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August 31, 2007

私は大淀病院産科医師を支持します

奈良で救急車内流産があった8月29日には大阪地方裁判所で大淀病院事件の第二回口頭弁論があった。

僻地の産科医さんのレポートによると,原告側は
「子どもなんか助けんでも、お母さんを助けてほしかった」
「脳出血もクモ膜下出血や硬膜外血腫とリスクは同程度で,脳外科に送れば助かる」
と思っているらしい。

何にたとえればわかりやすいだろう。

ゆで卵にしよう。

卵の殻が頭蓋骨,白身の外側の薄皮が硬膜&くも膜,白身&黄身が脳実質(黄身が脳幹部?)とする。ただし白身は卵形ではなく,クルミの実のように立体的に入り組んでいる。

硬膜外血腫とは薄皮と殻の間に血の塊ができた状態。卵の殻を少し開けて血腫を除去してやれば,白身や黄身は無傷だ。もちろん,血腫が大きくて白身を圧迫することはある。脳は圧迫に弱い。

クモ膜下出血は白身と薄皮の間に出血する。ゆで卵ではこの薄皮をはがすのに苦労することがあるが,実際の脳では白身(脳)と薄皮(くも膜)の間は脳脊髄液という液体で満たされている。クモ膜下出血の多くは脳動脈瘤の破裂によるものであり,治療としては再出血を防ぐために開頭クリッピング術やコイル塞栓術が行われる。ゆで卵にたとえれば薄皮と白身の間の問題であり,慎重にやれば白身は傷つかないが,動脈瘤はクルミの溝の奥に存在し,手術(開頭術)でそこに到達し視野を得るためには分け入らねばならず,ある程度白身を圧排しなくてはならない。
素人的に見れば,クモ膜下出血では白身が直接損傷することはない。しかし実際には血管れん縮や再出血などにより予後は悪い。後遺症無く社会復帰できる症例もあるが,最初の出血で1/3が死亡すると言われている。

さて,脳出血だが。誤解の無いように脳内出血と呼ぶことにする。白身や黄身の内部での出血だ。大淀病院の件では国立循環器病センターで右脳混合型基底核出血と診断された。

大脳基底核とは,ゆで卵で言えば黄身に近いところの白身といったところか。

脳内出血についてはここがわかりやすい。

-----------------------------------------------引用開始-------------
高血圧性脳出血は、高血圧が問題となる40ー60才代に多く発生する出血性の脳卒中の代表的疾患です。大脳深部の被殻、視床という部位に好発しますが、これはこの部に血液をおくる細い穿通動脈に発生した粟粒動脈瘤が破綻するためといわれています。
 高血圧性脳出血の約65%が大脳基底核部に見られますが、運動神経の線維が密集して走る内包という部を境に、それより内側の出血を内側型(視床出血)、外側の出血を外側型(被殻出血)、両方にわたるものを混合型と呼びます。
-----------------------------------------------引用終了-------------

黄身のすぐ外側にある出血を,白身を傷つけずに除去できるかどうか,小学生でも想像できるはずだ。それとも,「CTをとれば止血できて血腫も消去できる」とでも思っているのだろうか。

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Comments

>「子どもなんか助けんでも、お母さんを助けてほしかった」

これはわたしにとっては許しがたい言い分です。実際母体が助かったとしてこんな考えを持つような家族に一体何ができるのか、年端も行かないのに原告に立てられた子どもがいつかこれを知ったらどんなに傷つくだろうかと思うと腹が立って仕方ありません。

Posted by: えぼり | August 31, 2007 at 11:55 PM

えぼりさん,こんにちは。

まったくです。小さな子供を原告とし,マスコミにも「母親に抱かれることなかったかわいそうな子」としてたびたび登場させておきながら,「子どもなんか助けんでも、お母さんを助けてほしかった」とはどういうことでしょう。その子がインターネットを自力で見られるようになるのは何年後かわかりませんが,この情報にたどり着くとさぞかしショックでしょうね。

Posted by: 管理人 | September 01, 2007 at 01:51 AM

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