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December 31, 2005

寒い手術室

睡眠時間は毎日7時間以上。当直・オンコールは皆無。緑黄色野菜も含め,栄養ある食事を規則正しく摂っている。満員電車に乗ることもなく,この時期はなるべく人混みを避けている。なのに風邪をひいてしまうとは。

マイルドハイポサーミアで手術したがる某診療科が手術室の室温をやたらに下げる一方,別の部屋では寒がりの術者が室温を適温にしてくれている。二つの部屋を行き来する私は暖かい部屋で汗をかき,寒い部屋で汗が冷たくなる。
ジャンパー様の室内着をこまめに着たり脱いだりして気をつけていたが,とうとう体調を崩してしまった。

昔は寒いだけでは風邪などひかなかったのだが。

インフルエンザでなかっただけましか。家の大掃除もさぼることができたし。

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December 18, 2005

消えゆく電子手帳

勤務医だった頃,手帳によるスケジュール管理は不要であった。平日昼間の予定は学会総会に参加するとき以外は数年先まで同じ,「朝から晩まで麻酔」であった。当直やオンコールの割り当て表は手術室にも麻酔科控え室にも医局にも自宅にも,そして病棟にすら張ってあった。土日の個人的な予定は自宅のカレンダーに書いてあるだけだったが,病院で誰かに休日の予定を聞かれることは少なかったし,たとえ尋ねられたとしても返事を急ぐ用事ではなく,「家に帰ればわかる。明日返事する」で充分であった。また,抄録などの締め切りは覚えられる程度の数しかなかった。年末になると医療関係のいろんな会社から手帳をもらったが,どんなに便利そうな手帳でも医局の机あたりに放置され,やがてその存在も忘れた。

フリー医師になると,麻酔中に突然「来週の○曜日は空いているでしょうか?」とか「来月の△▽日はどうでしょう?」と訊かれることがある。手帳を常に携帯するという習慣が身に付いていない私は返答に困る。あわてて自宅に電話するが,留守なら「家に帰って確認します」としか言えない。

現在,手帳の必要性を痛感している。紙の手帳で充分なのだが,同じようなスケジュールが続いてもアナログ手帳ではコピーペーストができない。また,予定変更が続いた場合,ボールペンで書き直しているうちに書くスペースがなくなってくる。というわけで,電子手帳を探している。

電子手帳とはいっても,高機能なPDAは不要である。出先ではエクセルもワードも動画も必要ない。簡単なメールなら携帯電話で充分だ。携帯電話があれば電話帳を別に持ち歩く必要もない。結局,私が欲しい電子手帳の機能はスケジュールとメモだけである。

「携帯電話にもスケジュールやメモの機能はあるではないか」と思われるかもしれない。しかし,私の携帯のスケジュールモードにはコピー&ペーストの機能がない。「午後1時から○○病院」などの同じスケジュールでも,いちいち手入力しなければならない。携帯電話と情報をやりとりするソフトも購入したが,そのソフト上でもスケジュールのコピペはできなかった。ただ,そのソフトはOutlookとデータをシンクロする機能があり,Outlookではスケジュールのコピペは可能である。

つまり,携帯電話でセコセコ入力するのがいやならば,一か月の予定をOutlookでまとめて作成し,これを携帯編集ソフトとシンクロし,その後携帯電話に情報を送ればよい。バックアップがOutlookと携帯編集ソフトに残るという前向きな見方もある。しかし,ひとつのスケジュールが変更するたびにこれを繰り返すのは面倒だ。

私としては,電源ボタンを押したら1秒ぐらいで起動し,スタイラスペンで手書き入力も可能な,スケジュール機能が充実したコンパクトな電子手帳を望んでいる。できればPCで編集できればありがたい。昔はこのような電子手帳が多くあったはずだが,最近はあまり見かけない。ケータイが高機能になったせいだろう。確かに,文字通り常に携帯するようになったケータイを手帳代わりにするのは理にかなっている。一方,PDAはどんどん高機能になって,私にとって不要なものが多すぎる。

私が望む“電子手帳”は絶滅したとあきらめかけたところ,PA-V500というものが見つかった。PCとのシンクロ機能がないことを除けば,ほぼ私の希望を満たしている。しかし,ケータイのように常に持ち歩くだろうか? スケジュール機能の充実したケータイを探す方が賢明かもしれない。

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December 09, 2005

今までの偽医者とは違う

偽医者が8年半も病院で働いていたのは驚きである。大袈裟かもしれないが,自分の足もとが崩れていくような危機感さえ覚える。

従来の偽医者の事件は,私に希望をもたらしてくれていた。
というのも,昔から時々新聞沙汰になる偽医者は,たとえばマンションの一室で診療まがいのことを行い,診察料,さらに薬(OTC? 偽薬? サプリメント?)を売って報酬を得るという程度だった。それでそこそこの利益を得ていたとしても,私は「だまされるヤツも馬鹿だが,偽医者でもそんなに儲かるのか。だったら私が畑違いの内科を開業しても,何とかやっていけるのではないか? いくら何でも偽医者よりは私のほうがましだろう。みのもんたも「あるある」も見ていないが,心電図はある程度読めるぞ。いよいよとなれば,自宅で開業すればいいんだ。何しろ,私は本物の医師免許を持っているのだから」と,私を明るい気分にしてくれた。

ところが,今度の偽医者は私を不安にさせる。

偽医者事件には,医者が身内の非医者に診療行為を行わせていたというパターンもあるが,この場合は周囲がグルなのでpatientsがだまされるのも無理はない。しかし今回の偽医者は,一緒に働いていた医療従事者も気づかなかったのである。まんまと医者になりすまして病院勤務していたのだ。

医学部に入学するために勉強し,大学では6年間も単位取得に四苦八苦(?)し,簡単とはいえ医師国家試験に合格した後は研修医としてこき使われ,…以下略。なのに,
医者として働くには,大学で6年勉強したことは不要で,長年かかって身につけた医療技術も見よう見まねで簡単にできるものなのか?

