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May 28, 2005

少しだけ罪悪感

今週はいつにもましてヒマだったため,郊外の巨大ショッピングセンターに二日連続で行ってしまった。土日には周辺道路が渋滞するほど集客力があるそうだ(土日に行ったことはない)が,平日昼間の利用客は少なく,のんびりヒマつぶしするにはちょうど良かった。吹き抜けのある広場には休憩用のベンチが置いてあるが,ひとりで座っているのはたいてい男性だ。奥さんの買い物につきあうのに疲れたのか,最初からひとりなのか。他は老夫婦や女性だけのグループがちらほら。

私も空いているベンチに座り,高い天井のガラス越しにそそぐ陽光を浴びながらぼんやりしていた。
今も勤務医を続けていたなら,来週の学会の準備に追われていたかもしれない。緊急手術の麻酔を徹夜でこなし,翌日も朝から予定手術の麻酔をかけ,その合間を縫ってポスターの作成・・・。気のせいか,夜間の緊急手術は学会前に多かったような気がする。

それが今や,毎日8時間ほど睡眠(我ながらよく眠るものだ)し,このように平日昼間からブラブラしている。
勤務医たちが医療システムの不備を個人のがんばりでカバーしている現状を思うと,少し罪悪感のようなものを感じてしまう。

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May 21, 2005

プシに関する本音

私のバイト先であるA病院に,プシった医者Xが常勤医として赴任する話はなくなったようだ。

不思議なことに,いろいろな説が飛び交っている。

①病院側(院長)が拒否した。
   院長はXの病気のことを最近になって知り,あわてて大学に拒否の連絡を入れたという説。
Xの病気のことは同大学出身の医師の間では有名だったので,院長が知らなかったとは考えにくい。しかし院長は内科系なので,あり得るかもしれない。

②Xの病状が重くなってきた。
   薬でのコンロトールが悪くなり,大学から派遣取り消しを申し入れてきたという説。
そういえば,Xは大学では手術だけでなく外来の担当もはずされたとか。

③(旧)隣町のB病院に常勤医として派遣される。
   B病院には精神科があり,そこでpatientとしてフォローを受けながら常勤医として働き,A病院にはいままでどおり外来のバイトとして(A病院とB病院は町村合併によって経営母体が同じになったので,厳密にはバイトにはならない)来るという説。 
身体的疾患ならともかく,精神疾患で自分の勤務先の精神科にかかるのはどうだろう。待合室のイスに座って診察を待つことはないだろうが,パラメディカルを通じて噂がすぐに広まりそうだ。私なら勤務先とは遠く離れた病院の精神科に診て貰うだろう。

④X自身が大学に固執している。
   手術も外来もはずされ,最初は不満だったようだが,最近は一日中インターネットしているかバイトで外出している(半日のバイトでも大学には全く来ないらしい)生活に満足しているという説。
A病院での正規のバイト以外にも,他院で闇のバイトをしているという噂もある。大学ではほとんど働いていないのに助手として給料だけでなくボーナスも貰っている上,昼間のバイトは行き放題。医局員にとっては手術室や病棟にいられるより,バイトに行ってくれているほうが有り難いため,とがめられることもない。確かにおいしい身分ではある。この説が本命か?

XがA病院に来ない理由はともあれ,私はちょっと残念だが,大いに安心した。

ちょっと残念なワケ
私はA病院では一度も怒ったことがない。大病院と異なり,医師たちは礼儀正しくナースもよく働いてくれるため,腹を立てることがなかった。私のほうでも,いつも気持ちよく仕事しているせいもあってか,少々の不手際などには目をつぶってきた。しかし最近ちょっと,なめられているというほどではないが,「与し易い」と見られているような気がする。私自身にも言えることだが,緊張感が低下するとそのうち不祥事が起こりそうだ。ここらで少し引き締めておいたほうが良いのでは思うようになった。
麻酔を依頼してきたXに向かって,「お前,いつか『麻酔なんて簡単だ。誰にでもできる』と豪語していたじゃないか。自分で麻酔しろよ」と私が言ったなら,A病院の医師やナースたちは目が覚めるだろう。「あの温厚な先生も怒ることがある。そうだ,あの先生はバイトなのでいつでも辞められるんだ。怒って辞められると手術できなくなる」と感じてもらえるかもしれない。
ただ,困った点はXがプシっていることだ。「精神を病んだかわいそうな医師をいじめるひどい人」というレッテルを貼られる危険性がある。「Xがプシる前,それもずいぶん前から嫌いだった。プシっているから拒否しているわけではない」と周囲に説明してまわらなければならない。

