずです。正確には救急患者の「受け入れ不可能」と呼ぶべきです。

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Q3:では,なぜ救急患者の「受け入れ不可能」が起こっているのですか?

A3:先に来た救急患者の治療に追われている,満床でベッドがない,専門外,などの理由です。

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Q4:ベッドがなければ,そこらへんのソファに寝かせればいいじゃないですか?

A4:ベッドというのは単なるスペースのことを言っているのではありません。緊急入院しなければならないほどの重症患者では生体情報モニター(心電図や血圧を測定・表示する機械)や酸素なども必要ですし,手厚くケアしてくれる看護師も必要です。ベッドがないということは,患者さんのケアを充分出来ない状態のことです。逆に言うと,6人部屋のベッドのひとつが空いていたとしても,重症患者を受け入れられない場合があります。当直医は通常一人です。先に来た患者さんが重体の場合はその処置・治療にかかりきりになります。その場合,空きベッドがいくらあったとしても,次の救急患者は受け入れられません。

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Q5:例え自分の専門外でも,いったん受け入れて応急処置し,その後別の病院に搬送してはどうですか?

A5:それをして,結果が悪いと訴訟で負けるのです。以下のサイトにわかりやすくまとまっています。
http://www.snow-flake.jp/archives/1296/
http://blog.m3.com/yabuishitubuyaki/20070423/1
http://kenkoubyoukinashi.blog36.fc2.com/blog-entry-220.html
“加古川”“心筋梗塞”で検索すれば,もっと情報が得られるでしょう。

追記(2009年2月)
専門外の患者を引き受けたばっかりに書類送検された眼科医もいます。
http://s03.megalodon.jp/2009-0123-1422-16/www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20090123-453023.html

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Q6:結果が悪くて民事で訴えられる可能性は,他の職業でもあるのではないですか?

A6:医療では,懸命に努力したにもかかわらず,患者さんが死亡すると逮捕されることがあります。福島県立大野病院の件がその例です。

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Q7:大野病院の件は救急患者ではなく,入院患者だったのではないですか?

A7:近年,インフォームドコンセント(IC)という言葉は誰でも知っているくらい普及してきました。今時,充分なICをせずに危険な治療や手術を行う医師はいないでしょう。しかし,救急患者は一刻を争う状態ですので,家族に充分な説明をする時間がありません。夜間休日の救急現場では医師は通常一人です。一人で治療しつつ,家族に充分な説明をするのはきわめて困難です。つまり,救急の現場では患者家族と信頼関係を構築する時間がほとんどありません。刑事事件は遺族の感情とは関係なく立件されるはずですが,遺族の感情が警察を動かすことも多々あります。ICの時間はあったであろう予定手術でも逮捕されるなら,患者側とトラブルになりやすい救急では逮捕の危険性はもっと高くなります。

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Q8:いいわけは聞き飽きました。当直医は救急患者を受け入れる義務を果たさなくていいのですか?

A8:病院の当直は入院患者の急変に備えて泊まるもので,院外からやってくる救急患者を診察・治療する義務はありません。当直料という手当はもらえますが,それは「自宅ではなく,病院で寝る」ことに対する手当です。寝ることが前提だからこそ,翌日は朝から通常勤務となっています。つまり,当直医が院外救急患者を診るのはボランティアであり,慈悲の心,皆さんが大好きな「仁術」によるものです。
詳しくは,
http://anesthesia.cocolog-nifty.com/freeanesthe/2007/09/qa_e211.html
http://anesthesia.cocolog-nifty.com/freeanesthe/2007/09/post_c607.html
http://ameblo.jp/med/entry-10065702840.html
http://goose.jugem.jp/?eid=72
http://archive.mag2.com/0000145665/20050423080000000.html?start=40
をどうぞ。
震災の被災地に全国からボランティアがやってきて,被災者のために奉仕活動をしていたとします。長期間のボランティア活動を終えて故郷に帰ろうとする人に向かって「勝手に辞めるな。俺たちの生活はどうなる。義務を忘れたか。もっと働け」と罵声を浴びせる。今の日本のマスコミとそれに踊らされた無知な国民がしているのは,まさにこれです。

追記(2009年4月)
http://pari.u-tokyo.ac.jp/column/column02.html

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Q9:いつから当直がボランティアになったのですか?

