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September 28, 2007

金脈がまたひとつ

魚拓

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総合水沢病院:胃がんで死亡、遺族に賠償金支払い決める--奥州 /岩手

9月26日12時2分配信 毎日新聞

 奥州市立総合水沢病院は、胃がんで昨年8月に死亡した女性(当時74歳)の遺族に損害賠償金300万円を支払うことを決めた。「早く胃の検査をしていればいくらかでも延命が可能であり病院の不手際で死期が早まった」と遺族から損害賠償を求められていた。
 女性は91年11月に胃潰瘍(かいよう)で入院して以来、ほぼ定期的に病院を利用し主に糖尿病の治療を受けていた。01年5月の内視鏡検査で胃潰瘍が治っていることが確認されていた。その後腹痛や体重の減少を訴えたため昨年5月に内視鏡検査を再度行ったところ胃がんが分かった。
 病院の梅田邦光管理者は「治療ミスや不手際はないが、(昨年5月の)内視鏡検査を早くしていればがんが見つかった可能性はあった。円満な解決を目指し双方の弁護士が重ねた協議結果を受け入れることにした」と話した。【石川宏】

9月26日朝刊

最終更新:9月26日12時2分
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この記事では詳しいことはわからない。医師が潰瘍の再発と思いこみ,精査が遅れた可能性もある。しかし,潰瘍が治ったとされてから5年後に癌が発生してその責任を取らされるなら,今後も同様の訴訟は頻発するだろう。

肺炎で呼吸器内科にかかっていて,肺炎治癒の5年後に肺癌になり,その発見が遅れても同じく病院の落ち度とされることになる。

痔で外科にかかっていて,痔の治癒の5年後に直腸癌になり,(以下略)

頭痛で神経内科にかかっていて,治癒の5年後に脳腫瘍となり,(以下略)

腰痛で整形外科にかかっていて,治癒の5年後に脊椎腫瘍となり,(以下略)

膀胱炎で泌尿器科にかかっていて,治癒の5年後に膀胱癌となり,(以下略)

水虫で皮膚科にかかっていて,治癒の5年後に皮膚癌となり,(もういいか)

要するに悪性腫瘍好発部位の良性疾患を治療した場合は,その後その部位に発生する悪性腫瘍は早期のうちに発見しないと医師の落ち度にされるそうだ。


どうやら一般人は「医者にかかってさえいれば,どんな癌も医者が見つけてくれる。見つけなければならない」と本気で思っているようだ。


そのうち,まったく異なる領域の癌でも責任をとらされるだろう。

例えば「高血圧でずーっと医者にかかっていたのに,胃癌を見逃した」とか。

DQNは新たな金脈を掘り当てた。

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September 25, 2007

夜間ボランティア救急Q&A

夜間・休日の救急医療のほとんどがボランティアであることを広く周知されることを願い,Q&A形式にした。

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Q:夜間救急はボランティアと言っていますが,当直料をもらっているのだから無償奉仕とは言えないのでは?

A:当直料(宿直料)は「自宅の布団ではなく,病院のベッドで眠ること」に対して支払われるものであり,徹夜で働くことに対する報酬ではありません。コンビニ店員は夜間の時給のほうが昼間より高いでしょうが,医師の給料を時給換算とした場合,宿直料は昼間より高いことはありません。宿直は眠れることを前提としているからです。

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Q:医者だけではなく,コンビニの店員もガードマンも夜に働いています。医者が「夜の勤務がつらい」というのは甘えているだけではないですか?

A:コンビニ店員やガードマンは朝から働いてそのままその日の夜勤に入るのではなく,夜から働き始め,朝になったら帰宅するのが普通のはずです。
日本の医師は朝から普通に働いて,夜はそのまま宿直となります。そして夜間一睡もできなくても翌日も通常勤務をします。連続36時間が週に複数回も珍しくありません。代休もありません。

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Q:ボランティアだろうと通常勤務であろうと,人の命がかかっているのだから,寝ないで働くのは当然ではないですか?

A:人間の注意力・集中力には限界があります。電車の運転士やパイロットが徹夜明けで勤務についても良いのでしょうか? 人の命を扱う職業だからこそ,注意力・集中力を充分発揮できるよう万全の体調で勤務すべきではないでしょうか。

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Q:クレーマーの客なんか,どこの業界でもいっぱいいる。「クレーマー患者のせいで気持ちが折れた」などと言うのはやはり甘えではないか。

A:昼間の日勤帯はある程度我慢するとしましょう。しかし夜間のボランティア中はどうでしょうか? 地震などの被災地で懸命に働くボランティアが被災者から心ない言葉を浴びせかけられ,モチベーションを維持できるでしょうか?

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Q:ボランティアだから,救急患者を断ってもいいということですか?

A:「宿直医が院外救急を診るのはボランティア活動である」ことを自覚している医師は多くありません。断るのは別の理由(空床がない,重症過ぎて対応できない,別の患者の処置中)があるからです。

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Q:ボランティアだから,感謝しろということですか?

A:救急外来での患者さんからの感謝など,ほとんどの医師はとっくにあきらめていると思います。まったく期待していないでしょう。ボランティアを辞めるときに「今までボランティアをありがとう。ご苦労様でした」と声をかけてもらうことも期待していません。ただ,医師がボランティアを止めて去るときに「無責任」などと罵るのは止めてください。

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Q:医師ひとりを養成するのに1億円もの税金が投入されている。ボランティアをするのは当然ではないか?

A:「医師ひとり養成に1億円かかる」というのは都市伝説です。医学教育にそれほどお金はかかりません。兵士の訓練では兵器の燃料や弾薬などの消耗品が必要ですが,医学教育に高価な消耗品はあまり必要ありません。メンテナンスに費用のかかる機器が学生の教育に使われることもありません。解剖のご遺体は献体です(ご遺体の運搬・安置・防腐処理などには費用がかかるとは思いますが,人体解剖は通常6年間で1回だけです)。小動物の解剖も6年間に1回か2回です。顕微鏡はひとりに一台あるでしょうが,壊れやすいものではなく10年以上使えます。授業を受け持つ教員の数は他学部よりは多いかもしれませんが,臨床系の教員は教授も含め,医師として診察や治療を行っています。他学部の教員と同じ給料でありながら,医師としても診療に従事しているため,人件費としてはおトクです(文科省がどう思っているのかは知りません)。4年制大学より2年長いことを差し引いても,医学教育のための人件費が高騰しているとは思えません。教科書も白衣も聴診器も自費です。白衣を着た学生が病院のなかをうろちょろするのは目障りかも知れませんが,お金はかかりません。大学病院の建設費や高額医療機器の購入費用まで「医師養成にかかる費用」として算定されては困ります。

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Q:それでも国公立大学の医学部を卒業するまでには税金が投入されている。国公立大学出身の医者はボランティアをするべきはないのか?