大いに安心したワケ
Xの病勢が進行しているのが真実だったとして,私が予定通り「お前の依頼は受けない」と言ってしまったときのことを想像すると,ちょっと怖い。ネット上でなら,プシっていると思われる医者にいくら絡まれても鬱陶しいだけで無視すれば済むし,刺される心配はない。しかし生身をさらす現実社会では恐怖だ。「プシ=刺される」はいかにも短絡的ではあるが,あり得ない話ではない。私が怒らせた後,Xの耳に「天の声」が聞こえ始めるかもしれない。
「シゾも持病のひとつ。DMや高血圧と同じ」と前にも書いたが,あくまでも建前である。Xが私の嫌悪する相手ではなく,「ただのプシっている医者」だった場合はどうするか,胸に手を当てて考えてみた。正直なところ,一緒に働きたくない。できれば離れていたい。精神科の先生から「医者のくせに病人に偏見を持つな」と怒られそうだが,医者のなかでも「偏見持たずに一緒に働けます」と断言できる者が多数派とは思えない。

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May 17, 2005

麻酔看護師

今月11日~13日に名古屋で日本外科学会の学術集会が催され,「麻酔医不足に外科医はどう対応すべきか?」というタイトルの特別企画があったらしい。麻酔科の学会では今まで何度も「麻酔科医をいかに増やすか」といったタイトルのシンポジウムなどが開かれていたが,ここにきてやっと外科医たちも危機意識に目覚め,学会で取り上げるようになった(私が知らないだけで,過去にも外科学会で取り上げられたかもしれない)。しかし,麻酔科医は「麻酔医」と呼ばれることを非常に嫌う。あまりこだわるほうではないと思っている私でさえ,バイト先のロッカーに「麻酔医用」と書いてあると,誰にも何も言わないが内心少しムッとする。この特別企画には麻酔科医も参加しており,彼らの報告ではタイトルを「麻酔(科)医不足に外科医はどう対応すべきか?」と括弧付きで修正している。

外科医が学会で麻酔科医不足の対策について討論するのは結構だが,「麻酔科医は麻酔医と呼ばれることを嫌う」という習性も知らないようでは,おそらく麻酔科医を満足させるような案は出てこないと思う。もっとも,外科医にしてみれば手術ができればいいのであって,何も麻酔科医を満足させる必要はないのだろう。外科医は「外科医が満足するような案」で充分なのだ。それが証拠に,外科医たちはやはり麻酔看護師を望んでいるようだ。

私は立場上,麻酔科医が少し不足しているくらいが有り難い。しかし,あまりに不足すると抜本的な改革が進められる可能性がある。麻酔看護師もそのひとつだ。仮に麻酔看護師という職種を作るとして,どの程度の手技までさせるのだろう。救急救命士が挿管しても構わないご時世だから,看護師も挿管できるという制度を作るにあたりハードルはそう高くないだろう。エピも分離換気もさせるのか? 今の麻酔科医と全く同じことをさせると,将来「麻酔科医になっても看護師と同じ仕事しかできない」という理由で麻酔科の人気はますます落ちるだろう。

2007年を皮切りに団塊の世代が定年をむかえ,労働力の低下が懸念されている。それだけでなく団塊の世代が高齢化するということは,手術を受ける患者も多くなるはずだ。それまでに麻酔科医不足は解消しているだろうか。

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May 14, 2005

私がプシらせた?