A9:院長が勝手に「救急患者を断るな」と勤務医に言うことはありますが,日本は表向きは一応民主国家ですので,院外救急患者を受け入れることを当直医に義務づける,つまり連続36時間勤務を強制するような制度は存在しません。ずっと昔からボランティアでした。交代制の夜勤の場合は話が別です。

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Q10:最近の医者はなぜボランティアをしたがらないのですか?

A10:語弊があるかもしれませんが,救命救急はドラマチックで,医師にとって本来はおもしろい仕事のひとつです。自分の力で患者の命を間一髪救えた瞬間は医師冥利につきると言えます。やりがいのあるボランティアだったので,当直を好む医師も少なくありませんでした(いやがる医師も当然いました)。つい数年前まで,「今日はどんな救急患者が来るだろうか」とワクワクしながら当直していた猛者さえいましたが,今ならそんな医師を猛者とは呼ばないでしょう。昔は,重症患者を救えなかった場合でも患者さんの家族から「夜中に精一杯のことをしていただき,ありがとうございました」と御礼を言われたものですが,現在の患者は医師の努力に対して訴訟という形で答えてくれます。ひどい場合は刑事訴追です。さらに医療知識皆無のマスコミが一方的に誹謗中傷してくれます。これらのリスクを冒してまでボランティアをしたがる者はいないでしょう。また,昔は本当の救急患者しか搬送されてこなかったので医師にとって密度の濃い勉強になりましたが,今はご存知のように軽症患者のコンビニ受診ばかりです。しかもこいつらは権利意識が強く,夜中でも最高の専門治療を要求してきます。逮捕の危険を顧みず,さらにこんなモンスター・ペイシェントを相手にしなくてはならないボランティアなど,誰がやりたがるでしょう。

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Q11:医者には応招義務があるのではないですか?

A11:ほとけ心から救急患者を受けると,医師生命どころか人生そのものを棒に振るかも知れません。応招義務など気にしている場合ではありません。司法も,「腕に自信がないなら救急などするな」というニュアンスの判決を下しています。
詳しくは
http://obgy.typepad.jp/blog/2007/09/post_de0c.html
をどうぞ。

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Q12:「ボランティアをしない」という強い意志を持って受け入れを断るのであれば,やはりそれは「受け入れ不可能」ではなくて,「受け入れ拒否」ではないですか?

A12:「当直医が救急患者を診るのは当たり前」という洗脳がまだ解けていない医師,あるいは皆さんが好む「仁術」「慈悲の心」により,できるだけ救急患者を診ようとする医師もまだ多くいます。空床があり,なおかつ自分が専門とする疾患・外傷でも受け入れを拒否するような豪傑はまだ現れないでしょう。割り切って「当直は寝るのが普通なので,救急は一切お断りします」と言える医師が多いなら,医師の過労は問題にならないはずです。
架空の話ですが
http://anesthesia.cocolog-nifty.com/freeanesthe/2008/01/17_5b7f.html
を参照してください。

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Q13:救急患者が受け入れを断られる事件はこれからも続くのですか?

A13:はい。もっとひどくなるはずです。

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Q14:こんなことになる前に,医者たちは救急医療崩壊の阻止に向けて何か行動を起こすべきだったのではないですか?

A14:救急に限らず,心ある医師たちは「このままでは医療は崩壊する」と警告し続けてきました。このような本を上梓した先生もいます。しかし,政府もマスコミもあまり取り上げませんでした。最近になってようやく少しわかってきたような素振りも見せますが,それでもまだ諸悪の根源を医師のモラル低下にしようとしています。医師は医療が崩壊してもそれほど困らないどころか,「かえってビジネスチャンスになる」と期待している(焼け野原後の復興を考えている?)者もいるようです。医療が崩壊して一番困るのは一般国民でしょう。一番困る人が行動を起こすべきではないでしょうか。

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Q15:医者の家族が急病になることもあります。それでも困りませんか?