A:国公立大学では医学部だけでなく,他学部でも教育に税金が投入されます。小中学校は義務教育なので別としても,国公立の高校でも教育に公費が投じられています。また,私立の学校にも助成金という形で税金が使われます。結局,税金の補助で教育を受けた人間がボランティアをしなければならないなら,対象者は非常に多くなります。

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思いつくまま書いたが,救急医療体制や医師の労働基準に関してそれほど詳しいわけではない。
難しい質問はご勘弁願いたい。

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September 24, 2007

近いうちに起こる悲劇

魚拓

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麻酔医不在で女児60キロ搬送 能登の救命救急センター


 石川県の救命救急センターに指定されている公立能登総合病院(同県七尾市)で今年7月、麻酔医が不在のため、来院した女児(5)の緊急手術ができず約60キロ離れた金沢市内の病院へ搬送されていたことが分かった。

 能登総合病院などによると、女児は7月27日午後6時半ごろ、「おなかが痛い」と来院。虫垂炎が進行し、緊急手術が必要と診断された。しかし、麻酔医がいない時間帯だったため、金沢市の県立中央病院まで救急車で搬送。女児は約7時間後に手術を受けたが、その後、経過は良好ですでに退院したという。

 能登総合病院は平成12年、重症の急患を24時間体制で受け入れる救命救急センターの指定を受けたが、今年3月末に2人の常勤麻酔医が退職。現在は手術日程などに合わせて、非常勤の麻酔医6人でやりくりしている。

(2007/09/20 18:55)
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医療環境に恵まれない中,連係プレーGJ! という記事ではないらしい。

「今回はたまたまうまくいったけど,“重症の急患を24時間体制で受け入れる救命救急センターの指定を受けた”病院がこれではまずいだろう」ということか。


「医師を叩きたい」という臭いがプンプンするが,問題提起としては間違っていないかもしれない。


「おなかが痛い」のが5歳の女児ではなく壮年~高齢の男性で,仰向けになると腹部が拍動しているのが肉眼でもわかるような症例だとどうなっていたことか。

麻酔科だけでなく,外科医も過酷勤務とDQNPt(トンデモ訴訟)を嫌って減りつつある。予定手術さえままならないこのご時世,時間外緊急手術のできる病院など限られてくる。


近い将来,地方病院から他院への搬送中に患者が死亡する事件が発生しても不思議ではない。

搬送中の患者死亡は昔からよくある事象で,従来は「病気が重かった」「怪我がひどかった」とされ問題にならなかった。だが今は違う。マスコミが鵜の目鷹の目で医師バッシングの機会をうかがっている。搬送にかかる時間の多寡など主観混じりの相対評価。こちらが「まずまずスムーズに搬送できた」と思っていても,マスコミは「遅かった」「こうすればもっと早かったはず」「もっと早ければ助かったはず」という記事を書ける。


患者が助かった場合でも上のような記事にされる今日この頃,マスコミは,患者が倒れた現場から病院に着くまでの間に死亡した場合ですら,「搬送先が決まるまで○分もかかった」「*件の病院が拒否した」と責めるであろう。病院から他院への搬送中に患者が死亡しようものならどれだけの非難を浴びるか,想像に難くない。警察も便乗し,患者が救急車内で死亡したときに同乗していた医師,あるいは搬送依頼した医師(自院の当直業務のため同乗できない)は業務上過失致死の罪を問われるかも知れない。

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September 22, 2007

この手があったか

僻地の産科医様が入手された,日本麻酔科学会地方会の抄録

僻地の産科医様,いつもお世話になっております。
引用をお許し下さい。

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全前置胎盤、癒着胎盤で25,500mlの大出血をきたした帝王切開術の麻酔経験

              防衛医科大学校病院麻酔科
        荒木義之、辻本芳孝、神谷一郎、福田功、風間富栄
         防衛医科大学校病院手術部   菅原真哉

【背景】
前置胎盤に癒着胎盤が合併する症例では術前の診断が困難なため、時に大量出血を起こし麻酔管理を難渋させる。今回我々は、術前MRI検査にて癒着胎盤が否定されていたが、確定診断は癒着胎盤で25,500mlの大量出血をきたした帝王切開術の麻酔を経験したので報告する。

【症例】
症例:34歳、女性。全前置胎盤にて36週3日に予定帝王切開術となった。術前MRI検査では癒着胎盤は否定されていた。手術室入室後、左橈骨動脈に観血的動脈圧カテーテルを挿入し、L2/3より硬膜外カテーテルを留置、その後L3/4より脊椎麻酔を実施した。0.5%高比重ブピバカインを2.2ml投与し無痛域がTh4以下となり手術を開始した。胎児娩出後胎盤剥離時に突然出血量が増加、循環動態が不安定になり直ちに気管挿管を施行し全身麻酔に移行した。途中輸血用血液製剤が院内で賄えなくなり、緊急にセルセーバーを組み立て輸血用血液製剤が到着するまで使用した。手術は帝切後子宮全摘術を行い、出血量は25,500ml、麻酔時間は5時問13分で、挿管のままICUに入室、翌日抜管、翌々日に一般病棟に帰室した。

  
【考察】
前置胎盤に癒着胎盤が合併する頻度は約4%で、術前にMRI検査を施行しても診断は難しい。今回は術前MRIにてFlow Voidは陰性、癒着胎盤は否定されていたが胎盤剥離時に大量出血をきたし、子宮全摘に移行した。癒着胎盤であった可能性が高い症例であった。途中心拍出量測定のためFlo Tracモニターを使用したが、急激な循環動態の変動に有効であり、安全に麻酔管理ができた。Flo Tracは近年開発された観血的動脈圧ラインで連続的に心拍出量が測定できるモニターで、その信頼性も急激な血圧の変動に追従すると穀告されている。

 
【結語】
術前診断できなかった癒着胎盤の帝王切開術を経験した。経産婦における前置胎艦では、癒着胎盤の合併頻度が高くなるため不測の大量出血にいつでも対応できる体制が必要である。

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防衛医大の先生方,GJ!

25リットル以上もの大量出血したにもかかわらず女性を救ったこともさることながら,地方会といえどもこれを発表したことに意義がある。

普通に見れば単なる一例報告。研修医の学会練習台だったかもしれない。

しかし,この発表は福島のK先生にとって心強い援軍になるのではないか。 まさか,“癒着胎盤に関する過去の発表や論文は証拠にはなるが,事件より後に発表されたものはバイアスがかかっている可能性があるので証拠採用されない”などということはないだろう。

我々医師はマスコミや司法の横暴に対してほとんど無力であるが,K先生にとって有利に働く内容の学会発表や論文をどんどん世に出すという方法があった。いかにも医師らしい支援方法であるし,裁判を有利に進めるためには,世間やマスコミに対してブログや投書で訴えるよりも効果があるかも知れない。それに何より,この手の発表は医師が得意とするものだ。

今後も同じような発表が続くことを期待したい。残念ながら(幸運にも?)私には胎盤癒着の経験はないが,日本全国には肝を冷やしたことのある麻酔科・産科の先生が何人かいるだろう。古い症例でも構わない。10年前の症例の一例報告をしてはならないという決まりはないはずだ。RCTしか興味のない先生も,福島の不当逮捕・魔女狩り裁判に対してひと肌脱いでいただけないものか。