休みが長く続いたため,3日連続で働いただけで疲れたが,連休ボケを吹き飛ばすようなニュースが耳に入った。

私のバイト先の病院(A病院としよう)に,某医師(Xとしよう)が来月から赴任してくるらしい。A病院にはその診療科の常勤医は現在おらず,大学からXが非常勤として外来を週一回担当している(他の医師二人も別の曜日にバイトで来ているので,その科の外来は週三回ある)。そしてA病院のその診療科の初代常勤医としてXが派遣されてくるのだ。常勤となると外来だけでなく手術もするだろう。その診療科は全麻が必要となる手術も少なくない。A病院のバイト麻酔科医は私しかいないため,Xが全麻の手術をしたい場合は私に麻酔を依頼することになる。しかし,私は依頼を断るつもりだ。いや,Xが私に依頼することはないかもしれない。私はかつて,ある病院の病棟でXと大げんかしたことがあるのだ。Xが麻酔科の研修医をいじめてくれたので,私がXのいる病棟に乗り込んでいった。頭に血が昇った私は,「おまえらがやってる手術は,患者には意義のある重要なものかもしれないが,麻酔科にとってはつまらない手術だ」「エピも入れない,体外循環も回さない,分離換気もしない,麻酔科にとってはだらだら長時間続くだけの退屈な手術だ」「そんなつまらない手術の術式を尋ねるなんて,ウチの研修医は偉いじゃないか」「こんなつまらない手術の術式など知らなくても,麻酔できる」など,さんざん「つまらない手術」を連発したあげく,「麻酔をかけてやってるほうと,かけてもらっているほうと,どちらが立場が強いかよく考えてもの言え」というようなことまで言ってしまった。私は言いたいことを思いっきり言ってやったので気持ちよかったが,その後もXは麻酔科を軽視するような言動が目立ち,麻酔科全員から嫌われていた。また自分の科の研修医や病棟ナース,手術室ナースにもきつく怒ることが多く,よくあるように「プシっている」という陰口があちこちでささやかれるようになった。実際,奇異な言動も目立つようになったという。そして,病識があったのか周りの勧めが強かったのか知らないが,精神科を受診しシゾフレニアと診断された。私は口の悪い後輩たちから「もともとその傾向があったのを,先生がとどめを刺したのです」と言われてしまった。確かに,手術に自信のあるXが,自分らの病棟のナースステーションで,「つまらない手術」と言われまくったのだからショックは大きかっただろう。後悔はしていないが,ほんのわずかだが責任を感じている。でも,今でもXが嫌いなことに変わりはない。

私は以前,「プシった医師は大学に戻され,医局で飼われることになる」と書いたが,Xの場合はまったく逆で,大学病院から関連病院に送られる。これには,新研修医制度にからむいろいろな事情があるらしい。教授はXを研究室に閉じこめようとしたが失敗した。Xは臨床,特に手術が好きで,術者からはずれていても手術室に現れた。ただそれだけなら良いが,学生やスーパーローテーター(SR)をつかまえ,ささいな知識不足や手技の未熟でもみんな(patientsやナース)の前できつく叱り,馬鹿にすることが多かった。新研修医制度のせいで,どの診療科も去年と今年は新入医局員がゼロであるが,来年春には2年ぶりに入局者が得られるはずである。しかし,Xが大学にいたのでは入局者は来年もゼロかもしれない。実際,「Xがいるのでその科には入局しない」と公言してはばからないSRもいる。
また,新研修医制度のせいで大学が人手不足となり,その不足分を補うために関連病院から医師を呼び戻す医局が多く,Xの科でも関連病院から何人かの医師が呼び戻されている。その結果,助手のポストが不足してきた。Xは助手なので,Xが外に出れば助手のポストはひとつ空く。現在Xは当直からはずされており,他の仕事も少なめである。Xがいなくなって代わりに働き盛りが来れば,他の医局員の負担は少し減る。

