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March 20, 2007

火中の栗拾いWG


麻酔科医 「出血時、記憶にない」、調書揺るがす発言繰り返す
福島県立大野病院事件で第3回公判

長いので一部を抜粋する

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麻酔科医に対する審問は、午後1時半から6時過ぎまで4時間半という長丁場となった。

 審問は、「加藤医師がクーパーを用いて胎盤剥離を開始したころから、子宮内で次々と沸き出るような出血が始まった」とされる部分に集中した(福島県立大野病院事件、冒頭陳述の要旨_検察側参照)。

 まず検察側に、大量出血の様子を問われた麻酔科医は、「お風呂がわくような、スイッチを入れると下からどんどん水位が上がってくるような出血だったと思う」と発言した。出血のタイミングについては調書では、「胎盤剥離の最中にあった」としている。

 しかし、弁護側が、このタイミングでは麻酔記録と矛盾する点を指摘すると、「どの時点でわき出るような出血を見たかについては記憶がはっきりしない」と証言を変化させた。

 さらに、警察や検察の取り調べの際は自身も被疑者として扱われており、特に2006年2月に加藤医師が逮捕された直後の取り調べでは「自分も逮捕されると覚悟していた」と心理的な動揺があったことを告白。

 供述段階から証言を変質させていることを裁判官に問われて、「取り調べで行った供述が、そのまま裁判で使われるとは知らなかった。調書に書かれているのなら、取り調べで自分がそう言ったのだと思う。だが、発言のニュアンスや、はっきりとは言っていないところも、調書では断定的に書かれてしまっていた。(警察や検察は)『そういうところなのだな』と半分あきらめてしまった」と語った。
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>「自分も逮捕されると覚悟していた」と心理的な動揺があったことを告白


私は過去のエントリーで「産科医には何の恨みもないが,帝王切開の麻酔は願い下げだ。福島県立大野病院の件では,遺族の怒りの矛先が麻酔科に向かっていたなら,衆人環視のなかで手錠をかけられたのは麻酔科医だったかもしれない」と書いたが,やはり危なかったようだ(実際にはK医師は衆人環視のなかで手錠をかけられたのではないらしい)。通常はまったく縁のないはずの警察署で,しかも「自分も逮捕される」と思いながら取り調べを受けていれば,雰囲気に飲まれ警察が望むような調書に誘導されてしまうのはやむを得ない。警察はさぞかし調書を取りやすかったろう。

とにかく私は逮捕や書類送検どころか,事情聴取も受けたくない。あと何年麻酔科医を続けるかわからないが,周産期の麻酔にはゆめゆめ手を出すまい。

ところが,絶妙のタイミングで日本麻酔科学会からNEWS LETTERが送られてきた。

そのなかの理事長声明に以下のようなことが記載されている。

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また、麻酔科医の専門性を高める上でSubspecialtyの確立が求められてきている。
小児、心臓などの特殊外科麻酔、産科医療の専門性の向上とリスク管理を目指した周産期・産科麻酔は、医療安全面、手術成績の向上からも国民的ニーズの高い問題と考える。中でも、無痛分娩に留まらない周産期・産科麻酔は、分娩期の管理を充実することで、多くの命を救い、あるいは障害児の発生を防止できる可能性を秘めており、少子化にあって麻酔科医が重要な役割を果たせる可能性があると考える。日本では小児麻酔、心臓麻酔に実態のある動きがあるのに対して、産科麻酔だけが概念に留まっているように思う。今後、産科麻酔を日本の麻酔科医の重要な業務の一つとして位置づけをしていく必要があると考え、WGを立ち上げた。
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また,次のページには「関連領域委員会産科麻酔 ワーキンググループが目指すもの」とのタイトルで,産科麻酔WG長のT先生が寄稿している。
その一部を抜粋する。

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○設立の背景
麻酔科医の活動領域は,関連領域委員会内の各種WGが示すように,救急,集中治療ペイン,緩和医療と広がってきた。臨床麻酔の中でも,小児麻酔や心臓血管麻酔はsubspecialtyとして早くから確立され,独自の学会も10年ほど前に設立されて活動を広げている。これに対して産科麻酔領域は,日本では麻酔科医の関与が大きく立ち後れてきた現状がある。
日本麻酔科学会の偶発症例調査に基づき,川島康男先生は日本の全帝王切開件数のうち麻酔科医が担当している割合は25.9%に過ぎないと推定している(臨床麻酔2002年3月号)。麻酔科医がいない施設で多数の分娩が行われているため,出血などの対処が不十分となり,防げたはずの母体死亡が日本では少なくないことも厚生労働省班研究に基づき長屋論文が示している(JAMA2000;283:2661-2667)。日本麻酔科学会偶発症例調査からは,術中心停止の原因が麻酔にあった事例は,帝王切開では60%と他の手術と比較して極めて高いことも示された。このように日本においては,産科麻酔の診療は質量ともに不十分といわざるを得ない。このような現状を打開するために,日本麻酔科学会の中で産科麻酔をどのように発展させていくかを検討すべく,本WGが設置された。

(中略)

