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April 30, 2006

バイト麻酔は必要悪?

日本麻酔科学会のお偉いさんたちはフリー麻酔科医が増えることを苦々しく思っているようだ。しかし,その明確な理由を示せない。バイト麻酔そのものを否定すると,自分らの大学の医局員が週に一度のバイト麻酔に行くのも否定することになってしまう。大学で助手や院生しながらの週一回のバイトはOK,他のことをせずにもっぱらバイト麻酔だけで生計を立てるのはNG,とする理屈をつけるのは難しい。
せいぜい,「バイト麻酔は必要悪。必要悪を本業にするな」ぐらいか。

Ptに対して「本来バイト麻酔など道義上許されないのですが,本日あなたの麻酔を担当する麻酔科医は大学院生でして,週に一回しかバイト麻酔していませんので許してあげてください。なかにはバイト麻酔を専業にしている麻酔科医がいるのですが,そんなヤツは許せませんよね」と言ったらみたらどうだろう。Ptにとっては大学院生だろうがフリーターだろうが,バイト麻酔には変わりない。

麻酔科学会がいかなるバイト麻酔も否定するガイドラインを作成し,日本中の病院がこのガイドラインに従うというのなら,私もどこかの病院へ常勤医として就職することを考えるだろう。

ある学会でどこかの麻酔科教授が「フリーの麻酔科医が増えているが,将来とんでもないことになる」というようなことを言っていた。しかし結局,何がどのように「とんでもないこと」になるのかの説明はなかった。

では,なぜ学会のお偉がたはフリー麻酔科医の増加に眉をひそめるのか? 不安定な身分になってしまった元医局員の将来を案じているとは考えにくい。答えは簡単。自分たちが自由に動かせる持ち駒が減るからである。勤務医の多くは医局人事で動く駒に過ぎない。

勤務医を辞め,医局の支配から離れるということに関しては,開業もフリーター化も同じである。麻酔科以外の診療科では,開業という形で持ち駒が減ることには慣れている。麻酔科は他の診療科と異なり,開業という選択肢がほとんどなかったため,今のように持ち駒がどんどん減っていく現象は経験がない。麻酔科学会のお偉いさんがフリー麻酔科医の増加を嘆くのは,眼科学会のお偉いさんが眼科開業医の増加を嘆くのとたいして変わらない。開業ラッシュで医局員が激減することはどの診療科でも起こり得ることなのだから,フリーター化を目の敵にすることはないだろう。

それとも正規の出張麻酔開業はOK,麻酔専業のフリーターはNGなのか?
これもおかしな話だ。プライドがどうのこうのは大きなお世話で,これは個人がどう思っているかの問題のはずだ。バイト先の病院は他に優秀な麻酔科医がいないから仕方なく私を雇っているのかもしれないが,私は「自分の麻酔の腕を買われている」と考えることにして自尊心を維持している。

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April 12, 2006

五月病には早すぎる

フリーになったおかげでイヤな奴ら(外科系医師とは限らない)と顔をあわさずに仕事ができ,少なくとも人間関係のストレスは皆無といっても過言ではない。嫌いな連中が視界に入ってこないのは,この上ない幸福である。

しかし,充実しているはずの毎日のはずが最近は仕事に対するモチベーションが低下している。

福島県での産婦人科医の逮捕,茨城県での麻酔科医の書類送検,無罪だったとはいえ過失ありとされた割り箸事件。

悪いことをしようと意図したのではなく,毎日の業務を普通にこなしている,もしくはベストを尽くしているなかで,結果が悪ければ民事どころか刑事訴追の対象となる。こんな仕事に精力を注ぐのは馬鹿らしくなってくる。

今年の年明け頃には「平日に休むのも飽きてきたので,週一回程度なら新たな勤務先を開拓してもいいかな」と,思っていた。しかし,産婦人科医が逮捕されたあたりから,仕事を減らすことばかり考えている。

春の人事異動の影響か,3月半ば頃より複数の病院から定期的な出張麻酔を打診されたがいずれも即座に断った。

私が出張麻酔の仕事を増やさないことにより,誰が迷惑するだろう。
仕事が増えるもしくは減らない,近隣の常勤麻酔科医?
自分たちで全身麻酔をせざるを得ない外科医?
手術までの待機期間が延びるPt?

精力的に仕事をこなしても,だれも感謝しないし褒めてもくれない。そして地雷を踏んだら,警察・マスコミ・司法・一般市民が一斉に牙をむく。

地雷を踏まないようにするには,なるべく歩かないこと。
医師がやっかいな症例にあたらないようにするには,なるべく仕事をしないこと。

やる気をなくした医者は「それなら最初から医者になるな!」という罵声をあびる。

今のような医者叩きの風潮になるとわかっていたなら,私は医師など目指さなかっただろう。

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