送り出すほうはいいかもしれないが,受け入れるほうはどうか。Xはきちんと服薬遵守し,疾患のコントロールはできているそうだ。しかし,A病院の外来ナースの間では「すぐにキレる」と,評判は良くない。ただ,バイト先でも偉そうに叱りつける医者はどこにでもいるので,コントロールできていないとは言えない。精神科から「治癒した」との診断があったかどうか知らないが,Xのボスである教授は「治ったからどこへでも出せる」と言っているらしい。転勤の際には健康診断書を転勤先に提出することになるが,そこにどう記載されるのか。個人情報保護法などができても,人の口に戸は立てられない。隠し通せるものでもなく,A病院の院長がXのウワサを知らないはずはない。A病院のほうにもXを断れない事情があるようだ。先頃の町村合併のせいでA病院はいずれ市民病院になる予定だが,市民病院という立派な名称となる以上,某診療科がバイトの外来のみというのはまずいということになった。そこで,プシった医者でも受け入れざるを得なくなったという話だ。院長がXのバイト外来での働きぶりを見たのかどうか知らないが,一応外来をこなせるのだから常勤も大丈夫と判断したのだろう。

「シゾもただの疾患のひとつ,DMや高血圧と同じ」と言えなくもなく,罹患している(あるいは罹患した既往がある)という理由で距離を置こうとするのは,医療従事者としてあるまじき態度だ。だが,patientsにとってはどうだろう。自分のからだにメスを入れる術者がDMや高血圧でも(術中に倒れられたら困るが)特に心配はないが,持病がシゾなら・・・。私がpatientなら,プシった医者に手術や麻酔はして欲しくない。

それにしてもXは,自分の赴任先の麻酔科医が私であることを知らないのであろうか。知っていたなら転勤を拒否するはずだ。それとも,全麻の手術はしないつもりか。

私はXと喧嘩しておいて良かった。なぜなら「プシった医者とは一緒に働きたくない」とうような差別的なことは言わず,「Xとは大喧嘩したことがあり,Xが嫌いだからXの依頼は受けない」と言えるからだ。こんなことを書くと「個人的な事情で麻酔の依頼を拒否するな。patientsのことを考えろ」とお叱りを受けるかもしれないが,私は「手術をするな」と言っているのではない。Xが他の麻酔科医を見つけてくれば済むことだ。
「嫌いなヤツをいちいち拒否していたら仕事などできない。フリーターは気楽でいいな」という声も聞こえてきそうだが,その通り,嫌な仕事を拒否できるのがフリーターの強みだ。今までは私とXは双方ともバイトで,勤務の曜日も違っていたのでA病院で顔を合わす機会はなかったが,来月からはそうはいかないだろう。Xの顔を見るのも嫌なら,私が来月からはA病院で働かないという選択肢もあるが,病院の廊下ですれ違うくらいは我慢するとしよう。挨拶はお互いしないと思うが。

念のために明記しておく。私は,Xがプシった(既往がある)医師だから拒否するのではなく,単に嫌いだから拒否するのである。

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May 08, 2005

当直とオンコール

暇なので昔のことを書こう。十数年前,私は地方の中規模病院に勤めていた。その病院の医師当直は部長以上を除く医師全員が交替で毎日1名ずつ担当していた。いわゆる全館当直と呼ばれるもので,夜間や休日に(個人的な用事で病院にいる医師は別として)その病院に医師は当直医一人だけとなり,当直医が眼科や皮膚科の場合でも腹痛や胸痛の救急患者を診なくてはならなかった。当直業務は病院が規定する正式な業務であり,当然当直料がわずかながら支払われていた。これとは別に各診療科ごとにオンコールと呼ばれるものがあった。いまさら説明するまでもないが,オンコールとは,いつでも連絡がつくようポケットベルを持って待機することである。待機といっても自宅で普通に過ごしていても,買い物やレジャーを楽しんでいても構わない。その診療科にかかわることで当直医師やナースがポケベルを鳴らすと,オンコール医師はただちに病院に電話する。電話での口頭指示で済むこともあれば,病院に急行することもある。オンコールは各診療科が独自に行っており,オンコールしたからといって待機料などは給料に加算されない。「オンコール時には30分以内に病院に戻れる場所にいること」などと厳格なルールを決めていた科もあれば,オンコール体制があるのかどうか疑わしい科もあった。