抄録を査読する学会の先生方も,胎盤癒着の投稿に関しては内容が「大出血しました。でも救えました」だけでも採用してもらいたい。

できれば,今後の同様な発表の【結語】には「当院では大量出血することの多い心臓血管外科手術が日常的に行われており,麻酔科も大量出血時の対応には慣れていた。それでも今回は他の手術室や病棟から手の空いている麻酔科医を総動員した。術野では執刀経験豊富な産科医が数名で懸命に止血操作を行った。さらに,熟練した臨床工学士が迅速にセルセーバーを組み立ててくれた。また,輸血部でもスタッフの総力を結集して輸血用製剤の手配に奔走してくれた。今回患者を救うことが出来たのは,スタッフと設備が整った都会の病院だったからであり,同じ症例がマンパワーの乏しい地方病院で発生した場合,救命は難しかったと考えられる」ぐらいのことを書いて欲しい。ちょっと長いし,それこそバイアスかかりすぎか。

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September 21, 2007

最大の売りは県の正職員


魚拓

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医師応募ゼロ 頭痛める県

2007年09月19日


県内の公立病院での医師不足深刻化を受けて、県が昨秋に始めた「医師確保緊急対策事業」が難航している。不足が特に目立つ小児科や産科、麻酔など五つの診療科の医師を、県の「正規職員」として採用する試みだが、今年度1回目の締め切りの8月末までに応募はゼロ。県の担当者は「どうすれば集まるのか……」と悩んでいる。
 医師不足の発端は、04年に、新人医師の臨床研修が必修になったことだ。新人医師が、大学の医局より実践的な技術を学ぶことができる病院での研修を希望するようになり、大学の医局が自治体などの派遣要請に応じ切れなくなった。
 こうした事態を乗り切ろうと、県は「医療確保対策推進本部」を設置。06年9月から、独自の医師採用に乗り出した。通常なら、臨時職員や嘱託医としての採用が多い中、正規職員として採用し、「安定した身分」を保障するのが売りだ。採用後3年間は県内での研修だが、4年目には海外の病院や高度医療に携わることが出来る「特典」も設けた。
 勤務地は九つの県立病院や災害医療センターなど。昨年度は4人を採用した。
 今年度も、医師の報酬など事業費約8400万円を予算計上し、担当者が大学や病院に足を運んだり、医療雑誌に募集を掲載したりして応募を呼びかけた。
 しかし、第1回締め切りの8月末までに、メールなどの問い合わせが計3件あっただけ。県医務課は「兵庫は面積も広い。都市部から離れることを避けられているのか……」と頭を抱える。
 県医師会ドクターバンクのコーディネーター役を務める伊藤芳久医師は「研修制度の変更でドクターの実力や意思で自由に病院を選択して働けるようになった。研修プログラムで比較したり、優れた医師のいる病院を選んだりするようになったためだろう」と分析する。
 県医務課の担当者は「高度医療機関での研修を確保している。県職員としての身分で地域医療、政策医療を担ってくれる人に来て欲しい」と呼びかけている。第2回の締め切りは11月30日。問い合わせは同課(078・362・3243)へ。
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県が作製した医師募集のチラシには大きく「兵庫県全体があなたの研修フィールドです」と書いてある。このキャッチフレーズに気持ちが動く若者がどれほどいるだろうか。医学生らはきっと九つの県立病院の地理的条件を確認することもせず,「僻地でも働いてもらうということだな」とダメ出しするだろう。このキャッチフレーズはむしろ医学生を遠ざけるのにきわめて有効だ。


医師(医学生)は世間知らずと揶揄されがちだが,医学部医学科を卒業する人間はもっとも若くても24歳。高校生とは違う。ネットでいろんな情報を得られるし,先輩や同級生からの口コミ情報もある。簡単にはだませない。


そもそも,「売り」が“正規職員として採用し、「安定した身分」を保障する”
医療確保対策推進本部の担当者の頭には,「正職員になれない派遣社員」「ロスト・ジェネレーション」,「ワーキングプア」といったキーワードがいっぱい詰まっているようだ。それとも兵庫県の医務課では,正職員に格上げされて大喜びする医師をたくさん見てきたのだろうか。同じように働くなら臨時雇いよりも正職員の身分がベターに決まっている。わずかでも相対的な待遇向上(?)には誰もが少しは喜ぶだろう。


さらに「特典」が“採用後3年間は県内での研修だが、4年目には海外の病院や高度医療に携わることが出来る”
裏を返せば,4年目までは高度医療に携わることができない。


>第1回締め切りの8月末までに、メールなどの問い合わせが計3件あっただけ


今後,問い合わせをする方は是非以下の質問をして欲しい。


4年目から海外の病院も可とありますが,海外での研修先は県が世話をしてくれるのですか?それとも自分で見つけるのですか?

海外研修中も県からの給料はもらえるのですか?

看護師や検査技師と同様,医師の異動も県が決めるのですか?

労働基準法は守ってもらえるのですか?

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September 20, 2007

恐れていたこと

魚拓

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新潟日報TOP>県内ニュース:社会・一般

医療ミス2件示談、県立病院

 県立吉田病院(燕市)で内科医がチューブを誤って差し患者が死亡した問題で、県は19日までに、遺族に示談金1654万円を支払うことを決めた。また、がんの疑いがあるとの検査結果の確認を怠った同新発田病院(新発田市)の医療ミスでも、示談金566万円を支払う。県はいずれも病院側のミスを認め、遺族と示談が成立した。県議会9月定例会に関連議案を提出する。

 県病院局などによると、吉田病院で5月14日、入院中の新潟市の80代女性に対し、胃に栄養を送るチューブ交換の際、内科医が誤って腹腔(ふくくう)内に挿入。女性は腹膜炎を発症して同31日に死亡した。

 新発田病院では、新発田市の70代男性が昨年2月に脳梗塞(こうそく)で入院。手術前に行った検査で肺がんが疑われる結果が出たが、担当の脳神経外科医は報告書の確認を怠った。男性は同9月に再入院したが、がんは全身に転移しており、10月下旬に死亡した。

新潟日報2007年9月19日
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PEGのことはスルーする。「人間,口から食えなくなったら終わり」などと言うつもりもない。


問題は肺癌のほう。


以前,「杞憂であればよいが」というエントリーで,麻酔科医が術前の胸部単純XPで肺癌を見逃した場合のことを心配していた。


脳梗塞の患者を診ている脳外科医が肺癌を探す努力をしたとは思えない。何らかの理由で胸部CTを撮って,くっきり映っていたtumorを見逃したのだろうか。胸部単純XPで,学生でも見つけられるような大きな病変に気がつかなかったとか? 