A15:多くの医師は今までボランティアも含め,医療に充分貢献してきました。10年に一度あるかないかの家族の一大事に際し,適切な医療を受けさせるべく,自分が持てる人脈をすべて駆使してもバチはあたらないでしょう。医師には医師の友人・知人が数多くいます。医師同士で細々と助け合ってなんとかします。どうしても専門病院への入院が必要で,そこが満床の場合,皆さんが大好きな「ソファに寝かせる」方法も我々ならできます。「ベッドが空くまではこのソファでいい。点滴や投薬,監視は俺がする。脈はずっと触れておくし,血圧は時々手動で自分で測る。何かあっても責任は自分が取る」と言えるからです。重症が集まる救急病院はベッドの回転が速い(亡くなる患者さんが多い)ので,1時間ほど耐えればベッドが空くことが珍しくありません。とにかく,なりふり構わず八方手を尽くすことでしょう。残念ながら,この方法は患者が医師の家族の場合しか使えません。

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Q16:日本医師会は救急医療崩壊阻止に向けて何かしてこなかったのですか?

A16:日本医師会は医師全体の代表ではなく,開業医が主体となっている団体です。夜間や休日の救急医療,特に二次・三次救急を担っているのは主に勤務医です。医師会は勤務医の労働環境など興味はないでしょう。高齢の開業医などは救急搬送受け入れ不可能の報道を見聞きして,あなた方と同様「最近の医師はたるんでいる」と思っているかもしれません。

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Q17:ノブレス・オブリージュというものがあります。医師は特権階級なのだから,国民に奉仕する義務があるのではないですか?

A17:医師に特権などありません。医師は税金を払わなくていいと思っている人がいるようですが,それはありません。医師優遇税制も田舎の小さな個人医院程度でしか適用できず,一般的な開業医や病院には関係ありません。医師の窮状を理解してくれる人は少なく,警察・司法・行政・マスコミ・モンスターペイシェントのいずれにも迫害されており,四面楚歌です。すぐに「赤ひげ」という架空の人物を例に持ち出す人がいますが,自分に余裕がない状態でノブレス・オブリージュなどできません。それに,ノブレス・オブリージュや仁術は強制されて行うものではないはずです。

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Q18:それでも,急病や大けがでは医者が頼りです。国民はどうすればいいのですか?

A18:この国の政治家は,国民の健康や福祉よりも道路建設のほうが大事だと思っています。こんな国に生まれた身の不幸を呪うか,そんな政治家しか選ばなかったことを後悔するしかありません。一方,「今までの日本の医療がすばらし過ぎた。今後は普通の先進国並みになるだけ」という考え方もあります。WHOは日本の医療を総合一位と評価しましたが,それも過去のものとなるでしょう。イギリスやアメリカの悲惨な医療事情は有名ですが,カナダもひどいようです。http://obgy.typepad.jp/blog/2008/02/post-1341-3.html
いや,カナダが普通なのかも知れません。

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February 05, 2008

妄想未来新聞20

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病院併設の幼稚園で入園テスト 10人に1人の狭き門

医療法人得財会が経営する取過利幼稚園の入園テストがN日に行われた。少子化の影響で経営に苦しむ幼稚園が増えているなか,同園は年々競争倍率があがり,今年の入園倍率は10倍を突破した。同園はもともと医師の子供を預かる幼稚園だったが,他の保護者からも入園させたいという要望が強く,5年前より医師以外の子弟も入園できるようになった。ただし,両親のどちらかが医師の場合に比べ入園料も保育料も約4倍となるため,ここをお受験するのは裕福な家庭に限られるようだ。入園テストでは絵を見て質問に答えたり,数人で童謡を歌ったりする他,両親の面接も重要視されるという。また,他の幼稚園で見られるような抽選は行われない。
入園希望者が増加した理由は,園児が体調を崩した場合のバックアップ体制にある。同園では毎朝医師が園児全員の健康状態をチェックするだけでなく,園にいる間に発熱した場合などはただちに併設の我利病院で治療を受けられる。園児用のベッドも常時確保されており,必要があれば入院も可能となる。

