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January 17, 2006

2005年の総括2

勤務日数や症例数など具体的な数字をあげると顰蹙を買いそうなので控えるが,昨年は当初の予定よりも働き過ぎた。
夏ぐらいまでは平日の休みが多く,混雑していない映画館やショッピングセンターなどでゆっくり過ごせたが,秋頃から臨時(緊急ではない)の麻酔依頼が多くなり,平日昼間に関しては勤務医の頃より忙しいと感じる週もあった。そして定期の仕事においても,長めの手術を1~2例行うのが通例のA病院も,短い手術を次々行うB病院も,3週に一回程度は手術症例が無くて私を休ませてくれるC病院も,一日あたりの手術件数が少しずつ増えてきた。C病院に至っては全麻の無い週はなくなり,私の“臨時休業”も期待できなくなった。

外科系医師たちがたくさん手術をしたいと思っても,その熱意だけでは手術件数は増えない。私が勤務する病院で軒並み手術件数が増えた理由を考えてみた。

①術者の手術経験数が増えるにつれて1件あたりの手術時間が短くなり,1日あたりの手術数を増やせるようになった。
②ナースが協力的。
③周辺の医療機関から「手術ができる施設」と見なされ症例が集まるようになった。
④症例が増えても,私がいやな顔ひとつせず二つ返事で引き受ける。

①は当然で,ひとりの医師が同じ手術を数多くこなせば,その医師の技術は向上し手術時間は短縮される。しかし,これが有効なのは短時間の手術が多い病院に限られる。例えば1時間30分かかっていた手術が1時間で終了できるようになると,今まで2例に費やしていた時間で3例をこなせる。一方,4時間の手術をたとえ1時間短縮できたとしても,同じ手術をもう1例増やすのは難しい。また,手術時間の短縮は術者個人のスキルによるところが大きいため,人事異動などで術者が交代するとその後の手術件数はおそらく減少する。田舎の病院なので,前任者よりも腕の立つ外科医がやってくる可能性は低い。

②は非常に重要だと思う。大学病院などでは午後5時を過ぎるとオペ室ナースが機械出しについてくれないところもあるらしいが,田舎のオペ室ナースは夜遅くまでとてもよく働く。中小病院は手術開始がほとんど午後なので,すべての手術が終了する頃には一般家庭の夕食の時刻は過ぎていることが多い。ママさんナースを遅くまで残業させるのは師長にとってもつらいだろうが,毎日のことではなく,私が勤務する日のみなので我慢してもらっているようだ。独身のオペ室ナースは超勤手当が増えるのを喜んでいるという話も聞く。
手術が多いと,オペ室だけでなく術後Ptを受け入れる病棟のナースにも負担を強いることになる。ほとんどの手術は終了が準夜帯になる。ただでさえ人手の少ない準夜帯にオペ室まで術後Ptを迎えに行き,そして何かと訴えの多い複数のオペ後Ptを看護しなければならない。いずれの病院も,私が最後のPtと一緒に病棟に行くと数多くのナースが詰め所にいる。おそらく,私が働く日,つまり全身麻酔が行われる日は日勤ナースもある程度残る,あるいは準夜ナースを増員するようなシフトを組んでいるようだ。

③従来どの病院もルンバールの手術は盛んに行われていたし,全麻の手術に関しても大学麻酔科からのバイトや外科医麻酔でなんとかまかなっていたはずである。ただ,全麻での手術が必要なPtの受け入れを近医が要請してきたとき,今までは「ウチの病院は麻酔科がないから」と制限していたのを,私が来るようになってから断らないようになった可能性はある。まさか,「ウチは全麻手術いくらでもできますので,どんどんPt送って下さい」などとは言ってないと思う。

④も当然である。完全出来高制なのだから。ただ,ある病院は,②とも関連するが何とか早く全症例を終わらそうと,オペ室師長が3並列を要求してくることがある。このときばかりは自分では「いやな顔」をしているつもりだが,向こうはそうは思っていないらしい。最初にはっきり断るべきだったが,長年の勤務医生活で染みついた奴隷根性のせいか,NOと言えなかった。「今日は絶対3並列はしないぞ。きっぱり断ってやる」と意気込んでいた日,たまたま廊下で院長に出会い,「いつもたくさん麻酔してくれてありがとうございます。助かります。オペ場の婦長が『あんなによく働く麻酔科の先生は見たことがない。3つの部屋をひとりで切り盛りできるスーパードクターだ』と絶賛しています」と言われてしまった。結局,オペ場の師長にはその日も何も言えなかった。くそ,なんてタイミングのいいお世辞だ。

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January 12, 2006

2005年の総括1

年末に体調を崩したせいで,昨年の総括が今頃になってしまった。

まずはエピドラに関して

昨年はエピドラを134例に試み,133例で成功した。不成功だった1例は背中を見た瞬間にエピドラは無理だと思った。痩せた高齢者だったが,亀背の棘突起は一本の太い棒が皮下に横たわっているような感触だった。一応椎間らしき部位の2箇所ほどで穿刺を試みたがメディアンでもパラメディでも“道”は見つからず,開腹手術だったが早々にエピドラをあきらめた。今後同じような背中を見た場合,穿刺を試みることなく断念すべきか迷っている。せっかく用意されているエピドラセットを無駄にするのも悪いし,もしかしたら成功するかもしれないし。

エピドラ単独や脊硬麻での麻酔は皆無で,全例が全麻+エピドラであった。133例のうちLは2例で他の131例はThで穿刺した。

エピドラを入れたにもかかわらず,術後に痛がった症例が1例あった。年齢と体格を考慮しワンショットの局麻を少なめにしたせいか,あるいはカテーテル先端が椎間孔から脱出したのかもしれない。

逆に,ワンショットの局麻を少量しか入れていないのに血圧が下がってしようがない症例も多かった。エホチールなどでは足らず,カテコラミンの持続投与をしたことも少なくない。

ある症例では最初の逆流チェックで血液が帰って来たため,カテーテルを少し抜いては逆流チェックとウオッシュアウトを繰り返した。その結果,血液の逆流がなくなったのは,カテーテルが硬膜外腔に2cmしか入っていない深さだった。抜去して他の椎間で試みようかとも思ったが,そのまま固定した。test doseで問題なく,その後いつも通りに局麻などを使用したところ,エピドラはとてもよく効いていた。硬膜外血腫などの合併症もなかった。

エピドラに関しては,昨年「硬膜外麻酔 MLAによる穿刺と麻酔管理」という本を読み,少なからず影響を受けた。しかし,硬膜外針の先が「椎弓上を歩く」という手技は怖く,少しだけ「歩かせた」後,骨性抵抗がなくなる前にシリンジをつけてロスオブレジスタンスにしている。この方法で,中肉中背の男性なのに3.5cmで硬膜外腔に達したことがあった。

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