>担当の脳神経外科医は報告書の確認を怠った

単純XPで読影医が報告書を書くことはないはず。やはりCTか。放射線科からの報告書を確認しなかったのなら,脳外科医に瑕疵があるかもしれない。

しかし,一般人も司法もマスコミも「病院にかかってさえいれば,医師が勝手に(主病変と無関係でも)どんな病気も見つけてくれるはず,いや,見つけなければならない」と信じている限り,専門外の医師が画像所見を見逃しても訴えられるだろう。


今回は566万円の示談だったが,そのうち業務上過失致死もあり得る。


とにかく,杞憂ではなくなってきた。麻酔科医にとっては,術前胸部XPを見て得られる情報のメリットよりも,肺癌を見逃すリスクのほうが大きい。特に下半身・上肢・頭頚部の手術で,主治医が“麻酔科医に見てもらうために撮った”XPの場合,責任は麻酔科医ひとりに負わされるだろう。

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September 19, 2007

HIVは大丈夫なのか?

魚拓

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インターネットでB型肝炎に?!ネットユーザーに警告―中国

9月16日12時10分配信 Record China

インターネットでB型肝炎に?!ネットユーザーに警告―中国


調査を受けたネットユーザーのうち、週に3時間以上運動している者はわずかに51.4%、12.5%のネットユーザーは半年以上全く運動をやっていないと回答している。週末の過ごし方として、ネットユーザーの41%はインターネットをして過ごすと回答、体を動かすと回答した者は9%に満たなかった。また毎日8時間以上睡眠を取っていると回答したネットユーザーはわずかに16%だった。【 その他の写真 】

さらに70%近くがネットをやりながら食事をしたことがあると回答、2%は食事中はいつもネットをすると回答しており、生活習慣の乱れがうかがえる。ネットカフェのキーボードにはB型肝炎のウイルスが付着している可能性が高く、ネット中の食事は極めて危険だという。(翻訳・編集/KT)
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ネットカフェのキーボードにHB(+)の血液がべったりついていて,ケガした指でその血液に触ったなら話もわかるが…。


不特定多数の人間が触ったものでB型肝炎に感染するのなら,電車のつり革もエスカレーターの手すりも危ない。喫茶店の新聞やマンガ,図書館の本,古本,レンタルCD・DVD,ゲームソフトなどすべての中古品,エレベーターのボタン,自販機のボタン,そこらへんのドアノブ,貨幣etc
数え上げればきりがない。


不衛生な密室で感染症のリスクが問題になるとしたら,結核とかインフルエンザじゃないのか?


もし日本のどこかの新聞社が上の記事を紙面に載せたなら,ネットカフェ業界は風評被害でその新聞社を訴えるべきだ。やってくれそうなおバカな新聞社をひとつ知っている。

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September 17, 2007

同意書に「ウンコ汁」

前回に続いて同意書ネタ。ただし,タイトルが某先生風。

魚拓

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内視鏡検査で大腸に穴、83歳男性死亡…岐阜・関中央病院

9月15日11時22分配信 読売新聞

 岐阜県関市の関中央病院(斉藤雅也院長)で今年6月、内視鏡による大腸検査を受けた同市の男性(83)の大腸壁に、担当医が誤って穴を開ける医療ミスがあったことが15日、分かった。男性は検査後に腹膜炎を起こし、死亡した。

 病院によると、男性は大腸ガンの疑いがあるとして、6月8日に大腸検査を受けた。30歳代の内科の女性医師がファイバースコープを使って検査した際、大腸壁に約1センチの穴を開けた。男性は検査から3~4時間後に腹膜炎を起こし、緊急手術を受け入院したが、7月28日に多臓器不全で死亡した。

 遺族は「検査する前は元気だった。病院側と現在、示談交渉を進めている」とし、日野晃紹(あきつぐ)副院長は「事故は県医師会医療事故裁定委員会に報告し、遺族とは誠意を持って話し合いを進めている」と話した。

最終更新:9月15日11時22分
読売新聞
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CFでの腸穿孔はよくある合併症。

検査の同意書に合併症の筆頭として明記されているはずだ。

よくある合併症まで示談の対象となったので侵襲性のある検査は一切できない。


>3~4時間後に腹膜炎を起こし、緊急手術を受け


記事からは緊急手術がいつ施行されたのかわからない。検査中に穿孔したことに気づかず,腹膜炎症状が出ても腹膜炎の他の原因を精査,あるいは様子を見ていて手術のタイミングが遅れたのだろうか。

検査中に穿孔に気づいたなら3時間も放置しないだろうが,手術の準備(家族の来院・説明・同意書取得,他の手術との調整,外科医の手配,麻酔科医の手配など)に時間がかかったとも考えられる。


それにしても

>検査する前は元気だった

これを主張されるなら,今後は元気な人には検査できない。

そうかといってCFしなかった場合,後日癌が見つかったなら「必要な検査を怠った」となるのだろう。


どうするべきか?


患者やその家族は,専門用語で書かれた同意書の内容を理解できないのではないか。
「穿孔」や「腹膜炎」と言われてもピンと来ないのかも知れない。

「同意書さえきっちり取っていれば大丈夫」というわけでもないが,できるだけわかりやすい言葉を使って同意書を書いておけば,遺族の怒りは少しは和らぐ(?)と期待したい。無理かな。

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大腸内視鏡検査は,腸という管のなかにファイバースコープという管を入れて検査するものです。管のなかに別な管を入れるだけなので,一般の方にはさも簡単そうに思えるでしょうが,腸管は曲がりくねっている上,腸の壁が薄いため,内視鏡の先が腸管を突き破ることがあります。検査前の絶食などの前処置により腸内に大きなウンコは存在しないはずですが,腸が破れるとウンコ汁が腸の外に漏れ出てきます。このウンコ汁にはたくさんのバイ菌が含まれており,これらのバイ菌によって腹膜炎となります。この場合は緊急手術でお腹を開け,破れた箇所を縫い縮めたり,穴が大きい場合はそのあたりの腸を切り取り,つなぎ直します。手術中にきれいな水でお腹のなかを何度も洗いますが,バイ菌がどこかに残り,数日後にまた腹膜炎となることがあります。


腹膜炎は恐ろしい病気です。現在症状がなく元気にされている方でも,腸が破れると腹膜炎を発症し死に至る場合があります。運良く死亡しなかった場合も,お腹に大きな手術痕が醜く残ります。また,他の持病のある方や高齢者では緊急手術そのものの危険性が大きくなります。さらに,手術したところの腸が細くなり,食べ物が通りにくくなることがあります。これを腸閉塞(イレウス)と呼びます。腸閉塞を治すためにまた手術が必要となることがあります。人間のからだは手術をすると,手術箇所が周りの組織とくっついてきます。これを癒着と呼びます。お腹の手術を何度もすると,今度はこの癒着によってまた腸閉塞(癒着性イレウス)となり,これを治すために再度手術が必要になります。これらの手術はすべて全身麻酔です。麻酔中は意識がないので痛みを感じることはありませんが,麻酔から醒めるとムチャクチャ痛くてのたうち回る場合があります。手術の後は数週間の入院が必要です。