当直のスケジュールとオンコールは無関係である。例えば医師が5人いる診療科ではオンコールが5日に1回は巡ってくるが,それとは無関係に全館当直の順番も回ってくる。科長と研修医の二人しかいない診療科では科長が毎日オンコールしているようなもので,さらにときどき全館当直もしなくてはならない。ところが,その病院では麻酔科だけが全館当直を免除され,オンコールのみであった。それは,麻酔科のオンコールに連絡があった場合,電話での口頭指示で終わることはなく,ほぼ100%緊急手術の麻酔依頼であるから-つまり麻酔科のオンコールは他の診療科のオンコールに比べ拘束性が強いという理由による。しかし,麻酔科だけが全館当直をしないことに不満を感じる医師は多く,医局会で議題になることがたびたびあった。

その当時の私のボス,つまり麻酔科の科長はしっかりした人で,自分よりもはるかに年上の内科系・外科系の部長クラスを相手に一歩も引かなかった。ある日の医局会でのやりとりを,覚えている範囲で再現してみる。

内科系医師A:「眼科や皮膚科の医師も全館当直し,オンコールもしている。眼科のB先生は毎日オンコールしている上に全館当直も当たっている。麻酔科だけが全館当直しないというのは不公平ではないか」

麻酔科長:「公平にしろということですね。私も公平とか平等とかいう言葉は大好きです。この公平・平等という原則に基づき,来月から麻酔科も全館当直をすることにしましょう」

私の心の中:「えー? あなただけは信じていたのに」

麻酔科長:「ところで確認しておきますが,内科のオンコールの業務内容は内科が決めますよね?」

内科系医師A:「え?」

麻酔科長:「つまり,他の診療科から『内科のオンコールはこの仕事もして下さい』と押しつけられたりはしませんよね? それと,電話での口頭指示で済む場合もあり,必ずしも病院に行くことはないですね?」

内科系医師A:「それはまあ・・」

麻酔科長:「では,麻酔科のオンコールでの仕事内容も麻酔科が独自に決めて良いのですね?」

ただならぬ気配を察したのか,一同少し沈黙

麻酔科長:「私は他の診療科のオンコール業務がどのようなものか教えてもらったことはありません。ですから来月からの麻酔科のオンコール業務をここで発表する義務もないですが,勘違いされる人がいては困りますので,麻酔科の新しいオンコール業務について発表します。来月からの麻酔科のオンコール業務は,緊急手術で使用された麻酔器およびモニターの点検とします。不慣れな人が麻酔器やモニターを使用すると調子が悪くなりがちです。オンコールはこれらの点検を行い,次の予定手術が支障なく施行できるよう調整します。いままでは手術が始まる前に麻酔科に連絡されていましたが,今後は緊急手術が終わってから連絡してください」

外科系医師C:「それは,緊急手術の麻酔を麻酔科が担当しないということ?」

麻酔科長:「平日午後5時までに始まる緊急手術は終了まで引き受けますし,麻酔科医が全館当直しているときはその医師の判断にまかせます。オンコール体制のときはさっき言った通りです。例えば休日に私が全館当直でなくオンコールで自宅にいるときにポケベルがなったとします。私は病院に電話し担当医に『そうですか,イレウスですか。休日なのに大変ですね。麻酔器もモニターも病院の備品なので好きなものを使ってもらっていいですが,壊さないようにして下さいね。挿管時には誤嚥に注意し,輸液は多く入れてくださいね』とアドバイスぐらいはします」

外科系医師D:「もし麻酔科以外の医者が麻酔をして,何かあったら誰が責任をとるんだ」

麻酔科長:「何かあったらとは,医療ミスのことですか? 麻酔による医療ミスなら麻酔を行っていた医者が責任をとるのが当然だと思います。その場にいなかった者が責任をとれるはずありません。そもそも対等な立場の医者同士で責任をとったりとられたりするのはおかしいでしょ。それとも,麻酔科医は他科の医師がミスした場合の責任をとらされるほど偉い立場ですか?」

