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February 09, 2006

輸血

手術中のPtにMAPなどの血液製剤をできれば投与したくないと思うのは私だけではないはずだ。輸血を行うかどうかはもちろん出血量だけでなく,Ptの体格,Hb,年齢,手術部位(翌日から経口摂取できるかどうか)などによるが,Ptが若くて体格もよければ1000mlぐらいの出血までなんとか無輸血で乗り切ろうとする。リンゲル液などは投与した量の1/3ほどしか血管内にとどまってくれないため,出血によるボリューム不足を補うためには大量のリンゲル液を投与しなければならない。このことを知らない外科系医師は術後「なぜこんなに輸液したのだ」と(陰で)文句を言う。ひどい場合には,こちらの苦労を知ってか知らずか,病棟でMAPの輸血が始まってしまう。「どんなPtでもヘモグロビンは10を下回ってはいけない」と信じている医師はまだまだ多い。

私が苦労して輸血を回避した症例に対し主治医が病棟で輸血を始めても,私は怒らない。大事なことは「私は輸血に関与していない」ということだ。輸血に関するトラブルは多い。輸血という医療行為を自分の手(あるいは指示)で行わなければ,トラブルが生じても当事者になり得ない。

自己血はMAPよりも輸血のハードルが低くなる。MAP投与をためらうほどの出血量でも自己血なら投与しやすい。しかし,私はMAPよりも自己血のほうが要注意と思っている。自己血を採血した人間が信用できるかどうかわからない。保管状況も知らない。「そんなことを言い出すと血液センターの血液製剤も同じ」と思われるかもしれない。しかし,専門家集団がシステマチックに行っている事業と,田舎の病院でたまに行う貯血と,果たしてどちらの信用性が高いか。ウィンドウピリオドのため血液センターの検査をすり抜けるウイルスが存在する問題は仕方ないとして,A型のラベルが貼ってあるMAPが実はB型だったなどという事故は聞いたことがない。MAPの場合は必ず交叉試験を行うので,このようなミスがあっても気づくはずである。自己血輸血の前にクロスはしない。自己血が他のPtの自己血と入れ替わっていた場合,それを疑うか気づくのは,悲惨な事象が起こった後である。自己血輸血のガイドラインではラベルの氏名はPt本人が自署することになっているが,罰則規定のないガイドラインをすべての病院が守っているかどうか。採血時の清潔操作が不十分で細菌が繁殖している可能性もある。

「自己血に問題があったとしても,知らずにそれを投与した麻酔科医に落ち度はない」というのは,単なる“こちらの言い分”である。

万一遺族に訴えられた場合,裁判所はどう判断するか。昨今の医療裁判の判例を見ているととても楽観視はできない。「麻酔科医は,自己血といえどもそれが他人の血液,あるいは汚染された血液である可能性もあることを常に念頭に置き,注意する義務があった」とされるおそれは充分ある。しかし自己血輸血が手術室ではなく,術後に病棟で開始されたのなら,麻酔科医が裁判所に呼ばれる可能性は低くなるだろう。

こんなことを書いてはいるが,最近も手術中に自己血を輸血してしまった。最終出血量約300mlに対して400mlを。

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Comments

病院における自己血は正直、信用できません。自分の病院での出来事ですが、あの採血・貯血の管理で安全性が確保できているとはとても思えません。。。シーラーの使い方だけでなくメンテもやってないんですから・・・誰も打ちの病院でメンテの仕方を知らず、元センター職員であるおいらが借り出され、メンテして、シーラーのきちんとした使い方を教えた経緯があります。また、自分の恥部を晒すわけじゃないですが、うちは薬局で自己血を管理していますがそのずさんさも・・・
血液センターの場合、GMPという非常に厳しい医薬品製造の管理・品質管理がなされており、あのレベルを医療現場でやることはほとんど不可能といえます。
少なくとも衛生管理・製造管理・品質管理の3点を今まで指摘もしなかった当薬局も最悪です。おいらがセンターから転職して来て愕然としましたもん。

Posted by: gadrinium | February 10, 2006 at 12:53 AM

gadriniumさん,こんにちは。コメントをありがとうございます。
やはり自己血は安全性に疑問符がつくのですね。
術者によっては,それほど出血していなくても自己血を術中に入れて欲しがる人がいます。もしかしたら,彼らも自己血輸血の危険性を知っていて,病棟で入れるのを避けているのかもしれません。手術中なら輸血で何か起こっても麻酔科の責任になりますから。
今後,「今日のopeは自己血はなくて,MAP2単位を用意しています」と言われたら,むしろ喜ぶべきですね。

追伸  “電子手帳”はまだ買っていません。使いこなす自信がなくて。

今後ともよろしくお願いいたします。

Posted by: 管理人 | February 10, 2006 at 08:00 AM

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