つまり,内視鏡検査で腸が破れると,最悪の場合は死亡し,何とか生き延びた場合もからだに傷跡が残り,何度も痛い思いをし,何週間あるいは何ヶ月も入院しなければなりません。当然多額の医療費がかかりますが,病院側に明かなミスがない限り,患者さんの自己負担分の医療費を肩代わりすることはありません。


大腸内視鏡検査を受けなかった場合はガンかどうかの診断が確定せず,ガンだった場合は治療が遅れて死期が早まる場合があります。
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簡単な言葉を心がけ,「ウンコ汁」「バイ菌」などを使っていても,やはりなんとなく堅苦しい文章になる。同意書は医師以外が作った方がいいかもしれない。

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September 14, 2007

診断同意書


魚拓

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名張市立病院が誤診、遺族に損害賠償

 名張市立病院は13日、2003年~04年に検査を受けた伊賀地域に住む70歳代の男性患者が、肝臓内の胆管細胞がんだったにもかかわらず、良性腫瘍(しゅよう)と誤診したと発表した。男性はがんが進行し、昨年5月に死亡。同病院は造影MRIの画像でがんと診断できた可能性が高かったとして担当した放射線科と内科の医師各1人の診断ミスだったと判断。遺族に約2300万円の損害賠償金を支払うことで示談の内諾を得た。28日の定例市議会本会議に損害賠償議案を提案する。

 竹内謙二病院長は「MRIの検査画像の診断に問題があった。今後は注意深い診断に努める」と述べた。
(2007年9月14日 読売新聞)
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誤診に関しては以前にも書いた。
http://anesthesia.cocolog-nifty.com/freeanesthe/2007/03/post_d638.html
http://anesthesia.cocolog-nifty.com/freeanesthe/2007/03/post_1121.html

上の記事のCCCが画像上どのようなものであったかは知らない。

研修医でも見つけられるようなものを見逃したとかならまだ話もわかるが,後日専門家がじっくり見て「これがそうかな?」というきわどいものも誤診扱いされたのではたまったものではない。

侵襲的検査や手術の前に同意書を取得するのはもはや常識であるが,今後は診断した際にもきっちり文書で残す必要がある。


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           診断同意書

現病歴,既往歴,理学所見,CT,MRI,腫瘍マーカーの検査結果等から総合的に診断しましたところ,○△▽■氏の肝臓内に存在する病変は良性の確率が80%,悪性の確率が20%と思われます。生検を実施すれば診断の精度は少し上がりますが,診断が確定するとは限りません。生検にはリスクが伴います。生検を受ける,受けないは医療を受けられる方の死生観,ライフスタイル,経済状況などによって異なりますので,医療提供者側から誘導することはいたしません。現在の病変部は落ち着いていますが,悪性の場合は急激に増大することがあります。

               説明した医師   ※◎●☆     印


上記の内容を※◎●☆医師から説明を受け,理解した上で診断に同意いたします

               本人       ○△▽■     印
               同席者      ○△◆□(妻)  印  
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これだけでは安心できない。

ICを受けた患者と同席した家族は納得しても,遠くの親戚が後からやってきて難癖をつけることはよくある。

同意書の片隅に以下のような一文が必要かも知れない

医師からの説明を直接お聞きにならなかったご親戚の方が,後日になって『この内容では納得できない』と主張される場合がありますので,遠方のご親族の方とは電話などでよく話合われ,十分ご検討の上で署名・押印をお願いいたします。


診断同意書でググると300件以上引っかかった。目新しい言葉ではないようでがっかりしたが,それらはPCの記憶媒体のデータ復旧や家屋の耐震診断に関するものだった。


しかし癌ならまだしも,common coldでもこんな同意書を書いていた日には…。

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September 12, 2007

対人(医師のみ)センサー搭載追尾型

魚拓

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厚木市立病院:「他に急患」診察せず、転送直後に死亡--先月 /神奈川

9月11日13時1分配信 毎日新聞

 厚木市立病院(厚木市水引1)で8月、当直中に救急受付を訪れた市内の無職男性(73)が診察を受けないまま別の病院に転送され、直後に死亡していたことが分かった。市立病院側は「心肺停止の患者が搬送される予定で、男性側に『対応できないので他の病院へ行ってください』と説明した」としているが、遺族は「事務職員しか対応せず、そんな説明も一切なかった」と食い違い、市立病院の対応に憤っている。
 男性の妻(67)の話では、日曜当直体制の8月12日午前、男性が「頭が痛い」と訴え、妻の運転する車で同病院を訪れた。救急受付の脇のソファに横になり、看護師が妻に体温計を渡した。いっこうに診察してもらえないので催促すると、職員から「1時間半待つことになる。(嫌なら)他の病院へ行って」などと言われたという。別の患者を搬送してきた救急隊員がやりとりに気づき、見るに見かねて救急車を要請。別の病院に運ばれたが、直後に急性心筋梗塞(こうそく)で死亡した。
 市立病院事業局は取材に対し「心肺停止状態の患者が搬送されることになり『救急車を呼んで別の病院で受診して』と話したが、男性側が『病院が救急車を呼ぶべきだ』と主張したので『規則で、病院が救急車を呼ぶのは医師、看護師が同乗する場合だけ』と説明した」と話している。
 男性の妻は元看護師。男性は以前に心筋梗塞で市立病院の前身の県立厚木病院に入院したという。「待っている間、医師も看護師も来なかった。市立病院の対応はひど過ぎる。こういうことが二度とないよう、声を上げることが大切と思った」と話した。【佐藤浩】

9月11日朝刊
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何事も相手の立場になって考えるというのは大事だ。

この場合,遺族としては
「救急車をタクシー代わりに利用する不心得者と違い,病院にはマイカーでやってきた」
「以前にも心筋梗塞の既往があり,この病院で診てもらった」
「カルテがあり,既往症のことを知っている病院にかかりたくてわざわざここに来た」
「なのに,医師も看護師も来なかった」
「病院にいるのに,救急車を呼べとはどういうことだ」


病院側の立場としては
「こちらの都合も考えずに連絡もなく急に来られても困る」
「心肺停止の患者が来る予定ということは,救急隊に『受け入れOK』の意思表示をしたということ」
「『心肺停止受け入れOK』とした以上,それなりの準備を整える必要がある」
「頭痛患者の診察をしながら『心肺停止が来たら呼んでね』というわけにはいかない」
「心肺停止の患者をほっといて頭痛の患者を診るわけにはいかない」
「処置中の医師は,頭痛患者のところへ説明に行くこともできない」
「心肺停止を処置中の医師が頭痛患者の受け入れ先を探すことなどできない」

などといったところだろうか。

症状は頭痛だったが,結局心筋梗塞で亡くなられたのは気の毒である。どこかに怒りをぶつけたくなるのはしかたない。しかし,これに同調するマスコミはどうにかならないものか。

>別の患者を搬送してきた救急隊員がやりとりに気づき

この「別な患者」が心肺停止患者だったなら,記者の悪意は露骨である。
「心肺停止患者を搬送してきた救急隊員がやりとりに気づき」だと,医師を悪玉にしようとする味付けが薄くなる。そこで頭痛患者とは「別な患者」と表記したとか。
心肺停止患者とは「別な患者」,つまり第3の患者という可能性もあるが,これからCPRしなければならないときに新たな救急患者を受け入れるとは思えない。


この記事を書いた記者に仮に上記のような悪意がなかったとしても,何を訴えたいのかわからない。自分でも何を言いたいのかわからない,あるいは明確な主張は避けたいのか,患者の妻の発言を引用するにとどまっている。
さすがに「心肺停止の患者をほっといて頭痛患者を診るべきだった」とは書けないようだ。

それとも,「医師や看護師が手が離せないのはわかるが,せめて受付の職員が他の受け入れ先を探すべきだった」とでも言いたいのだろうか?