○活動方針
上記の使命と目標を達成するために,WGでは個別の活動内容をリストアップし,その優先順位を話し合った。その結果,第一に優先すべきものとして,周産婦医療における麻酔科医の役割を広報・啓発することと,学術集会や専門医試験のなかに産科麻酔領域を適切に組み込むことが挙げられた。次いで,マンパワー調査や母体死亡調査にて現状を把握すること,産科麻酔領域の研究を推進することとした。最後に,帝王切開の脊髄くも膜下麻酔の保険点数増加,無痛分娩率上昇,帝王切開での麻酔科医担当割合上昇をめざす。今後はこのような行動計画をタイムテーブルに載せる必要があり,具体的には教育・学術集会担当,保険点数担当,母体死亡調査,関連学会との渉外について活動を進めていく方針である。
本産科麻酔WGは,あくまで日本麻酔科学会の組織の中で,会員に系統的な教育の場を提供し,産科麻酔を担う麻酔科医を増やし,周産期医療において麻酔科医が重要な役割を担うことを目指すものである。そしてそれが麻酔科志望者を増やすことにもつながると私たちは考えている。本WGの活動に会員の皆様のご理解を賜り,ともに活動していただきますようお願い申し上げます。
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誠に崇高な理念であり,意義深いものである。いつかこのWGが周産期麻酔研究会となり,周産期麻酔学会へと発展して行くのだろう。言われてみれば,日本小児麻酔学会や日本心臓麻酔学会が存在するのだから日本周産期麻酔学会があっても不思議ではない。学会や認定医の乱立については触れないでおく。

私はこの産科麻酔ワーキンググループの主旨に異を唱えるつもりは毛頭無く,産科麻酔の知見や技術の発展を心よりお祈りする。周産期麻酔に熟練した麻酔科医が帝王切開の麻酔を担当してくれるなら,産科医は安心して手術に取り組めるだろう。もしかしたら絶滅寸前の産科医の復活に貢献するかもしれない。

だが,私は産科麻酔に一切かかわりたくない。

>無痛分娩率上昇,帝王切開での麻酔科医担当割合上昇をめざす
>産科麻酔を担う麻酔科医を増やし,周産期医療において麻酔科医が重要な役割を担うことを目指す

上記の目標をかかげるWGにとっては,私などは情けない落伍者に映るだろう。「麻酔科医の風上にも置けない」「これだからフリーターは困る」「出血が怖いなら麻酔そのものをやめろ」 「お前のせいで産科医がますます減る」 揶揄の声は容易に想像できる。

確かに帝王切開以外にもリスクのある手術はいくらでもある。しかし,高齢者の大血管手術と帝王切開(当然若い女性)は同列には扱えない。日本の国民は,出産には危険が伴うことを忘れている。おめでたいはずのお産で母親や赤ちゃんに不幸が起きると,家族は受け入れられない。怒りの矛先は医師に向かう。マスコミはもちろん警察にいたっても「実際被害者がいるのですから」と,医師を加害者扱いする。疾患や病態が加害者であると理解できない。そしてやり玉に挙がるのは術者だけとは限らない。

今の日本は,不可抗力の出血死でも医師が逮捕される。私は,逮捕される危険を冒してまで産科麻酔に精通したいとは思わない。少なくとも,国民が「お産は母子ともに危険なものである」ことを思い出すまでは帝王切開の麻酔は引き受けない。おそらく,私が麻酔科医を続けている間は無理だろう。

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Comments

まさに、火中の栗を拾いまくりんぐですねw
何か起こるとすぐに「医師のくせに」と言われる昨今です。
いよいよ日本もアメリカ型の過剰な法治国家になるのでしょうか。
裕福で悩み事のなさそうな(?)開業医の叔父を見て医学部に入ったのですが、20年前と今とでは具体的に何が変わったんですかね。
一概に比較はできませんが、少し前にヒルズ族を見て「あー、もしこっちの世界に行ってたらどうなっていただろうか?」なんて思ったりw
まあ、それでもやっぱり医師は続けるし恵まれてる方だとは思うんですが。18歳当時の自分はどう考えてもこれが一番だと思ってましたし。

Posted by: 准平@マイナー勤務医 | March 22, 2007 at 09:55 AM

准平さん,こんにちは。

激務と訴訟リスクから「自分の子供は医師にはさせない」と断言する医師が少なくない一方,自分の意志で医学部を目指す子供に対し翻意させるに足る代替職種を提示できず,結局子供も医学部を受験するというパターンが私の周囲ではよく見られます。

他学部でも今春の新卒採用は売り手市場とのことですが,一流企業に入社しても将来リストラに遭うかもしれません。IT関連で起業しても誰もが成功するわけではありません。東大からキャリア官僚になっても出世レースが熾烈な上,未来には天下り先が激減してる可能性もあります。ロースクール乱立で弁護士も過当競争になるかもしれません。

現在,医師にとっては逆風しか吹いていませんが,医療崩壊後の焼け野原には違った風が吹くのではと,ほんの少しですが期待しています。

Posted by: 管理人 | March 22, 2007 at 08:43 PM

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