今回の偽医者は派遣のバイト専門だったらしいが,静脈路確保や気管挿管はどうだったのだろう。手術には入っていなかったというが,外傷のナートぐらいはしていたのだろうか。

一般人にはとうてい真似のできない専門職だと思っていたのに…。

そのうち,麻酔の上手な偽フリー麻酔科医が出現するかもしれない。麻酔科医不足の折,素性をよく確かめもせず雇ってくれる病院はいくらでもありそうだ。

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December 04, 2005

マイファイバーが必要か?

先日,半年に1回程度しか依頼してこない個人病院で麻酔をした。症例は身長180cm超の若い男性で合併症も皆無と聞いていたため,全くのノーケアだった。しかし,手術室でpatientの顔を見てイヤな予感がした。顎が非常に小さいのだ。人の名前がついた先天異常とかではなく,単に顔貌の特徴として顎が小さいだけなのだろうが,サイロメンタルディスタンスは2.5QFBだった。頸部の後屈は問題なかった。開口させると舌圧子を使わずにウブラの根本は見えたが,下顎が背側に後退しながら開口するタイプだった。しかも,上の前歯が大きかった。通常の喉頭鏡での喉頭展開は無理だと確信した。こんな個人病院にブロンコファイバーなどあるはずもない。マッコイもブラードもトラキライトもインチュベーティングラリマもない。手術の体位は腹臥位だ。腹臥位状態でも腹部が圧迫されないような架台(名称は知らない)ではなく,通常の手術台なので腹臥位にすると腹部は圧迫される。腹臥位ラリマはする気になれない。いや,胃管で胃液を抜いてからラリマにすれば,腹臥位でも誤嚥のリスクは低くなるか?

久しぶりにサクシンを使うのは別に構わないが,挿管できなかった場合にすぐ麻酔を覚ますとして,その後はどうする?
様々な考えが短時間の間に脳裏を横切った。
「挿管できないので手術を延期しましょう。後日いろいろな挿管用具を取りそろえ,準備を整えてから手術しましょう」と言うのか?常勤医時代にも言ったことないぞ。いや,それは病院にいろいろな挿管器具もあったし,他の麻酔科医もいたせいだ。
挿管困難で手術延期だなんて過去に一度も経験ないのに…。麻酔の腕一本でメシを食ってるはずの一匹オオカミが,しっぽ巻いて逃げるのか。しかも全麻手術など年に数回しか行われない,小さな個人病院で。
エピドラのカテーテルがあれば,逆行性挿管というストラテジーもある。一度だけ見たことあるぞ。でも,一度見ただけでできるのか?椎弓切除のために喉にサーフロー突き刺すのか?出血させて血腫でCVCIなんてことにならないか?
いや,今までも「挿管が難しそうな顔つきだな」と思っても案外簡単に挿管できたことが何度もあった。それに,“声門を直視できない=挿管できない”ではない。

結局,腹をくくってプロポフォールとサクシンで導入した。案の定,喉頭展開は全く不可能で,エピグロの先端のみが見える程度だった。チューブ(+スタイレット)の先端をほぼ90゜に屈曲させ,エピグロの裏に潜んでいるはずの声門に向けてブラインドでチューブ先端を進めた。大柄のpatientだったのでいつもより太いチューブを用意していたのが災いしたのか,一回目は失敗した。「この同じやり方を何度失敗したらあきらめようか。4回?,5回? 先日どこかの病院でラパアッペのPtに挿管できなかった外科医は7回トライしたのだっけ?」
二回目は細めのチューブで同じ方法をトライした。チューブの進み具合の手応えは今ひとつだったが,バッグを押す感触は“挿管成功”で,胸も上がった。ETCO2の波形も出た。聴診で確認しながら,ほっと胸をなで下ろした。

うわべは平静を装っていたが,背中は冷や汗でびっしょりになっていた。トラキライトでもあればこんな冷や汗はかかなかっただろう。

下顎が小さいくらいでビビる私が情けないのか,トラキライトのひとつも持たずに個人病院で出張麻酔する私がうかつだったのか,単に私の運が悪いだけか,いずれにしても私に問題があるようだ。

「毎日のように挿管していれば,コーマックグレード3など珍しくはない。エピグロの先端だけでも見えるなら何とかなる」と言う人もいるだろう。私もそのひとりだ。だが,挿管チューブと喉頭鏡とラリマクラシックしかない状況だったことを強調しておく。

毎週定期的に勤務しているバイト先には大抵の挿管用具が揃っているので,私が個人的に購入しなければならないものはないが,今回のような個人病院への出張に備え,トラキライトと電池式携帯用ブロンコファイバーを購入しようかと,本気で考えるようになった。トラキライトは安価なのでまだいいが,高価な医療用ファイバースコープを医師個人が買うというのはあまり聞かない。工業用の細径ファイバーに安価なものがあるが,医療用に使うのはまずいか。吸引もできないだろうし。

それにしてもあの顔貌…麻酔の教科書に使えそうだ。

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