もしそうしたとしても「医学の素人が搬送先を探したので手間取った」とか責められるような気がする。


厚木市立病院のそのときの当直医が後日,「あのとき断った頭痛患者が実はAMIで,他院で亡くなった」と聞かされたとき,どう思っただろう。私なら「それってlandmineじゃん。あの心肺停止患者に感謝せねば」だったろう。

しかし,運良く地雷を避けたはずだったのに,その地雷に足が生えてどこまでも追ってくる。

とにかく,医師が手一杯でお断りした患者に関しても,その医師が責任をとらされそうな流れだ。

宿直(当直)というボランティア活動からは冗談抜きで早く撤退したほうがよい。

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September 08, 2007

救急車のベッドも足りない

魚拓

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妊産婦 9府県で広域救急搬送システム…近畿・徳島など
5日スタート 奈良の死産で前倒し

 近畿地方と徳島、福井、三重の9府県が5日から、府県境を越えて非常時の妊産婦を受け入れる広域救急搬送システムの運用をスタートさせる。10月開始の予定だったが、先月下旬、奈良県橿原市の妊婦が相次いで病院に受け入れを断られて死産した問題を受け、住民の不安が高まっていることから、当初予定より約1か月早めた。

 大阪府の太田房江知事が4日の定例会見で明らかにした。

 同府によると、各府県に少なくとも1か所ずつ、救急隊などからの連絡窓口となる拠点病院を設定。緊急手術が必要などの妊産婦について、拠点病院がまず地元の府県内で受け入れ先を探し、見つからない場合、他府県の拠点病院に依頼する。拠点病院の医師同士が直接連絡を取り合うことで、妊産婦の正確な容体を把握できるなどのメリットがあるという。

 大阪府では、すでに単独で拠点病院による受け入れ先検索システムを採用しているが、奈良県などでは妊産婦にかかりつけの病院がない場合、救急隊が独自に各地の病院に連絡して空きベッドを探すなどしなければならず、搬送に時間がかかるケースがあった。

 新生児集中治療室が最も少ない徳島県では6床しかないが、9府県では計475床あるため、機動的な運用が可能となり、遠距離の場合はヘリコプターでの搬送も行うという。

 昨年8月、奈良県大淀町立大淀病院で出産時に意識不明となった妊婦が計19病院に転院の受け入れを拒否されて死亡した問題を受け、今年3月、9府県が「近畿ブロック周産期医療広域連携検討会」を発足させ、協議を重ねていた。拠点病院間の連絡事項や方法など運用の詳細については順次、整備していく。

 太田知事は「拠点病院に一元化することで効率よく受け入れ先を見つけられる。悲劇が二度と起こらないようシステムを速やかに稼働させたい」としている。


(2007年9月5日 読売新聞)
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受け入れ可能な施設を探す際,広い地域で探せば「受け入れ可」を見つけやすい。とてもわかりやすい理屈だ。
茶々を入れるつもりは毛頭ない。何かに行き詰まったとき,新たなソフト(広域救急搬送システム)やハード(ヘリコプター)に頼ろうとするのは当然だ。うまく行くかどうかは別にして。


奈良以外の府県も大阪を頼りにしているのかもしれないが

魚拓

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<妊婦搬送>大阪でも19病院拒否、自宅で出産 06年7月
9月7日22時24分配信 毎日新聞


 奈良県橿原市の妊婦(38)が同県と大阪府の計9病院に搬送を断られて死産した問題と同様、大阪市でも06年7月、産気づいた妊婦が19病院に受け入れを断られていたことが7日、分かった。妊婦は、かかりつけの産科がなく、搬送先を探している最中に自宅で出産。母体と新生児は20カ所目の同府内の病院に運ばれ、母子の命に別条はなかった。
 通常のお産では、妊婦は健診のため産科に通い、陣痛が始まった時に運ばれる医療機関は決まっている。橿原市のケースでも妊婦は産科にかかっておらず、消防が受け入れ病院を探した。
 大阪市消防局によると、今回の妊婦は30代。昨年7月24日夜、陣痛が始まり、午後8時11分ごろ、119番通報した。救急隊が駆けつけたが、かかりつけの病院がなかったため、その場で待機し、府内の病院に次々と受け入れを求めた。しかし、19病院に断られた。
 その間、妊婦は救急車内で待機したが、トイレに行くため自宅に戻った際に出産してしまったという。医師や助産師はおらず、救急隊員が介助したという。その後、搬送を受け入れる病院が見つかり、午後10時12分に自宅を出発。16分後に病院に到着した。
 同消防局によると、昨年1年間で産科に搬送されたのは2673人。このうち、かかりつけ病院など搬送先が決まっておらず、119番通報後、受け入れ病院を探したケースは135件あった。同消防局は「約9割は1~3回の依頼で受け入れ先は見つかり、平均すると2・3回。19件も断られたのは特異なケース」と話している。【根本毅】

最終更新:9月7日22時24分
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>19件も断られたのは特異なケース

そのうち特異なケースではなくなるはず,いや,上のは昨年7月の出来事。現在ではすでに19件なんてザラかも。

大阪市内でこの有様。徳島,福井,三重からも搬送依頼があった場合に対応できるのか。

患者搬送に使えるヘリコプターを各府県が何台所有しているのか知らないが,パイロットを救急隊員と同様に待機させるのも人件費がかかることだろう。

「徳島県は大鳴門橋と明石海峡大橋で兵庫県と陸続き」などと言うつもりはない。最近はヘリポートを備えている病院も多いし,救急車よりヘリコプターのほうがそりゃ早く着くに違いない。

でも,せっかく(金額が)世界一の公共事業であちこちの道路を整備したのだから,これをもっと活用してはどうか。長距離仕様の救急車を作ればいいだけ。救急車は高価らしいが,ヘリコプターほどはしないだろう。

救急隊員「やっと搬送先が見つかりました。運がいいですね。探し始めてまだ90分しかたっていません」

患者家族「とりあえずよかった。どこですか?」

救急隊員「大阪です」

患者家族「そんな遠いところ…」

救急隊員「大丈夫です。夜中なので道はすいていますし,信号も守らなくていいので思ったよりも早く着きます」

患者家族「ところで,最初から奥のベッドで毛布かぶって寝ている患者さんも,同じ大阪の病院まで送られるのですか?」

救急隊員「いえ,彼も救急隊員で,運転の交代要員です。出番に備えて仮眠しています」

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September 05, 2007

そのうちベタ記事に

魚拓

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千葉でも妊婦たらい回し 30代、16病院に断られ切迫流産
2007年9月5日 夕刊