外科系医師E:「しかし,麻酔科という診療科があるのに緊急手術の麻酔をわれわれがするのはいかがなものか。麻酔科は特殊な診療科であり,オンコールでは緊急手術の麻酔を担当するのが当然ではないか」

麻酔科長:「麻酔科にも全館当直をさせようというのは,公平・平等の観点からではなかったですか? 全館当直では公平・平等を謳っておきながら,オンコールでは麻酔科の特殊性を考慮するのですか」

その後,しばし沈黙が流れた。

緊急手術など関係のない内科系医師たちはまだ不服のようであったが,外科系医師たちのあわてぶりを見て次第におとなしくなっていった。その後も麻酔科が全館当直しなかったことは言うまでもない。

今よりはるかに体力はあったものの,4,5日に一回のオンコールのたびに当たる夜間緊急手術にうんざりしていた私は,「月に1,2回全館当直するだけで休日夜間の緊急手術に呼び出されずに済むのなら,そのほうがいいかも」と少し残念な気もした。

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May 03, 2005

セミリタイヤ?

勤務予定を記入したカレンダーを見てみると,5月はGWのせいもあって全部で11日分の予定しかない。5月2日には勤務予定が入っていたが,手術が中止になって結局休みになった。5月6日はもともと休みにしたので,4月29日から5月8日まで10連休になってしまった。GW中はどうせ何処も混むだろうと,何の予定も入れていなかったが,こんなことなら遠出してもよかったかもしれない。

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May 01, 2005

断る理由

新卒医師の新研修制度が発足して1年が経過したが,どこの医局もあと1年しないと入局者が入ってこない。そのため,大学病院の働き手を確保する目的で各医局は関連病院の医師を大学に戻し,代わりを送らない,あるいはその診療科の医師全員を大学に引き上げさせるという話をよく耳にする。麻酔科も例外でなく,ただでさえ少ない麻酔科医を大学に引き戻され,困っている病院も多いようだ。特に私の近辺ではこの4月から常勤麻酔科医が少なくなる,あるいは全くいなくなる病院が多かったらしく,面識のない院長からのメールが2月から3月にかけて相次いで届いた。たいていは「突然のメールを送りつける失礼をお許しください。○○先生から先生のお話を聞き・・・」という出だしで,要は週一回でいいから私に非常勤で麻酔を担当して欲しいという内容である。院長とは面識がないものの単発のバイトで働いたことのある病院もいくつかあり,全く未知の病院は少なかった。また,麻酔保険料の全額を報酬として払うと明記しているところもあった。勤務スケジュールにはまだ余裕があるため,週一回程度なら可能であるが,結局すべて断った。ただし,将来こちらから「働かせてください」と頼むこともあるかもしれないので,表向きの理由は「現在,空いている曜日がありません」としておいた。

断った本当の理由は以下のようなものである。

・病院が遠い:同じ都道府県内でも自宅から遠かったり交通の便が悪かったりすると往復するだけで疲れる。
・常勤の麻酔科医がいる:常勤麻酔科医がいながらも手術が多くて非常勤を雇いたがっている病院もあった。モニターや麻酔器具が充実しているという利点もあるが,その常勤医の流儀に従わねばならないという足かせがある。つまり,好き勝手できない。
・手術が朝から実施される:田舎の病院では外科系医師が外来診療を終えた午後から手術を行うことが多い。朝から手術を行う病院には常勤麻酔科医がいるところが多く,上の項目と重なることが多い。朝食はゆっくり食べたいし,朝の渋滞や通勤ラッシュに巻き込まれるのもいやだ。
・手術室がひとつしかない:一例ずつしか麻酔できないと効率が悪い。
・嫌いな手術が多い:脳外科,小児外科は嫌い。
・ルンバールも麻酔科医にさせる:ルンバールは保険点数が低い。

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