入園テストを受けた園児の保護者は「家の近所には小児科のクリニックはあるが,入院できる病院がない。もしもの場合にすぐ入院させてくれるなら,毎月20万の保育料など惜しくない。それになりより,ここに入園できれば我々親も保護者会を通じて医師の友人ができる。医療が完全崩壊した今,こんなに有り難いことはない。面接では寄付可能な金額を質問されると聞いていたので小切手を持ってきていたが,出す機会はなかった」と顔を曇らせた。

面接会場から出てきたばかりの別の保護者は「抽選がないということは実力があれば受かるはずで,公平と言える。ウチは夫婦揃って教師なので,子供にはみっちり英才教育してきた。ウチの子にとってはテストは拍子抜けするほど簡単だったし,保護者面接でも『子供が割り箸をくわえたまま走り回っていたらどうするか』など常識的なものばかりだったので,落とされることはないと思う。ただ,教師の子供はいままで一人も受かったことがないと聞いているので,少し心配だ」と答えた。

医療ジャーナリスト◎藤×也氏
医療を後ろ盾というより,医療を人質にとったあくどい商法のひとつだ。毎朝の健康診断も当直明けの医師,しかも小児科医とは限らないと聞いている。過度に期待しないほうがいい。

医療崩壊問題に詳しい,◆◇大学の☆★教授
医療はまだ完全な市場原理主義にはなっておらず,過渡期にあると言える。病院としては医療本体だけでは先行きが不安で,付加価値として医療を利用している。“何かあったらすぐ入院できる”というキャッチフレーズは,従来のホテルや幼稚園には真似できない。
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February 01, 2008

妄想未来新聞19

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乳がんを見逃した医師を書類送検

P県警捜査1課とQ署はN日,担当患者の乳がんを見逃したことにより女性(64)を死亡させたとして,P県立病院(P県Q市)の男性医師(45)を業務上過失致死容疑でQ地検に書類送検した。

調べによると,女性は200X年より膝の痛みを訴え同病院整形外科を受診し,男性医師に変形性膝関節症と診断された。女性は200X+1年に右膝の手術を受け,その後も同じ医師の診察を受けていた。しかし,200X+5年に温泉旅行した際に友人から乳房の異常を指摘され,同病院乳腺外科を受診したところ末期の乳がんと診断,女性は約半年後に死亡した。整形外科の担当医は200X年からの5年間に女性に風邪薬を計10回処方していたが,胸の聴診は行わないか,あるいはシャツの上からの聴診だけで,乳房の異常にまったく気がつかなかった。同病院は200Y年に内科医が総辞職したため内科は閉鎖中で,整形外科医は膝の診察の際に女性が風邪症状を訴えると,他院の内科を紹介することもなく風邪薬を処方していたらしい。

女性の遺族の話
母はあの医者を信頼していたので,風邪でも内科のある病院を受診しなかった。なのに,あの医者は素人が見てもがんとわかるものを見逃した。もっと早くがんが診断されていれば,死なずにすんだはずだ。潔く罪を認めて謝ってもらいたい。

医療ジャーナリスト◎藤×也氏の話
典型的な,「病気を診て病人を診ない」ケースと言える。胸も見ずに風邪薬を処方するなど,言い逃れできない怠慢だ。

医療崩壊問題に詳しい,◆◇大学の☆★教授の話
風邪は冬にかかるものだ。数年来の原油高騰で,どこの病院の診察室も暖房を抑え気味にしている。何枚も重ね着している患者に全部脱いでもらうのは忍びない。何より患者は風邪を引いているので,さらに寒い思いをさせたくないと考えるのが普通だ。聴診といっても,かすかな心雑音を聞き分けるためのものではなく,下着の上から聴診器をあてても呼吸音の大きな異常は聞こえる。整形外科医は乳房の触診をするわけではなく,普段乳がんを見ることもない。専門でない乳がんを視診だけで見つけたとしても,それは相当目立った外観のはずで,その時点で既に手遅れだった可能性もある。
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