 千葉市で昨年、下腹部に異常を訴えた三十代の妊婦の受け入れ先病院の交渉が難航し、結果的に切迫流産状態となったことが分かった。同市消防局によると、妊婦は千葉市外に居住。夜間に一一九番したが、市内などにある十六の病院で受け入れを断られて、約一時間後に千葉大病院に搬送された。妊婦にはかかりつけの医者はいなかったらしい。

 奈良県橿原市の妊婦が受け入れ先病院が決まらず死産となった問題がクローズアップされているが、政令指定都市の千葉市でも妊婦の救急時の受け入れ態勢に不安があることが浮き彫りになった。

 このほかにも千葉市では、今年に入って別の三十代の妊婦が十一回受け入れを断られ、約一時間にわたり受け入れ先が決まらなかったケースも起きていた。

 同市消防局は「切迫流産の詳しい経緯などは救急搬送後のことで分からない。妊婦の搬送の場合、受け入れを打診すると、別患者の処置中で断られるケースが多い」としている。

-----------------------------------------------引用終了-------------

また「たらい回し」か。救急車や妊婦がどれだけ無駄に走り回ったというのだ。

>約一時間後に千葉大病院に搬送された
>約一時間にわたり受け入れ先が決まらなかったケースも起きていた

そのうち1時間なら「きわめて早い,幸運なケース」となるだろう。


それにしても,千葉西総合病院の院長のブログが炎上した直後にこの記事が載るなんて,単なる偶然か?

受け入れを断った病院のなかに千葉西総合病院が含まれているかどうか知らないが,院長のブログを見て反感を持った誰かがたれ込んだのだろうか? かつて救急搬送を断られたことのある医師,救急隊員,あるいは千葉西総合病院の内部からの告発,ブログ炎上を見ていたマスコミ…。動機のある人物なら事欠かない。


ま,あの院長のことはさておき。

今後も「○○県でも救急搬送に3時間」「20施設で断られ」などの報道が続くだろう。
どうせマスコミは枕詞「たらい回し」をひとつ覚えで見出しにつけるだろうが,その見出しもだんだん小さくなると思う。
連日どこかの地域で救急受け入れ不可が発生しているので,いちいち大きく取り上げていてはキリがない。読者もほとんど他人事で「またか,どうしようもねえな」程度の反応に落ち着くはず。

イラクの自爆テロの記事と同じ。紙面をどれだく割くかは被害の大きさによる。


数年後の○日新聞社

赤木記者「デスク,また妊婦たらい回し事件です! 今度は奈良から名古屋に運ばれました!」

デスク「で,何箇所の病院に拒否されたの?」

赤木記者「奈良県が2箇所,大阪が4箇所,京都が1箇所です」

デスク「全部で7箇所か。ちょっと少ないなー。せめて2桁は欲しいなー」

赤木記者「しかしお産を扱っている施設自体が少ないですし,『どんな救急患者も,専門外でも満床でも断らない』と宣言していた病院もとっくにつぶれました。交渉する相手そのものが少ないのだから仕方ありません」

デスク「でも拒否が7件で,しかも奈良県内から名古屋程度だろ。どうせなら神奈川くらいまで行って欲しかったな」

赤木記者「無理ですよー。横浜だってお産できる施設は皆無なのですから」

デスク「で,妊婦はどうなったの?」

赤木記者「救急車のなかで出産し,母児ともに無事です」

デスク「元気なのか。いまどき救急車内出産なんて珍しくないしな。飛行中のドクターヘリのなかで出産とかならまだインパクトあるんだが」

赤木記者「でも,双子だったんですよ」

デスク「よし,その線でいくか。初の車内双子出産かどうか調べろ。ただし記事は20行程度でいいぞ。それに明日は首相の靖国神社参拝が噂されているからな,もし参拝が本当なら救急たらい回しの記事はボツな」

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September 02, 2007

夜間救急はボランティアに依存

いままでに何度も書いてきたことだが,世間一般にはまだまだ知られていないようなので再度書く。

今回の奈良救急車内死産の件では,いまだに医師に非があると思っている人が多いようだ。
マスコミのミスリードもさることながら,アメリカのTVドラマ「ER 緊急救命室」の影響もあるのではないかと思う。
かのドラマの病院では,夜中でも大勢のスタッフが元気に働いている姿が映し出される。外の景色が無ければまるで昼間のようだ。「あんなに医者がいるのだから,患者がひとり増えてもどうってことないだろう」と。

日本の多くの病院は違う。大学病院のように各診療科ごとに1人か2人の当直がいるのはきわめて恵まれたほうで,多くの自治体病院では内科系1人,外科系1人の計2人,ひどい場合には基幹病院でも夜間は医師が1人だけというところも珍しくない。

そして何よりERと異なる点は,日本の病院で夜に働く医師は夜勤ではなく宿直ということ。

ドラマのERでは,夜に働いていた医師が朝になると帰って行くシーンがある。あれは交代勤務の夜勤だからできること。朝になると交代要員が出勤してきて,申し送りをすますと夜勤者は帰宅できる。コンビ二の店員や夜警のおじさんなどと同じである。

日本ではこのような交代勤務の夜勤は少なく,夜間は宿直ということになる。
一般的には当直と呼ばれているが,正しくは宿直である。

宿直に関してはこちらが詳しい。
このなかで以下のように書かれている。
-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-引用開始-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-◆-◇-
1 医師及び看護師の宿直勤務に係る許可基準に定められる事項の概要
(1)通常の勤務時間の拘束から完全に開放された後のものであること。即ち通常の勤務時間終了後もなお,通常の勤務態様が継続している間は,勤務から開放されたとはいえないから,その間は時間外労働として取り扱わなければならないこと。
(2)夜間に従事する業務は,一般の宿直業務以外には,病室の定時巡回,異常患者の医師への報告あるいは少数の要注意患者の定時検脈,検温など特殊の措置を要しない程度の,又は短時間の業務に限ること。従って下記(5)に掲げるような昼間と同態様の業務は含まれないこと
(3)夜間に充分睡眠がとりうること
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太字は管理人による

で,今回の奈良県医大の宿直医と同様,宿直の翌日は通常勤務が待っていることが多い。宿直は夜間に睡眠できることが原則なので,翌日は勤務してもよいことになっている。逆に宿直医を夜勤者のように徹夜で働かせ,その上翌日も朝から通常通り勤務させる行為は明らかに労働基準法に違反する。しかし,経営者にとっては「当院は書類上は宿直。宿直は夜勤と違って充分に睡眠がとれているはず。実際に寝たかどうかは知らない。勝手に起きている人もいるだろうし」という理屈が通る。

じゃ,「一睡もできなかった昨夜の勤務は何だったのか」ということになるが,それは「医師が自由意志で働いた」ということになる。

実際,過酷な勤務が続き,うつ病から自殺に至った小児科医は労災認定は認められたものの,病院を相手取った民事訴訟では過労自殺を否定されている。http://anesthesia.cocolog-nifty.com/freeanesthe/2007/03/post_e109.html

この病院(立正佼成会)がそう言ったかどうか知らないが,病院経営者側としては「本来は宿直として届け出ており,入院患者の急変に備えるだけで睡眠はとれたはずである。救急隊からの患者を引き受けたのは医師本人の自由意志による。勝手に働いて過労と言われても困る」と言えるし,実際そう言わなければ労働基準法違反となる。

結局,日本の夜間の医療は宿直医の善意によって成り立っている。これは今に始まったことではなく,昔からそうである。しかし,昔はこれでもなんとか回っていた。なぜ,今になって破綻したか?

昔は今のように軽症のコンビニ受診が少なかったし,モンスターペイシェントも珍しかった。医局制度もうまく機能していた。マスコミの医療バッシングも司法のトンデモ判決もなく,不当逮捕もなかった。したがって医師のモチベーションも高いところに維持できていた。

まあ仕方がない。政府が医療にお金をかけたくないのだ。政府としては「マスコミがまたうまくミスリードしてくれたおかげで,今回も医師の責任にすることができた。国民は馬鹿だから政府が悪いとは思わない。ホントに扱いやすい国民で助かる」とほくそ笑んでいることだろう。

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September 01, 2007

産経版「恥を知れ」

妊婦でも夜中の2時や3時に買い物に行かねばならない事情もあるだろうから,その点は非難しない。しかし,過去に流産の既往のある38歳の妊婦が,妊娠7か月でもかかりつけ医がいない,つまり産科を受診していないとは感心できない。

各メディアはこのことには詳しく触れず,医師を悪者にしようと躍起だ。

毎日の連日の報道は言うまでもないが,産経の社説もひどい。

魚拓
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【主張】妊婦たらい回し また義務忘れた医師たち
 次々と病院から受け入れを断られ、たらい回しにされた奈良県の妊娠中の女性が、救急車の中で死産した。奈良県では昨年8月にも、分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦が、19カ所の病院に転院を断られ、死亡している。悲劇が再び起きたことに死亡した妊婦の夫は「この1年間、何も改善されていない。妻の死は何だったのか」と怒りをあらわにする。その通りである。「教訓が生かされてない」と批判されても仕方がない。

 女性はようやく見つかった10カ所目の大阪府高槻市の病院に向かう途中、救急車内で破水し、その直後に救急車が軽ワゴン車と衝突した。

 事故後、消防隊員が連絡すると、病院側は「処置は難しい。緊急手術も入っている」と断った。その後、大阪府内の2病院にも断られ、困った消防隊員が再び要請すると、高槻市内の病院は受け入れをOKした。結局、病院にたどり着いたのは、119番から3時間もたっていた。

 奈良県では危険な状態にあるお産の周産期医療の搬送は、健康状態を把握しているその妊婦のかかりつけ病院が県内の2病院に連絡し、それぞれが受け入れ先を探す。この仕組みだと、比較的受け入れ先が見つかりやすい。

 しかし、死産した女性はかかりつけの医者がいなかった。このため、一般の搬送の手順で消防隊が受け入れ先を探した。これが時間のかかった理由のひとつだという。

 奈良県の幹部は「かかりつけ医のいない妊婦の搬送は想定外だった。すぐに対策をとりたい」と話すが、トラブルや事故は予期せぬ中で発生するのが常である。早急に抜本的対策をとる必要があろう。

 周産期医療を扱う病院は、全国的に減少している。産婦人科医は内科医などに比べ拘束時間が長く、訴訟も多いからだ。

 妊婦のたらい回しは、奈良県だけに限った問題ではない。厚労省は産科医などの医師不足対策に本腰を入れて取り組むべきである。

 それにしても、痛みをこらえる患者をたらい回しにする行為は許されない。理由は「手術中」「ベッドがない」といろいろあるだろうが、患者を救うのが医師や病院の義務である。それを忘れてはならない。

(2007/08/31 05:02)

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大淀病院のときの日刊スポーツ「恥を知れ」と同レベル。

>次々と病院から受け入れを断られ、たらい回しにされた

だから,電話をあちこちにかけて次々に断られるのは「たらい回し」とは言わないって。
新聞社の人はホテルの予約のためにいろいろ電話してやっと10件目に予約がとれたら,「たらい回しの末にやっと10件目でホテルがとれたよ」って言うのか? 「たらい回し」を使うことによってネガティブな印象を植え付けようという悪気はわかるが,一応新聞社なのだからちゃんとした日本語使ってくれ。

>理由は「手術中」「ベッドがない」といろいろあるだろうが、患者を救うのが医師や病院の義務である。それを忘れてはならない。

現在手術中の患者をほったらかしにして新たな救急患者の対応をしろと? 夜中の手術でブラブラ見学しているだけの医師がいるとでも思っているのか。医師が手術や処置で手がいっぱいなら,たとえベッドが空いていたとしても断らざるをえないこともある。空床有り≠受け入れ可能ではない。まして「ベッドがない」ならどうしろというのだ? まさか「廊下のソファで」とか子供みたいなセリフが出てくるのか。

>「教訓が生かされてない」と批判されても仕方がない。

これは誰に向かって言っているのか? 
現場は懸命に耐えている。奈良県立医大の医師たちも夜を徹して働いていた。
県立医大が正式に発表しているhttp://www.naramed-u.ac.jp/~gyne/2007.08.28.html
当夜の当直は2名だったが翌朝「当直者1名は外来など通常業務につく、もう1名は代務先の病院で24時間勤務につく」と記載されている。マスコミはそれでも働きが足りないというのか。医師たちは目の前の患者を救うのに精一杯で,「大淀の件で断ったことが大問題になったから,今度からすべて引き受けよう」なんてことにはならない。

そういえば,シュード医療ジャーナリストの伊藤隼也とかいう人が「とくダネ」で奈良県立医大を批判していた

当日の県立医大の状況を知ってもまだ同じことを主張するのだろうか。

今度のことで,奈良の産科医の心はまたしても折れたことだろう。交代制の夜勤ではなく代休のない宿直という勤務形態で徹夜でがんばっていても評価されないどころか,すべてのメディアから責められる。本来宿直は電話番程度の仕事しかしないことになっている。宿直医が院外救急を受け入れるのは義務ではなく,ボランティアに過ぎない。そろそろ割り切って,本来の宿直業務だけを果たしたらどうです。「はい,○○病院です。えっ? 空きベッドですか? ええ,ありますけど。ただ,医師は宿直の私しかいなくて,夜勤の医師はいないんですよ。だから受けられません。明日も朝から手術に入りますので,もう寝ます。じゃ」

夜勤と宿直の区別がつかないマスコミはまた叩くだろうけど,身体は楽になるし,DQN症例を引き受けて訴訟に当たる確率も低くなるだろう。

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